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物流の2024年問題まであとわずか。2024年4月1日に時間外労働の上限規制が適用されることにより、あと2ヶ月足らずでこれまでの準備が試されることになります。皆さんの企業では、どのような準備をされてきたでしょうか?ドライバーの労働時間管理を徹底し、効率的なオペレーションを構築し、物流システムの自動化やデジタル化を進められたでしょうか?それとも、AIやロボットなどの技術を活用し、一気に人手不足を補う手を打たれたでしょうか?
2024年問題を迎える物流業界に限らず、どの業界においても、驚くべきスピードでデジタル革命は、古い既存のビジネスモデルをひっくり返しています。そんな中、私たちのもとにも、「どうやってデジタル時代に適応し、変革していったらよいのでしょうか?」という切迫した質問を頂くことが増えています。
弊社が毎月行っている物流デジタルに関連したウェビナーも、お陰様で回を重ねるごとに参加者が増えています。私たちがそこで参加者にお伝えしているのは「ユーザーが主役となって、データを活用しましょう」というメッセージ。これが上述の質問に対する答えとなるでしょう。
2024年2月4日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)
<目次>
2.サッカー日本代表は、今の日本企業のデジタル戦略の縮図!?
1.デジタルディスプラクター達のデータ活用術とは?
デジタル時代にビジネスを成長させるには、データが持つ意味とその活用方法について従来の認識を変える必要があります。これまでも、企業はデータを日常業務で活用してきました。それは生産管理や在庫管理などの業務プロセスの計測や管理に使われ、一定の成果を上げてきました。しかし、デジタル技術や革新的なアプローチを用いて従来の産業やビジネスモデルに変革をもたらす「デジタルディスプラクター(Digital Disruptor)」と呼ばれる企業のデータ活用はこれだけにとどまりません。ここで、皆さまの脳裏には、ある一つの疑問が浮かぶことと思います。「では、デジタルディスプラクターと私たちとのデータ活用にどのような違いがあるの?」
「その答えは、弊社ウェビナーで・・・」と言いたいところではありますが、毎週熱心にこのメルマガを読んでくださっている読者の皆様に叱られてしまいますので、ここで包み隠さずお答えすることにいたしましょう。
いくつか答えはあると思いますが、私たちが一番大きな違いと考えているのは、「データを意思決定に利用している」という点です。この意思決定に利用するというのは、大きく二通りの手段があります。
1つはデータの分析結果を人が見て、人が意思決定を下す。
もう1つは、データの分析結果をAIなどが判断して、コンピューターが意思決定を下す。
つまり意思決定の自動化ですね。どちらでも構いませんが、重要な点は、データを活用して有意義なインサイト(洞察)に変えて、それを現場の意思決定に上手く組み込んでいるという点です。
2.サッカー日本代表は、今の日本企業のデジタル戦略の縮図!?
私事で大変恐縮ですがサッカーが大好きです。読者の皆さまも、先日のアジア杯日本対イラン戦は視聴されたことと思います。土曜日ゴールデンタイムの放送でしたが、日本代表はやらかしてしまいました。宿敵イランにまさかの1対2の逆転負け。スポーツの世界ですので、当然勝ち負けはあります。
しかし、先日の敗戦は私のような素人が見ても納得いくものではありませんでした。試合開始からずっと両サイドバックが全く機能していませんでした。当然日本のベンチでは、タブレットなどのデータ端末を利用して、どこで崩されているとか、どこが狙われているとか、そうしたデータをリアルタイムで把握していたはずです。しかし、前後半通して、日本の監督やコーチがそこに手を打つことなく、点差以上の完敗で試合終了のホイッスル。長年のサッカーファンとして、視聴者の皆さまに申し訳ない気持ちで一杯でした。
まさに、データはあるけど、そのデータを活用して次の行動を起こせない、今の日本企業を象徴しているかのようでした。と言うと言い過ぎだと、叱られそうですが、それだけ私の心は穏やかではないということで、今回ばかりはご容赦ください。
現代のサッカーは、データサッカーと言われるほどデータを活用するのがグローバルスタンダードです。選手の背中の首筋辺りが少し膨れていますよね。あそこにGPSがついていて、選手の動きがリアルタイムでベンチに届きます。どの選手がどこにいて、どれだけ走って、どのような動線で、といったことが数値で全て把握できるようになっているのです。
にも関わらず、何故テレビで視聴している素人でも分かるような両サイドバックの緊急事態を試合中に修正することができなかったのでしょうか。こればっかりは、30年以上サッカーを愛してきた私にも全く理解ができません。本当に理解不能なのです。。。特に右サイドバックの板倉は足を痛めたのか、終始足を気にしたプレーをしていました。
息子と二人でテレビにかじりつき(少し昭和の風景?)、「森保監督、なぜ板倉を交代させないんだぁ!」と90分絶叫し続けましたが、私たちの声が森保監督の耳に届くことはありませんでした。結局2失点とも板倉のところで崩され、私たちのアジア杯は終わったのでした。
3.データドリブンサッカーで世界一を目指せ!
少し仕事に私情を挟んでしまいましたが、気を取り直して話を元に戻しましょう。いずれにしても、デジタル時代の企業の優越は業界にもよるとは思いますが、このデータ活用によって差がついていきます。データにより、有意義なインサイトを得て、次のアクションを起こします。そしてこのアクションのスピードや頻度がアジリティ(俊敏さ)です。
しかし、難しい部分ではあります。上述したサッカー日本代表のように、いくらデータがそれを示しても、その意思決定のプロセスが曖昧であると、次のアクションに移せないからです。例えばチーム全体として、データがこういった数値を示せば、こうしたアクションを起こそうといった方針や戦略が明確になっていれば、昨日の敗戦はなかったでしょう。しかし、そのデータ分析の結果を監督やコーチがこれまでの経験と勘に頼って属人的に判断を下していたのでは、世界のデータサッカーには到底太刀打ちできないのです。つまり、今のサッカー日本代表に足りないものは、データ分析に基づく意思決定の方針やルールなのです。
森保監督に戦術の高度な知識が欠けているという点を問題視する世論も少なくありませんが、私はそれに同意しません。森保監督は選手のモチベーションを管理するのが大変上手な監督です。であるならば、高度な戦略知識を持った軍師を側におき、データと軍師の意見を参考にして最終的に意思決定を下せば問題ありません。将軍が必ずしも優れた軍師である必要はないのです。企業経営に置き換えると、社長がAIと同じ頭脳を持たないといけないと言っているのと同じなので、論点がズレているのです。
いずれにしても、この度の代表戦はデータ活用で世界に遅れをとる日本企業のデジタル戦略の縮図を見るようで悲しくなりました。いくら最新のテクノロジーで高度なデータ分析を行っても、最後の意思決定プロセスで台無しになっているのです。データ活用は技術とその技術を上手く使い切る仕組みでその優越が分かれます。
デジタル時代に、データを上手く活用する企業がこれからは競争力を持ちます。そのためには、データ分析のその先にある、意思決定プロセスを正しく設計することが大切です。最後に、サッカー日本代表の皆さん、本当にお疲れ様でした。次のW杯では是非、意思決定プロセスの方針を明確にし、データドリブンサッカーで世界一を目指しましょう(涙)。