成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略 ~反脆弱性編~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略 ~反脆弱性編~

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 画像素材:metamorworks/PIXTA(ピクスタ)

Amazon創業者のジェフ・ベゾスも愛読する世界的名著「ブラックスワン」は、不確実な現代を生き抜くための唯一無二の思想として、「アンチフラジャイル」という概念を世に広めました。「アンチフラジャイル」とは、著者のナシーム・ニコラス・タレブが作った造語で、日本語では「反脆弱性」と訳されます。簡単に言えば、「壊れにくいだけでなく、むしろ変化や困難によって成長する」といった意味になります。このアンチフラジャイルの概念は、製造業のサプライチェーンを考える上で非常に示唆的です。

従来のサプライチェーンは、効率とコスト削減を追求するあまり、変化に脆い「脆弱な」構造を持つようになってしまいました。しかし近年、新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナとロシアの紛争など、予期せぬ出来事が頻発し、サプライチェーンを取り巻く環境は急速に変化しています。

アンチフラジャイルなサプライチェーンは、変化に柔軟に対応し、むしろ変化を成長の糧とする仕組みを構築することです。本稿では、先月5月に発表されたガートナーサプライチェーントップ25にランクインされた企業の取り組みを分析し、彼らがどのようにアンチフラジャイルなサプライチェーンを構築したのかを考察したいと思います。

 

2024年6月2日  執筆:東 聖也(ひがし まさや)

2024.06.21倉庫運用DX化!!これからのシステム導入に大切なこと
<目次>

1.サプライチェーントップ25の顔ぶれ

2.DEIと技術革新の融合

3.アンチフラジャイルなアプローチとAI活用

4.データドリブンにより反脆弱性を強化せよ


1.サプライチェーントップ25の顔ぶれ

ガートナーサプライ チェーン トップ 25は、世界の優れたサプライチェーンを毎年ランキングする有名なランキングです。今年で20年目を迎えるこのランキングは、サプライチェーンマネジメントにおける卓越性を評価するものです。今年のランキングは2024年5月22日に発表され、シェナイダーエレクトリックがトップに位置しています​​。ガートナー サプライ チェーン トップ 25の評価基準は、主にビジネスパフォーマンスとリーダーシップの2つの要素で構成されています。ビジネスパフォーマンスは、過去3年間の公開財務データおよび環境・社会・ガバナンス(ESG)データに基づいて評価されます。一方、リーダーシップの要素は、サプライチェーンコミュニティ内のリーダーシップを反映し、将来の可能性を評価します。これらの要素が総合スコアとして結合され、ランキングが決定されます​。
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(ガートナー社「サプライチェーンTop25 2024」より著者作成)

「今年のトップ25にランクインした企業は、厳しい事業環境でも成長を維持し、持続可能な運営を行っている点が評価されました」と、ガートナーのサプライチェーン部門のバイスプレジデントアナリスト、サイモン・ベイリー氏は述べています。これらの企業は、ESG基準を事業にしっかりと組み込み、平均以上の成長率、優れた物的資産利益率(ROPA)、そして高い利益率を実現しています。

シュナイダーエレクトリックは今年もトップの座を維持し、2位にはシスコシステムズが続きました。コルゲート・パーモリーブ、マイクロソフト、ジョンソン・エンド・ジョンソンがトップ5に入りました。また、NVIDIAは好調な財務実績を背景に新たにリストに加わり、7位にランクインしました。

2.DEIと技術革新の融合

多くの経営者は、高いパフォーマンスとエンゲージメントを促進するために、組織内のスキル、役割、関係、構造を再定義する重要性を認識しています。しかし、従業員のエンゲージメントと、組織を働きがいのある職場にすることは容易ではありません。対照的に、トップ25のリーダーは、従業員のエンゲージメントを高めるために、人を中心とした戦略に一貫して資金を提供しています。これらのリーダーは、AIを使用してプロセスを再設計および自動化し、仕事の摩擦を軽減し、ナレッジ管理や学習およびシステム開発に積極的に投資しています。

