共同物流によるグリーン・ロジスティクスへの挑戦 ~組織運営の基本原則~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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共同物流によるグリーン・ロジスティクスへの挑戦 ~組織運営の基本原則~

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 画像素材:ilixe48 /PIXTA

<目次>

1.共同物流のシンボル「プラネット物流」

2.共同化組織運営の基本原則

3.すべては「より大きな善」のために

 


1.共同物流のシンボル「プラネット物流」

 

かつてプラネット物流という共同物流をノンアセットで運営管理する企業がありました。共同物流の成功事例として多くの専門誌や書籍に取り上げられました。
同社は1989年に「業界の流通機構の体質強化のための共同物流」を目的として、日用品雑貨メーカー10社(ライオン、エステー化学、サンスター、ユニ・チャーム等)とVAN会社1社との共同出資によって設立され、1995年には日本ロジスティクスシステム協会(JILS)からロジスティクス大賞を受賞し、まさに共同物流のシンボルでした。

日本で初の業界VAN運営会社となった同社は、トイレタリー日用品業界のメーカー8社による「共同物流研究会」の発足から始まりました。トイレタリー業界では当時、花王が卸売流通を否定して販社制度を敷き、自社で流通網を構築する方針を採っていました。しかし、その他の企業には花王のような自社物流を構築するだけの余裕はありません。そこで、ライオンが花王の直販に対抗するために、サンスター、ユニ・チャームなどとともに企業連合を作り、共同物流会社「プラネット物流株式会社」を設立したのです。

共同物流の成功事例として物流業界に多大な功績を残した同社ですが、着荷主である卸業界や販売店の形態の変化によって、徐々に存在価値が薄れていきました。かつて卸は1500社ほどあり、各メーカーがバラバラに納めていた物を集約し、共配という形で個々の卸にばらまく方式で効率化を図っていました。しかし、卸がだんだんと大きくなり、同社のセンターで集約して共同配送でばら撒くといった運用の必要性が薄れていきました。また、メーカーによる直納方式も増えていきました。それと同時に3PL市場が拡大したことで、倉庫業務だけをやっていた会社が配送を手掛け、配送業務だけの会社が物流の管理・運営も手掛けるようになり市場が激化したことも要因です。

プラネット物流は残念ながら2016年に解散という形になりましたが、これは決して共同物流が否定されたわけではありません。物流が転換点を迎えて、新たな時代の物流共同化が求められるようになった証拠です。共同物流をスタートするまでは上手くこぎ着けたが、いざ始めてみるとなかなか軌道に乗らないところが多い中で、26年間継続したプラネット物流の組織運営には多くの学ぶべき点があります。本章では同社の組織運営を参考にしながら、新しい共同物流の運営のポイントを考察したいと思います。

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2.共同化組織運営の基本原則

 

文化もルールも異なる企業が一緒に物流を行うに当たって一番気を遣うべき点は組織の運用方法です。ただの寄せ集めの体制では長くは続きません。日常の運営をいかにスムーズに行うかに最も力を注ぐ必要があります。プラネット物流は、単なる物流効率化によるコストダウンだけを目的にするのではなく、近代化の遅れた業界の体質を健全化することも目的としていました。また以下6つの精神で運営を徹底することにしたのです。

1.共存共栄の原則、2.エゴ排除の原則、3.公平の原則、4.合理化促進の原則、5.守秘の原則、6.資源相互活用の原則

過去に様々な業界で共同物流が行われたなかで、プラネット物流が一番軌道に乗った要因としては、「近代化をとおして物流業界の社会的地位の向上」を目指すという高い理念があったからではないでしょうか。単に貨物を集約して効率化によるコストダウンだけを目的とすれば、各社が互いの利益を譲らず日々の運営に様々な支障をきたすことは想像に難くありません。すぐに行き詰まってしまうことでしょう。プラネット物流もきっと、沢山の障害にぶち当たったことだと思います。そこを乗り切るには、やはり高い理念と強い信念に裏打ちされたリーダーシップが必要だと思うのです。

