社名 | 株式会社愛進堂 |
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資本金 | 3,228万円 |
本社 | 鳥取県鳥取市商栄町221-1 |
従業員数 | 46名(2019年12月時点) |
事業内容 | オフィス家具・OA機器・PC関連・ソフトウェア・サプライの販売・サポートおよびサービス・IT教育事業 ・ウォータネット事業 |
URL | https://aishindo.co.jp/ |
管理部次長島崎 達夫氏
鳥取県鳥取市に本社を置く愛進堂は、地域を限定したコミュニケーションを生かし、顧客満足度の高いソリューションビジネスを展開するOA機器販売会社だ。昭和28年の創業以来実に65年間、その軽いフットワークと提案力を武器に地域に愛される中堅企業として活躍している。
同社では創業以来ずっと在庫管理に悩まされてきた。今回、経営トップとメインバンクとの話し合いによって、本格的に在庫管理にメスをいれることが決まった。収益をしっかりと見ていくために、在庫数値を精緻化する必要があると改めて在庫管理が同社の喫緊の課題であると認識したからだ。
そこで、在庫管理改善のシステムとしてオンザリンクス社が開発するセミスクラッチ型WMS「INTER-STOCK」を導入した。
今回は同社の在庫管理改善プロジェクトのリーダーを任された管理部の島崎次長と、プロジェクト全般のコンサルティングを担当されたアジリティ・コンサルティング㈱の高橋社長の2名に話を伺った。
創業以来、在庫管理に悩まされてきたということですが、具体的にはどういった課題があったのでしょうか。
在庫管理というものが全く出来ていませんでした。やっていたと言えば、年に1回9月1日を休業日にして、全社員で棚にある商品を数えて、エクセルで集計した後に、金額を掛けて在庫金額を出していました。ですから、どの商品が本当に仕入れられた商品なのかも分からないし、仕入れた商品がどこにあるのかといったことまで手探りの状態だったのです。
愛進堂で在庫管理システムを導入するきっかけになったのは、メインバンクの山陰合同銀行と愛進堂の財務担当役員の門脇専務との話の中で、収益というところをきっちり見ていくということを考えたときに、在庫数値を精緻化しようというのがお互いの認識であり、それがきっかけとなりました。
最初にアジリティ・コンサルティングの高橋さんに何か良い方法がないかを相談しました。そして2つのご提案を頂きました。一つが既に利用しているOBC社の商蔵奉行のカスタマイズ、もう一つが在庫管理システムの導入です。
門脇専務の方から、「在庫管理システムを導入したい」、なおかつ「社内の運用を変えないと駄目だと思っている」、そこの提案をして欲しいというご依頼が弊社の方にありました。
これを受けまして、弊社の方で在庫管理、入出庫システムをインターネットで検索しました。システムの規模の大小があるので、あまり大掛かりになりすぎると高額になり、予算の想定から超えてしまうので、中堅規模の企業にフィットするようなパッケージシステムで検索すると、6社ほど候補がありました。
各社にメールや電話でコンタクトして、エリア的に鳥取県がカバー出来る会社で絞り込むと半分になりました。
そこから先は具体的にどんなシステムなのかを伺う為にアポイントをとったのですが、その中でもオンザリンクスが一番早くレスポンスして頂きました。メール、電話ですぐにご連絡頂き、営業担当者と早いタイミングでお会いできたところも大きかったです。お陰でどんなことが、どこまで出来るのかといったことが非常に早く理解できたので助かりました。
OBC社の商蔵奉行との連携性と実績があったという点も大きな理由の一つです。
オンザリンクス社のINTER-STOCKを導入した感想をお聞かせ下さい。
システムベンダーはユーザーの課題をいち早くキャッチアップすることが重要だと思います。とくに物流、在庫管理システムというのは会社の中でも様々な部門が関わってきます。営業部門、購買部門、経理部門、営業サポート、荷受けの現場担当者など、複数の部署、複数の関係者が関わりますので、それぞれの課題をいち早くキャッチアップして、見える化してあげるということがポイントになります。
その点については、オンザリンクスが非常に的確で質の高いアウトプットをして頂いたので感謝しています。お陰様でプロジェクト初期の段階で、どの位のプロジェクトになるのかといった期間の目安、コストの目安が把握出来て、愛進堂様の経営陣にも分かりやすかったのかなと思います。オンザリンクスの東社長自ら、度々現場の方に来ていただいて、プロジェクトの良し悪しや、「これはやった方がいい」、「これはやらない方がいい」といった切り分けが非常に明確、的確に行われた点も有難かったですね。
本プロジェクトを進めるにあたって最も苦労されたことはなんでしょうか。
INTER-STOCKを導入する過程で、入荷処理に対して発注情報が必要だと言われて困惑してしまいました。何故なら、それまで弊社には、発注を販売管理システムに入力する運用が存在しなかったからです。基本的に弊社は在庫品ではなく、客注品を扱いますので、営業が個々に勝手に受注した商品を仕入先に発注して、顧客に納品をしていました。かといって、発注を販売管理システムに都度入力するというのは、実現するイメージが沸きませんでした。
OBCに相談すると、商蔵奉行のオプションで「受発注同時入力オプション」という製品があることを知りました。この製品を利用すれば、これまで通り受注入力をするタイミングで、発注データも自動生成できるので、INTER-STOCKの入荷検品も可能になります。オプション製品で120万円ですから、高額ですが迷わず導入を決めました。
