経産省によるフィジカルインターネットのロードマップを徹底解剖!①|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経産省によるフィジカルインターネットのロードマップを徹底解剖!①

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 画像素材:metamorworks /PIXTA

2023年6月13日、経済産業省が主催する「2023年度フィジカルインターネット実現会議」が開催されました。この会議では、2040年を目指すフィジカルインターネットのロードマップが策定され、物流の効率化や持続可能性に向けた具体的な方針が示されました。これによって、2040年に目指す我が国の物流改革の計画が鮮明になりました。フィジカルインターネットの概念を取り入れたこのロードマップは、日本の物流システムの効率化と持続可能性の向上に向けた大きな一歩となりそうです。本稿では、フィジカルインターネットのロードマップを徹底解剖することで、経済産業省の取り組みと将来の物流展望に迫ります。

2023年8月29日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)

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<目次>

1.フィジカルインターネットのロードマップ

2.ガバナンスのロードマップ

3.強まる官主導の「持続可能な物流」措置案

 


1.フィジカルインターネットのロードマップ

 

2023年6月13日経済産業省による「2023年度フィジカルインターネット実現会議」が開催されました。この会議は、2040年を目標とした物流のあるべき将来像として、我が国における「フィジカルインターネット」の実現に向けたロードマップを策定することが目的とされています。

フィジカルインターネット実現会議の設置趣旨にはこのように書かれています。少々長いですが、以下引用です。

物流は社会経済を円滑に回す上で、重要な社会インフラである。その一方で、電子商取引の増加や、人口減少に伴う労働力不足の深刻化等により物流における需要と供給のバランスが崩れつつある。この状況を放置すれば、物流機能の維持が困難となり、物流が企業、さらには経済全体の背調整役となる恐れがある。

こうした事態を回避し、物流を産業競争力の源泉としていくためには、物流事業者のみならず、製造事業者や販売事業者が、物流を含めたサプライチェーンマネジメントや、企業・業界間での標準化・共同化等を行うことにより、オールジャパンで物流の効率化を徹底していくことは、喫緊の課題である。

また物流リソースに関する情報を、各種インターフェイスの標準化を通じて、企業・業界の垣根を越えて共有し、保管・輸送経路等の最適化などの物流効率化を図ろうとする考え方(フィジカルインターネット)が注目を集めている。我が国においても、大規模・長期・計画的にこうした最先端の技術や概念を取り入れた物流システムを構築していくことが望ましい。

以下は2022年度3額に作成されたフィジカルインターネットのロードマップです。

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(出典:フィジカルインターネット・ロードマップについて 経済産業省)

本ロードマップは項目として、「ガバナンス」「物流・商流データプラットフォーム」「水平連携」「垂直統合」「物流拠点」「輸送機器」の6つの項目で構成されています。フィジカルインターネットの提唱者であるジョージア工科大学のブノア・モントルイユ教授、パリ国立高等鉱業学校のエリック・バロー教授も、日本におけるロードマップ作成について関心を寄せています。

ブノア・モントルイユ教授は、「ヨーロッパで行われたロードマップに触発され、日本独自のロードマップが策定されたことは大変興味深い」とし、エリック・バロー教授は「日本が迅速にこのテーマに取り組み、包括的で一貫性のあるロードマップを作られたことを嬉しく思う」とコメントを寄せています。


2.ガバナンスのロードマップ

 

それぞれ項目毎に簡単に内容を見てみましょう。まず、一つ目の項目「ガバナンス」についてです。2024年問題について時間が迫りつつある中で、計画的な物流調整、利益や費用のシェアリングルールの確立を行うとしています。NX総合研究所による今後不足する輸送能力の試算によると、2024年に不足する輸送能力は、
14.2%(4億トン)、2030年に不足する輸送能力は34.1%(9.4億トン)という結果が出されています。

令和5年3月31日に、岸田総理も出席し、議長を内閣官房長官、副議長を農林水産大臣とする「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が設置されました。
その席で岸田総理は「1年以内に具体的な成果が得られるように、対策の効果を定量化しつつ、6月上旬を目途に、緊急に取り組むべき抜本的・総合的な対策を政策パッケージとして取りまとめてください」と指示しました。そして、その指示の通りに6月2日に2回目の関係閣僚会議が開かれ、「物流革新に向けた政策パッケージ」が作成されました。

この政策パッケージのポイントとしては、具体的な施策として、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容の大きく3つに分類されていることです。
商習慣の見直しでは、荷待ちや荷役時間の削減に向けた規制的処置等の導入、納期期限や物流コスト込み取引価格等の見直しが挙げられています。物流の効率化については、即効性のある設備投資の促進、物流GX、物流DXの推進、物流標準化の推進、高速道路のトラック速度規制の引き上げなどが挙げられています。
荷主・消費者の行動変容については、荷主の経営者層の意識改革・行動変容を促す規制的処置の導入、消費者の意識改革・行動変容を促す取り組みが挙げられています。

本稿のテーマでもあるフィジカルインターネットについては、「物流の効率化」の「物流DXの推進」の項目で、自動運転やドローン物流などに続いて記載されていました。岸田総理の指示にもあった、対策の効果を定量化するという点については、「施策の効果」として、以下の効果が盛り込まれていました。

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3.強まる官主導の「持続可能な物流」措置案

 

ガバナンスに関する取り組みの論点としては、2024年問題による労働時間規制による物流への影響、物流の危機的状況に対する消費者や荷主企業の理解が不十分であること、非効率な商習慣、構造の是正、取引の適正化、着荷主の協力の重要性、物流標準化・効率化の推進に向けた環境整備が議論されました。しかし、このような議論はこれまでも多くのガイドラインが策定されてきたにも関わらず、依然解決されていません。2024年問題を前に、諸課題が先鋭化・鮮明化している状況を重く捉え、今後は、類似の法令等を参考にしつつ、規制的処置やより実効性のある処置を検討する構えです。今後も官主導による持続可能な物流に向けた規制的処置は強まるでしょう。2月に開催された「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の会合では、荷主と物流事業者に対して政府による「特定事業者」の指定や「物流管理統括者」の選任義務化といった措置案が複数示されました。大手の荷主や物流事業者にとっては、こうした処置に対する新たな計画や役職者を準備する必要が出てきます。

以上が、フィジカルインターネット・ロードマップにおけるガバナンス関係の制度を中心とした動きになります。次回は「物流・商流データプラットフォーム」の項目に
ついて、考察する予定です。お楽しみに!

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