共同化を進めるうえで理念の次に重要なことは「標準化」です。システム、作業、サービスの共通ルールの整備と標準化は欠かせません。きめ細かい標準化を一つ一つ積み重ねていきます。自社のわがままを通したくなるときも、そこは理念実現のためにグッと堪えて相手に歩み寄ることも大事です。

もう一つ組織運営の原則として重要な点は「信頼関係」です。同業で共同物流をする場合などは、店頭では競争相手です。もし信頼関係がないとどのようなことになるでしょう?相手側が提案してきた内容に対して、自社の取引を有利にするために言っているのではないか?といった疑いが都度生じることになります。そうした不安や恐れの中で組織の運営は上手くいきません。優れた成果は安心、安全の環境においてのみ生まれるというのは、世界共通の成功法則です。

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3.すべては「より大きな善」のために

 

共同物流が過去に上手くいかなかった事例を見ると、不信感による失敗例が目立ちます。とある地区で菓子メーカー数社が共同で物流をスタートしました。しかし、お互いの売れ筋情報や配送料の情報が洩れることを気にするあまり、情報システムや倉庫は各社別々にしました。そのため共同で運ぼうとするとかえって集荷の手間がかかり、期待した成果が出ないまま失敗に終わってしまいました。読者の皆さまも、もしかすると思い当たることがあるのではないでしょうか。

業界は違いますが、弊社の事例を少しだけご紹介させて下さい。弊社は物流システムのパッケージを開発している少数精鋭のITベンダーです。現在同業他社とOneTeam体制を構築して、ユーザー企業の物流デジタル化を推進するプロジェクトに取り組んでいます。弊社が開発した物流システムパッケージのソースコードや提案ノウハウ、ユーザー情報などを全て同業他社にさらけ出しています。「本当に全て公開しているのか?」とよく聞かれるのですが、本当に全てです(笑)。弊社が商流の頭に立って提案する場合もお互いの利益額等を共有したりもしています。「何故そのようなことをしているのか?」と、こちらも良く聞かれます。それは、「デジタル化をスピードアップすることで物流を効率化し、地球環境に貢献する」という壮大なビジョンを弊社1社では実現不可能だからです。そこで、本来であれば競合である同業他社のベンダーと共同でユーザー企業に物流デジタル化の提案、導入、運用支援を行っています。単なる元請け、下請けによる協業関係ではなく、同じビジョンを共有した開発パートナーです。
現在国内・海外合わせて8社となり、本プロジェクトに携わるエンジニアの総数は500人を超えています。

当然、日々様々な問題が生じます。つい先日も、一緒に提案しているベンダー企業から契約方法について相談がありました。弊社側の利益だけを考えると到底受け入れ難い内容であったのですが、そこでどうするか判断を下す際に、「デジタル化をスピードアップすることで物流を効率化し、地球環境に貢献する」という理念に立ち返りました。
確かに、相手側の提案は弊社の利益を損なうものであるが、それは一時的なものであって、デジタル化をスピードアップするには相手側の要求を受け入れた方が得策であるという判断に至りました。

弊社が独自開発したパッケージのソースコードや提案ユーザーの情報を他社に公開しなければ、弊社としての利益は守られるかもしれません。しかし、業界全体でみればそれは大きな損失です。いまや物流デジタル化による効率化やカーボンニュートラルは人類全体の問題です。一番に考えなければならないことは、誰が得をするかではなく、いかにスピードを上げていくかです。そのためには1社単独でやっていては間に合いません。ベンダー同士が信頼関係を構築して、お互いの企業情報やノウハウを共有して、一気に進めなければならないと感じています。

その点においては、物流共同化も全く同じ考え方ではないかと思うのです。「パソコンでプログラムいじるのと、物流はわけが違う!」と叱られそうですが、私はそうは思いません。これからはチームの時代です。「より大きな善」のために、互いのリソースや知恵を集結し、それぞれの強みを生かして役割を果たすことで物流の共同化を推進して頂きたいと切に願います。

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