平成26年5月東京都で都内中小企業を対象に新たな資金調達の手段を提供する為、中小企業が保有する幅広い動産や債券を担保として活用できる「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」 がスタートした。
この制度により不動産担保ではなく、在庫や売掛債権、車両など多様な動産を担保に事業資金の借入が可能となる。
この制度が融資する側にもされる側にも双方にとって効果的な制度として社会に広まる為には、動産の評価を専門機関が客観的に正しく行う必要がある。
東京都では中小企業が負担するこうした評価の為の経費の一部を補助する制度も取り入れている。
不動産を担保とした融資制度では、事業を拡大しようとしても不動産を所有していない中小企業は融資を受けにくいのが実状である。
経営者個人の住宅などを担保に融資を行う方法も非常にリスクが高く減少傾向にあるとはいってもまだまだ根強く残っている。
全国の企業が現在保有しているとされる在庫商品や売掛債権の額は約140兆円前後と言われる。
土地などの不動産が約80兆円から90兆円なので大幅に上回る資産が企業の資金調達に活用出来るのである。
これらの資産を担保として活用することが出来る動産担保融資(ABL)は、不動産担保や個人保証に依存する必要がないため、中小企業の資金調達も活性化し経済の発展を促進することが出来るはずである。
在庫を担保として融資を受けるにはその在庫が事業価値を構成する在庫であるか、担保に適する在庫であるかを専門的な視点でしっかりと評価する必要がある。
では担保に適する在庫とはどのような在庫か。当然売れる見込みのない在庫に資産価値はない。
図1 企業のサプライチェーンにおける在庫
棚卸資産の評価に関する会計基準によると、棚卸資産を低価法により再評価しなければならないとある。
つまり在庫試算は売れる見込みの価格に評価減しなければならない。
融資を受ける金融機関に対して売れる見込みを(在庫価値)と正確な在庫データを提示する必要がある。
株式会社オンザリンクスと株式会社日本シーアイオーでは、需要予測システムと在庫管理システムを活用して、動産担保融資を支援するサービスの展開準備を進めている。
需要予測のデータと在庫管理システムの現状在庫のデータを加味して在庫の健康度をチェック出来る機能を開発中。
毎月システムから出力される在庫健康度チェック表を融資元の金融機関へ提出することで、金融機関側もデータに基づいた論理的な在庫評価を簡単に確認することが出来る。(図2)
現在金融機関とも交渉を進め、まずは融資実績をあげることを目標としている。
図2 需要予測を加味した在庫健康チェック表
健全な経営を行い、担保に適する在庫を持つ企業であれば、基本的にABLの対象になる。
またこの制度を積極的に新たな融資サービスとして活用することで、金融機関は違う角度で顧客にアプローチすることができ、新規顧客獲得にも繋がる。
さらにはビックデータを利用した不良在庫鑑定サービスや、3PL企業が顧客の在庫を評価するサービス等、幅広いサービスの展開も考えられる。
事業拡大の為の資金を在庫担保によるリスクの少ない融資で確保できる制度が広まれば、必ず地域経済の発展と活性化に貢献できるだろう。
著者:まさやん
製造業を中心にこれまでに300社以上の倉庫管理システムの導入を経験。
その酸っぱくて甘い経験を活かし、失敗しない効果性の高い倉庫管理システムの導入コンサルタントとしても奮闘中。