2016年は英国EU離脱や米国大統領選挙など大方の予想を覆すニュースが話題となり、これからの世界が
大きく動いていく、そんなことを予感させられた一年であった。
そうした世界各国のニュースと物流の関係を筆者なりにクローズアップして読者のみなさんに
ご紹介していきたい。
今回は「拡大を続けるEC市場と悩める運送会社の実態」をテーマにペンを進めたい。
◆止まらないEC市場の拡大
今や誰しも一度は利用したことがあるインターネット通販によるショッピング。
市場規模は13兆円(15年度実績)を超え、今後さらに拡大が見込まれている。
拡大を続ける背景として、インターネットやスマホの利用者が増加したことをはじめ、
これまでは若い世代に多かったインターネット利用が、中・高年層にも広がっているためだ。
年間を通して最もインターネット通販の利用が多くなるのが12月である。
「お歳暮」「クリスマス商品」「おせち」等、インターネット通販を利用すれば手に入らないものはないくらいに充実している。
実際に筆者もここ数年、お歳暮やクリスマス時期にインターネット通販を利用させてもらっている。
インターネット通販は顧客にとって大変便利なサービスであるが、その分負担を背負っている企業が増えていることも事実である。
今回はそうした企業が抱える課題についてクローズアップした。
◆運送会社の配送の実態と問題
EC市場の発展で最も大きな影響を受けているのが物流・運送関係の企業ではないだろうか。
2017年1月12日付の日本経済新聞で興味深い記事があったので簡単に紹介したい。
運送大手「ヤマトホールディングス」の小会社であるヤマト運輸についての記事である。
冒頭でも触れたとおりEC市場規模は拡大を続けている。EC市場の拡大と比例して増えるのが「配送業務」だ。
ヤマト運輸が2016年に取り扱った宅配便の個数は約2億3000万個であり前年に比べ5.6%多かった。
現状、自社だけでは人手確保が追い付かず、外部委託が増えているとのことである。
外部委託が増えるということは、再配達や時間指定等のサービス品質を維持することが難しくなる。
現状のままでは、荷物が増えても利益が増えないと同社幹部も今後の市場拡大については悲観的だ。
同様に宅配大手の佐川急便も2016年、全国的に集荷・配達の遅延が発生した。同社による発表当初では東京、愛知、大阪といった都市圏のみで遅延しているとのことであったが、
その後全国に広がった。
遅延の主な要因は年末年始の荷物量の増加と人員不足である。 12月に入りECモール各社でクリスマスや年末の大規模なセールを実施した為、大量の荷物が物流センターに流れ込み、
事態は一気に悪化したのである。
ツイッターなどで「商品が届いていない!」といったクレームや投稿が相次ぎ、関係各社は対応に追われた。
年末年始が国民の休日であったのは、物流業界には遠い過去の記憶のようである。
ECモール各社は売り上げを上げるのに必死で、販促や在庫にばかり気を配りがちだが、今後は物流各社の配送状況なども考慮し、
販売期間の見直し等が必要となってくるだろう。
◆まとめ
EC市場の拡大により配送業務が増えることは、物流各社にとっては大きなビジネスチャンスのはずである。しかし、こうした配送業務
の課題が浮き彫りになることで、EC市場の拡大に悲観的にならざるを得ないのが各社の現状であろう。
いくらインターネットやスマホで簡単に買い物ができるとしても、実際に商品を仕分けたり配送するのは「人」である。
販売側がいくらIT武装により市場を拡大しても、運ぶ側がそれに追いつけない。
不在による再配達は非常に便利なサービスである。今や当たり前となってしまっているそうしたサービスも人が配達する物流に
とっては大きな負担だ。
販売者も消費者もこの状況は共通の課題として認識する必要があると強く感じる。
消費者にとってはますます便利な社会になりつつあるがそれをどう企業が捉え自社の強みにしていくか気になるところだ。
売る側が運ぶ側のリソースを意識して、全体最適を図る必要に迫られている。
参考文献
・日本経済新聞 証券部 菊池貴之 【ヤマトHD、ネコの手借りても・・・迫る限界】
著者:コニー
アパレルブランドで培った経験を活かし、 アパレル物流について日々勉強中。