「人材戦略の改善に向けた取り組みは、企業が従業員の尊重、認識、自律性、柔軟性といった基本的なニーズを満たして初めて効果を発揮します」とベイリー氏は述べています。
トップ25のリーダーは、従業員の体験を再定義し、”つながり”のある従業員と人間中心の業務設計を活用し、多様性、公平性、尊重の取り組みに引き続き重点を置くことで、文化の変革とイノベーションを加速させています。

このように、トップ25の企業が人材戦略において成功しているのは、技術革新と人間中心のアプローチを組み合わせているためです。AIの導入は単なる効率化にとどまらず、従業員の負担を軽減し、より創造的な業務に集中できる環境を提供しています。また、DEI(※)の取り組みを重視することで、多様な視点が取り入れられ、組織全体のイノベーションが促進されています。これにより、従業員のエンゲージメントが向上し、企業全体の競争力が強化されるのです。

※DEI・・・多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の頭文字を取った略語。

 


3.アンチフラジャイルなアプローチとAI活用

多くの企業では、顧客サービス、計画、製造の分野で生成 AIの可能性を高く評価していますが、明確な使用方法を見つけるのに苦労しています。最先端のサプライチェーンは、堅固なデータとデジタル機能に基づいて構築されます。トップ25のリーダーは、従来のAI技術と生成AI技術の双方を評価し、AI主導の業務プロセスを設計し、AI技術の最大の利点を実用的な方法で享受できるよう努めています。トップ25企業のAI戦略の成功要因は、優れた人材を獲得し、彼らを活気のある環境に組み込み、継続的な学習と成長を促進することで、AIを最大限に活用する組織に再構築している点です。

世界的な名著「ブラックスワン」の著者であるナシーム・ニコラス・タレブは、不確実性や予測不可能な出来事に焦点を当て、それらの状況にどのように適応するかを「アンチフラジャイル」の概念で説いています。彼は、変化やストレスに適応し成長することで、システムや組織がより強靭になることを主張しています。このコンセプトをAIの活用に結びつけると、AIを使用してデータドリブン型の意思決定や予測分析を行う企業が「アンチフラジャイル」なアプローチを取ることができます。これには、AIアルゴリズムを使用して変化する市場の動向や消費者のニーズをリアルタイムで捉えることが含まれます。また、AIを使用してビジネスプロセスを自動化し、効率を高めることで、企業は外部の変化による影響を緩和し、柔軟性を向上させることができます。

トップ25の企業は、このアンチフラジャイルなアプローチを採用し、AIを戦略的かつ革新的に活用しています。彼らは、AIを導入することで、市場の変化に対応し、競争力を維持するだけでなく、成長と進化を促進しています。これには、データドリブン型の意思決定、自動化されたプロセス、および予測分析を含むさまざまな取り組みが含まれます。アンチフラジャイルなアプローチとAIの活用は、トップ25の企業によって統合され、変化に対応し、成長するための戦略的な手段として採用されています。これらの企業は、不確実な状況に対応する能力を高め、市場のリーダーシップを確立するために、AIの力を最大限に活用しているのです。
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4.データドリブンにより反脆弱性を強化せよ

多くのサプライチェーン組織が不確実性と変化に直面する中、トップ25の企業はアンチフラジャイルなアプローチを採用し、反脆弱性を構築する取り組みを展開しています。
彼らは、VUCA(不安定で不確実、複雑で曖昧)な環境においても成長し、変化に対応するための戦略的な手段としてAI(非生成AI+生成AI)を活用しています。これらの企業は、AIを使用してデータドリブン型の意思決定や予測分析を行い、サプライチェーンの変化に迅速かつ効果的に対応することができます。また、自動化されたプロセスやリアルタイムのデータ分析を活用することで、リスクの管理やリソースの最適化を実現し、反脆弱性を強化しています。

経営者やSCMチームは不確実性を受け入れ、そこから学び、反脆弱なサプライチェーンを構築する必要があります。サプライチェーンを彼らのように反脆弱な状態に移行するには、意思決定プロセス、テクノロジー、ネットワーク設計、およびその他多くの要素において変化が必要です。反脆弱性の状態は、サプライチェーンが混乱や不確実性の中にあっても、企業目標を達成し、より効果的に成長することが出来るのです。

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