前回から集めた数値データを利用して簡単な分析を行う方法を
ご紹介しています。
「在庫水準」、「在庫回転率」について説明が終わりましたので、
今回は「余裕資産」と「欠品率」について説明します。
余裕資産とは、在庫水準が仮に適正値で保たれていれば、いくらのキャッシュが余るのかを計算します。
ここで問題になるのが、在庫水準の適正値をどのようにして求めるのかということです。
多くの企業では、在庫水準の適正値を自社で把握できていない為、最初は同業他社の平均値を参考にすると良いでしょう。
計算方法は下記の通りです。
それでは前回同様、年間の売上が2億円で期末の棚卸資産が3千万円であった場合で考えてみます。
同業他社の在庫水準を調べたところ、1.6%であることが分かりました。
その場合の余裕資産は下記の計算で求めることが出来ます。
つまり、この会社は在庫水準を同業他社と同じ水準まで下げることが出来ると333万円のキャッシュが銀行口座に残っているということになります。
この「余裕資産」という考え方は経営層にとてもインパクトのある数値として現状の在庫状況を伝えることが出来る為、大変効果的です。
頭では在庫が多いと分かっていても、実際に同業他社の平均値に在庫を保つと「年間これだけのキャッシュが浮くのか」と経営者も目の色が変わります。
あくまで参考値ではありますが、このような数字を見える化することで自社の在庫状況がとても分かり易く全社に伝わります。
在庫管理に分類される数値はこの「欠品率」で最後になります。
欠品率を求めるには、「作業基準値」注1で集めた「01:月稼働日数」、「05:出荷件数/日」、「16:欠品件数/月」の3つの数値を使用します。
欠品率は顧客からの注文に対して在庫切れにより納品が出来なかった比率のことです。
注1)第6回の[1.作業基準値]の章を参考下さい。
欠品率は限りなく0に近づけようとすれば、どうしてもそれだけ在庫を持つ必要があり、在庫コストがかかってしまいます。
欠品率をいくらに設定するかは、その会社の方針に大きく左右されます。
それでは日に1500件出荷がある物流センターで月稼働日数22日、欠品が月に25件発生している場合を例に計算してみましょう。
物流現場で利用する欠品率は、販売士の資格を取るときに学ぶ欠品率とは少し意味合いが異なるので注意してください。
小売業などの店舗で欠品率というと、欠品しているアイテム数を同一カテゴリのアイテム数で割って算出する方法を学ぶと思います。
これは、店舗全体で何%が欠品を発生しているかといった見方になりますので、物流現場で利用する場合とは大きく意味合いが違ってきます。
また小売業では欠品の定義そのものも異なってきます。
店頭の在庫がゼロであれば、例えバックヤードに在庫があっても欠品と見なされます。
いくらバックヤードに在庫があっても、店頭の棚に商品が並んでいなければ、お客様は購入できませんので、販売機会を損失したということです。
このあたりも物流現場とは考え方が違います。
物流現場の場合は、倉庫のどこかに在庫があれば出荷できますので、販売の機会損失にはならないからです。
このように欠品という言葉には業種によっても色々と定義が異なりますので注意が必要ですね。
以上、余裕資産と欠品率の2つの分析項目について説明しました。
次回より「物流管理」の数値項目について一つずつ丁寧に解説をしていきたいと思います。
業界では当たり前に利用されている回転率や欠品率も定義や利用方法があいまいで、業界や会社によってそれぞれ認識が異なる場合が多いようです。
他社と異なる場合はそれほど問題にはなりませんが、同じ会社の中でこのような言葉の認識が異なると、同じことを言っているようでも、それぞれの言っている意味の根本がズレていたりすることがあります。
そのようなことを防ぐためにも、日頃現場で利用する単語の意味については、しっかりと現場のマニュアル等で認識を統一することをお勧めします。
それでは次回もお楽しみに。
これまでにサイト上にUPした本稿「効果性の高い倉庫管理システム構築の手引き」を1冊のPDF資料にまとめました。
無料でダウンロード頂けますので、是非自社のWMS構築&導入の手引きとしてお役立て下さい。
下記リンクをクリック頂き、ページ中段の1段目1列目の資料です。
https://www.inter-stock.net/flow/request/
著者:まさやん
製造業を中心にこれまでに300社以上の倉庫管理システムの導入を経験。
その酸っぱくて甘い経験を活かし、失敗しない効果性の高い倉庫管理システムの導入コンサルタントとしても奮闘中。