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データドリブン企業には、経営から現場までデータを活用した事業運営が不可欠です。私たちが掲げている企業ミッション「データドリブン物流」も、物流データを駆使し、物流の効率化、品質向上、サービスレベル向上を目指しています。そこで疑問が生じます。「データを具体的にどう活かすのか?」という点です。企業の現場には様々なデータが保存されています。売上データ、顧客データ、仕入データ、在庫データなどがあり、構造化されたものからネット上のビッグデータのような非構造のデータまで存在します。これらのデータを「活かす」とは具体的にどういうことでしょうか。私たちの答えは、「データをアクションに変える」というものです。ただし、アクションに変える前に、重要なプロセスが介在します。それが「意思決定」です。意思決定により、アクションが実行されます。この意思決定プロセスを仕組み化することによって、データドリブン企業への変革が可能となります。
2024年2月18日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)
<目次>
1.私たちのデータドリブンな日常
“データドリブン”と言うと、高度にデータを分析し、それに基づいて意思決定し、アクションに移すといった難解な概念のように感じられるかもしれませんが、実際には私たちは日常生活でデータドリブンな行動をしています。例えば、コンビニでお昼の弁当を選ぶ場面を考えてみましょう。弁当棚にはさまざまな種類のお弁当が並んでいます。ここで何を最初にチェックしますか?おそらく、まず自分が食べたいものを選びますよね。その後、見た目や値段を考慮して最終的な選択をします。この過程で弁当に貼られた値段のシールがデータとなり、最終的には自分のお財布との相談を経て、お弁当を手に取ることが意思決定です。そして、それをレジに持っていって支払いをする行為がアクションになります。
お弁当を選ぶ際には、値段以外にも栄養バランス、賞味期限、カロリーなどさまざまなデータが参考にされます。私たちは日常的にデータを確認し、意思決定をし、行動することで生活しています。これは無意識に行っているかもしれませんが、実は立派なデータドリブンな行動なのです。
「なんだ。そんなことなら企業もデータドリブンではないか?」と思われるかもしれませんが、ここで個人と組織の違いが浮かび上がります。個人は自分の好みや目標に基づいてデータを活用し、自分だけの意思決定を行います。しかし、企業は組織であり、多くの個人が協力して同じ目標に向かって成果を上げなければなりません。これが個人と組織の決定的な違いです。
たとえば、先ほどのコンビニでお弁当を買う場面でAさんとBさんで比較してみましょう。Aさんは最近健康診断で少しメタボの傾向を指摘されました。カロリーは押さえたいので、なるべくカロリーの低いお弁当を選びました。一方、Bさんは美容や健康にとてもこだわっているので、栄養バランスを考慮して野菜やたんぱく質などをバランスよく摂取できるお弁当を選びました。
つまり、同じデータを与えられても、個々の意思決定プロセスは全く異なるのです。したがって、多くの個人が集まる組織においては、高度なデータ分析を行っても、意思決定プロセスがバラバラであれば、同じ目標に向かって効果的に成果を出すことが難しくなるのです。そこで必要になるのが、「意思決定プロセスの仕組み化」なのです。
2.データドリブンのフレームワーク
個人にしても組織にしても、すべての活動は以下のフレームワークで捉えることができます。
このフレームワークを「データドリブンのフレームワーク」と呼ぶことにしましょう。このフレームワークに従えば、意思決定プロセスに問題が生じると、誤ったアクションをとることになり、それが結果的にビジネスや業務上の課題、つまり目標と現実のギャップを生む可能性が理解できます。このフレームワークを通して、あなたの会社で働く社員たちの様子を見てみてください。彼らがあらゆる場面で意思決定し、行動している光景が浮かび上がるでしょう。その時、これまで感じたことのない不安があなたを襲ってくるでしょう。「ちょっとまてよ、社員たちの意思決定プロセスは果たして正しいのか?」
ここまでくれば、あなたも自身の会社をデータドリブン企業に変革させるスタートラインに立ったことになります。もはや、社員たちのあらゆる意思決定プロセスを確認し、それを正確に設計し直さずにはいられなくなるでしょう。
3.デジタル化時代に求められる”データドリブン思考”
ここまで読まれて、すでに気付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「意思決定プロセスの問題が現実の問題として現れる」ということに。であるならば、「意思決定プロセスを正しく仕組み化できれば、ビジネスの問題は解決する」ということです。私はデータドリブンの威力はまさにここにあると考えています。たとえAIなどの高度なデータ分析ツールがあったとしても、意思決定プロセスが誤っていれば、高度なAIがより高度な問題を生むだけです。。。
別の視点から見れば、すべての課題は最終的には意思決定プロセスの課題に帰結すると言えます。たとえば、「在庫管理を適正化する」という課題は、「発注量を決定する意思決定プロセス」に問題があると言えるでしょう。
このようにビジネス上の課題を意思決定プロセスの課題に捉え直して考えることが、”データドリブン思考”の第一歩です。データドリブン企業であるかどうかは、意思決定プロセスが仕組み化されているかどうかであるといっても、過言ではありません。まずは自社の意思決定プロセスがどのように行われているかをチェックすることからはじめてみてはいかがでしょうか。