もう一つ、最大の課題が「汎用コード」です。弊社では、販売管理システムに商品マスタを登録するということが運用されていませんでした。商品それぞれに商品コードを割り当てるのが一般的だと思うのですが、客注品が多くを占める弊社では、主に汎用コードというのを使っていました。一つの商品コードを色んな商品で使い回しするのです。
「それでは在庫管理出来ませんよ」ということをオンザリンクスからハッキリと言われて、確かにそうだなと。
しかし、今までそういった当たり前で基本的な部分が完全に抜けていたのです。
汎用コードを撤廃して、それぞれの商品にコードを割り当てる作業はものすごく大変でした。約半年かかりましたが、今では汎用コードはほぼ無くなりました。どうしても汎用コードでなければ無理というような商品は一部まだ残ってはいますが、雑多な商品に限られます。例えば、ロッカーのカギや、ハンコなどです。点数的にも金額的にもインパクトが少なく、入荷したらすぐに依頼頂いたお客様に納品するので、在庫管理も必要ないためです。
高橋さんの方で客観的に見られて今回のプロジェクト成功の要因はどういった点でしょう。
今回、複数のベンダーがプロジェクトに関わりました。基幹システムのOBC、在庫管理システムのオンザリンクスです。それぞれの会社の考えであったり、それぞれのシステムの特徴をよく理解した上でなければ円滑に進めることが困難になります。各企業の場所も離れていたので、それをどのようにしてプロジェクト化していくか、運用に乗せていくかという点に注意しました。
最大4拠点を繋いだWEB会議による情報共有の場を積極的に設けたのは成功要因の一つであったように思います。
どの会社でも、どのシステムを導入するときでも言えることですが、長年やってきたオペレーションがあって、中の人はそれが当たり前になっているので、こうあるべきという理想が見えにくくなってしまいます。「通常はこうしたやり方ですよ」といったことを見える化してあげることが重要だと考えます。今回は島崎さんの方からも「客観的な意見を遠慮なく言って欲しい」とおっしゃって頂いたので、非常に言いやすくなったし、言ったことをかなり取り入れて頂いたと言う点が、プロジェクトがスムーズに行った点だと思います。
外部から見て、今の自分達は正しいことをやっているんだろうかということを教えて頂きたいと思いました。厳しい言葉で、がつんと。黒船ではないけれども、目を覚ましたかったのです。しかし、目を覚まそうにも、どれが本当なのかといったことはなかなか教えてもらえないことなので、そこに的確なお言葉をアドバイス頂いて、目が覚める思いでした。
最後に、まだ課題もあると思うのですが、今後の目標を聞かせてください。
もっと在庫数値を精緻化して、軌道に乗せることです。また、現状はまだ発注する部門が一本化出来ていない点も課題として残っています。また一部の仕入先に関しては、入荷してくる商品に注文番号を付けることが難しい場合もあるので、こうした点については、あきらめずに仕入先にお願いをしながら進めていこうと考えています。
まだ導入して1年も絶っておらず、少しずつこういったやり方なんだということが、社内でも浸透し始めてきたところです。これを2年~3年しっかりと継続していければ、もっと良い会社になると思います。
今回のプロジェクト成功の要因は大きく3つ考えられる。1つは経営トップがプロジェクトリーダーである島崎次長に権限移譲したこと。2つ目はアジリティ・コンサルティングによるプロジェクトマネジメント。通常複数のベンダーが関係するマルチベンダー導入は、互いの思想やシステムの食い違いによる無理や無駄が発生しやすい。社内の情報システム部門がこれらを管理すると、上手くまとまらずにプロジェクトが肥大化したり、中止になってしまうケースも少なくない。高橋社長による各システムベンダーを理解しようとした視点でのマネジメントが功を奏したことは間違いない。
3つ目は島崎次長の現場や会社に媚びない真摯な姿勢である。会社の為にと、現場を叱咤激励しながら、厳しい意見を素直に受け止め、改善すべきは直ちに改善するその実行力がプロジェクトの成否に与えた影響は少なくない。
最後に、長年慣れ親しんだ従来のオペレーションを抜本的に変えて、本プロジェクトに多大なる協力を頂いた愛進堂社員の皆様に心から敬意を表するとともに、深く感謝申し上げたい。
取材者:東 聖也、小西 良祐
商蔵奉行連携&入荷Gmail通知機能
入荷時に発行されるQRバーコードラベルに商蔵奉行の受発注同時入力オプションの「発注No」と「受注No」が記載。
客注品の入荷が大半を占める倉庫で、商品が迷子にならないように工夫した。
客注品の注文データに対して、商品がどのような状態かを確認できる画面を作成し、現場の大画面ディスプレイにリアルタイム表示することで、作業進捗を確認。
状態のステータスは「入荷済み」「出荷済み」「奉行転送済み」が判別できるようにしている。
客注品が入荷されると、担当の営業マンのスマフォにGmaiでリアルタイムにお知らせ。従来は営業マンが外回りの最中に倉庫に連絡して入荷を確認していた。
システム導入後はスマフォで入荷情報を共有し、急ぎの注文品であれば、すぐに営業マンが商品を顧客に納品することが可能に。
システム導入に合わせて、商品倉庫の5Sを徹底。床に直置きされていた商品を綺麗に棚に整理。
ロケーション管理も徹底することで入出荷作業効率を向上させた。