成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略 ~DXの真価編~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略 ~DXの真価編~

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元タイム誌の編集長ウォルター・アイザックソンは、真のイノベーターに必要なのは頭の良さよりも、創造性とひらめきだと語っています。そして、その創造性とひらめきの源は、飽くなき好奇心だと言います。真のイノベーターの一人であるアインシュタインは、かつてこう言いました。「私には特別な才能はない。ただ好奇心が異常に強いだけだ」

もちろん、この言葉が全て正しいとは限りません。実際には特別な才能があったはずです。しかし、知識よりも好奇心が重要だという点には強く共感できます。目の前の風景だけを見ていると、自分たちの仕事がなくなる未来にはリアリティがありません。しかし、世界は確実に、そして思いのほか急速に変わりつつあります。

新しいライバルが今、目の前の風景に存在する保証はどこにもありません。むしろ、今は存在しない可能性の方が高いのです。ゲームチェンジャーは予想もしない場所で、誰の目にもつかずに産声をあげます。「Uber」を創業したトラビス・カラニックの成功と没落を描いた実話ドラマ『スーパーパンプト / Uber -破壊的ビジネスを創った男-』を見て、改めてゲームチェンジャーの破壊力に驚きました。

重要なのは選択です。私たちには二つの道があります。1. イノベーションの波に飲み込まれる、2. イノベーションを先導していく側になる。なすべきことはもちろん後者です。
ビジネスは毎日変化しています。昨日まで売れていた商品が今日も売れる保証はどこにもありません。同じ商品でも時期や場所によって売れ方も違います。しかし、現場で得られる断片的な情報からでは「なぜ」が分かりません。仮説を立てて売るというのは経営者の腕の見せ所ではありますが、それは売る側のエゴかもしれません。本当にお客様に満足していただくことを考えるのであれば、その「なぜ」を理解するためのツールが必要になります。「なぜ」を理解するための新たな武器が、データです。

世界を覆う情報産業というイノベーションと、自社のビジネスをどうデータで結び付けるのか。これが私たちの次なる課題となります。

 

2024年8月31日  執筆:東 聖也(ひがし まさや)

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<目次>
1.製造業DXは人手不足時代の救世主か、はたまた新たな混沌の始まりか

2.DXの荒波に揺れる経営者たち

3.デジタル変革(DX)の隠れた価値 – 数字では測れない長期的効果

4.DXの真価 – 好奇心が導く未来への道筋


1.製造業DXは人手不足時代の救世主か、はたまた新たな混沌の始まりか

人手不足です。かつては「日本の製造業の強みは人の柔軟性にある」と胸を張っていましたが、人に頼る時代は終わりました。工場の片隅で黙々と働いていた匠の技を持つ社員が、一人、また一人と減っていくのです。追い打ちをかけるように、原料や部品供給の問題も頭の痛いところです。「きっと良くなるはず」と信じて待ち続けるものの、結局良くはならないのです。

このような課題については、これまで培ってきた会社のノウハウで解決可能でしょうか?しかし、残念ながらそのようなノウハウはないのです。何故なら会社が誇るノウハウの多くは、社員の「カン」と「コツ」に過ぎないからです。それは会社のノウハウとしてではなく、社員の経験と勘で存在していたことに今多くの経営者が気付きつつあります。つまり、あなたの会社の競争力の源は、金型担当の山田さんの「匠の技」や、旋盤担当の佐藤さんの「なんとなく」だったわけです。実は恥ずかしながら私の会社も全く同じです。特にITの開発プロジェクトなどは、担当するプロジェクトマネージャーの能力如何で成否が分かれます。このような場合、会社のノウハウというのは幻想です。

結局は「人」なのです。皮肉なことに、DXの必要性を声高に叫ぶ私たちのようなテック企業ですら、製造業や物流業の皆さんと同じ課題に直面しています。残念ながらそれが現実です。
しかし、あきらめるのはまだ早いです。DXは決して、テック企業が自社の商品を売るための都合の良いワードで終わるものではありません。

2.DXの荒波に揺れる経営者たち

DXは製造業の救世主となるのでしょうか、それとも新たな混沌の始まりでしょうか?DXに翻弄されている経営者は少なくありません。「DXさえすれば、すべてが解決する」こんな甘い誘惑に駆られたことはありませんか? 実は、多くの経営者が、このDXという魔法の杖に翻弄されているのが現状です。重要性は理解しています。しかし、具体的に何をすべきか、どこから手をつけるべきか。AI、ビッグデータ、IoT、ブロックチェーン…次々と登場する新技術。「うちの会社に本当に必要なのはどれ?」と頭を抱え、テクノロジーに溺れる経営者の姿が目に浮かびます。そして、「DX人材が足りない」という嘆きは、すでに業界の流行語大賞です。しかし、その定義すら曖昧なまま、ただ「デジタルに強い人」を求めてはいないでしょうか?
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「今度はAI導入だって? まだRPAも使いこなせてないのに…」現場からこんな声が聞こえてきます。新しいシステムやツールの導入に、現場も疲弊しています。「データに基づいた判断?でも、私の経験では…」長年の経験や勘を重視してきたベテラン社員と、データ駆動型の意思決定の間で板挟みになる中間管理職も少なくありません。DXは手段であって目的ではありません。自社にとってのDXの目的は何か。競争力強化?業務効率化?新規事業創出? まずはここを明確にしましょう。焦って一足飛びにすべてをデジタル化する必要はありません。
小さな成功を積み重ねる「スモールスタート」が重要です。外部からのDX人材招聘も大切ですが、既存社員のデジタルリテラシー向上も同様に重要です。


3.デジタル変革(DX)の隠れた価値 – 数字では測れない長期的効果

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(出典:「2024年版ものづくり白書」 経済産業省)
DXは、多くの企業にとって避けられない課題となっています。しかし、上のグラフが示すように、日本の製造業におけるDXの取り組みは、まだ本質的な変革には至っていないのが現状です。
このグラフを見ると、「個別工程のカイゼン」に取り組んでいる企業が最も多く、約44%に達しています。これは従来の改善活動の延長線上にあり、確かに重要ですが、DXの真の力を活かしきれていません。一方、「製造機能の全体最適」を目指す企業は約26.5%にとどまっています。さらに注目すべきは、新たな事業価値の創出につながる「事業機会の拡大」を目指す企業が最も少なく、わずか19.1%に過ぎないことです。

ここに、日本の製造業が直面するDXの本質的な課題が浮かび上がります。多くの企業がDXを既存プロセスの効率化ツールとしか捉えていないのです。しかし、DXの真の力は、新たな事業モデルや価値の創造にあります。しかし、新しいことへの挑戦には常にリスクが伴います。短期的な成果が見えにくく、投資対効果の説明が難しいこともあります。

企業がDXに踏み出そうとする際、しばしば直面する壁が、投資対効果(ROI)の見えにくさです。従来のIT投資と異なり、効果を数字で簡単に表せないことが多いのです。それは何故でしょうか。
まず、DXの効果は広範囲にわたり、長期的な視点で見る必要があります。一方、従来のデータ取得や部分的な自動化は、限定的で短期的な効果を生み出すため、比較的容易に数値化できます。さらに、DXがもたらす価値は、単なる効率化やコスト削減にとどまりません。従来の方法では算出が難しい「見えない価値」を生み出すからです。例えば、顧客体験の向上、社内コミュニケーションの活性化、イノベーション創出の土壌づくりなど、数字では表しきれない質的な変化をもたらします。

従来のROI計算方法(回収期間法や正味現在価値法など)は、DXのような複合的で長期的な効果を適切に評価できない場合が多いのです。DXの真の価値を理解するには、従来の枠組みを超えた新しい評価方法が必要となるでしょう。しかし、これは決してDXの価値が低いということではありません。むしろ、その影響力が従来の指標では捉えきれないほど大きいことを示しているのです。DXに取り組む企業は、短期的な数字にとらわれすぎず、長期的なビジョンを持って臨むことが重要です。目に見える効果だけでなく、組織全体にもたらされる質的な変化にも目を向けることで、DXの真の価値を見出すことができるでしょう。


4.DXの真価 – 好奇心が導く未来への道筋

DXの投資対効果が見えにくいという課題は、実はイノベーションの本質と深く結びついています。ウォルター・アイザックソンが指摘するように、真のイノベーションは単なる頭の良さではなく、創造性とひらめき、そして何よりも強い好奇心から生まれるのです。DXの価値が従来の指標で測りにくいのは、それが単なる効率化やコスト削減を超えた、未知の可能性を切り開く取り組みだからです。アインシュタインの言葉を借りれば、DXに必要なのは特別な才能ではなく、「異常に強い好奇心」なのかもしれません。

ビジネス環境は日々刻々と変化し、予想もしないゲームチェンジャーが現れる可能性があります。この不確実な世界で競争力を保持するには、イノベーションの波に飲み込まれるのではなく、それを先導する側に立つ必要があります。そのためのカギとなるのが、DXを通じて獲得できるデータとその活用です。データは、ビジネスの「なぜ」を理解するための新たな武器となります。
顧客の行動や市場のトレンドを深く理解することで、単なる仮説や経営者のエゴを超えた、真の顧客満足を追求することが可能になります。

DXの投資対効果が見えにくいからこそ、私たちは短期的な数字にとらわれず、長期的なビジョンを持つことが重要です。株式価値が、将来キャッシュフローの現在価値であることを考えれば、現在の利益だけではなく、長期的な視点で将来の成長可能性や収益力を見極める投資判断が重要になります。目に見える効果だけでなく、組織全体にもたらされる質的な変化、そして未来に向けた可能性の拡大にも目を向ける必要があります。結局のところ、DXの真の価値は、組織の好奇心を刺激し、イノベーションの種を蒔くことにあるのです。それは即座に数字として現れるものではありませんが、長期的には企業の生存と成長を左右する重要な要素となるでしょう。世界を覆う情報産業というイノベーションと自社のビジネスを結びつけること。これこそがDXの本質であり、未来に向けた私たちの挑戦なのです。この挑戦に果敢に取り組む組織こそが、予測不可能な未来を切り開いていくことができるのです。

人手不足に少子高齢化など、日本は今や世界屈指の「課題先進国」です。その中でも選ばれるサプライヤー、世界で通用するメーカーになりましょう。結論、DXは必ず必要です。そして急務です。一刻も早く属人的なノウハウから脱却し、意思決定をデータ駆動化し、新たな価値創造までの階段を着実に上っていきましょう。「異常に強い好奇心」を持って、「事業機会の拡大」に真正面から取り組む勇気を持つ時です。

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