「総合物流策施策大綱2021-2025」から今後の物流施策の方向性を探る -第三回-|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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「総合物流施策大綱2021-2025」から今後の物流施策の方向性を探る -第三回-

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 画像素材:elevartuch/PIXTA

<目次>

1.「担い手にやさしい物流」 -(1)労働環境の整備-

2.「担い手にやさしい物流」 -(2)魅力的な労働条件の確保-

3.「担い手にやさしい物流」 -(3)共同輸配送の更なる展開-

 


1.「担い手にやさしい物流」 -(1)労働環境の整備-

 

輸送サービスの供給サービスは3年後に急落します。ドライバーの働き方改革に関する政府の行動計画の目玉である「ホワイト物流」推進運動が要因です。今までと同じやり方では供給を維持できなくなるこの危機を回避するには、サービスレベルや商慣行の見直しと同時に、労働環境の整備も急務となります。これまでの物流はドライバーや現場の頑張りによって何とか維持されてきました。しかし、働き方改革関連法に基づき、2024 年度からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されると、これまでのような無理は利かなくなり、ピーク時の対応力は無くなります。

この2024年問題は物流事業者に限ったことではなく、荷主企業側も従来のやり方では、現状の供給レベルは維持できないという認識で対策にあたる必要があります。今までのやり方では対応できなくなりますので、新しい工夫を物流事業者と一緒になって考える必要があるのです。

■トラック運送事業の働き方をめぐる現状

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(出典:「物流をとりまく状況と物流標準化の重要性」 国土交通省)

上のグラフを見て頂きたいのですが、トラック運送業は、他の業界に比べて労働時間が2割長く、人手不足も2倍高いのです。このような状況で労働時間だけが削減されてしまえば、物流がどうなってしまうかは想像に難くありません。トラックドライバーが運送に専念できる時間を確保するための労働環境の整備が急務となりますが、これは物流事業者だけで達成することは困難です。物流とは荷主と物流事業者の相互の関係性で仕組みが作られていますので、荷主の理解と協力が不可欠なのです。荷主都合による長時間の荷待ち、契約にない附帯作業などの撤廃は、荷主企業の協力なくしては実現不可能です。荷主は、これらの取組を今すぐにでも進めなければ、時間外労働の上限規制がトラックドライバーに適用されると、これまでのように荷物が運ばれなくなるおそれがあることを認識する必要があります。3年などあっという間です。部品が届かなくて生産ラインがストップするとか、店頭に商品が並ばないということになって手を打つのでは遅すぎます。このことをより高い権限と視野に立っている経営者の皆さんにぜひとも理解頂きたいです。

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(出典:『総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)概要』 国土交通省)


2.「担い手にやさしい物流」 -(2)魅力的な労働条件の確保-

 

ドライバーの有効求人倍率は物流クライシスが叫ばれ始めた2017年頃から上昇し続けています。しかし、その割にはドライバーの賃金は上昇していません。一部大手運送会社では、荷主との運賃値上げ交渉に成功していますが、その下の中小企業は少し事情が異なるようです。
中小企業は荷主と直接契約している場合でも、なかなか強気の運賃交渉が出来ていません。また大手の下請けで輸送を行う場合でも、大手が荷主との運賃交渉に成功しても、そのお裾分けが中小にいきわたっていないのが実状です。つまり多くの運送事業者では、ドライバーの賃金を上げれる状況にないのです。中小を含めたトラック運送事業者が全体で収受する運賃を上昇させることができれば、トラックドライバーが全産業平均並みの給与を得られる環境となり、ひいてはトラック運送業がより魅力ある労働環境となります。そうなれば、ドライバーの確保が容易になり、育成にも積極的に投資することができるようになります。ドライバーの育成が進めば、労働生産性も向上します。

運送事業者の経営者は、自社の物流サービスを高付加価値化することに専念し、荷主と直接運送委託契約できるようにして運賃収入を上げることを考えなければなりません。コロナ過になって、今までなかったモノやサービスがすごい勢いで普及しました。テレワークやオンライン、非接触型のサービスなど代替手段として取り入れた方法が「全く問題ない」「こっちの方が便利」ということで代替手段から常套手段となり、いろいろなことが一気に変わっていきました。人流、物流、実体流が急スピードで大きく変わる状況で、荷主企業側もデジタル化や新しいやり方など、変化を受け入れやすい状態にあります。今が、新しい商品やサービスの提案のチャンスなのです。


3.「担い手にやさしい物流」 -(3)共同輸配送の更なる展開-

 

トラック輸送の効率を示す指標の一つに「ロードファクター」があります。「実車率」と「積載率」を掛け算して、輸送能力全体の何%が使用されているかを表します。国内のトラック輸送のロードファクターは1990年代以降低迷を続けており、現在では40%を下回るまでに落ち込みました。ロードファクターを構成する実車率と積載率のうち実車率は長期的に上昇していますが、もう一方の積載率が低下しています。その最たる要因は小ロット発注による小口化です。多頻度小口化は今や市場の当たり前のニーズなので、今さら大口化に戻して欲しいと物流事業者が訴えても時間の無駄でしょう。

2024年問題まで待ったなしの物流産業の労働生産性を引き上げる観点から、低迷しているトラックの積載効率の向上は最優先で取り組むべき課題の一つです。共同輸配送はその有効な解決策の一つです。共同輸配送の実施に必要なパレット等の輸送容器の活用のほか、積載情報や車両の動態情報等の物流データの共有、荷積み・荷卸しのタイミングの調整等に関連したシステムの導入やAIを活用したマッチングの効率化など、デジタル技術を駆使した取組を促進していく必要があります。また、これまで食品業界をはじめ同業種による共同輸配送は数多く実施されてきていますが、異業種同士の共同輸配送についても積極的に推進していくことが求められます。発荷主同士による輸送の共同化に加え、指定時間の緩和、隔日配送など発荷主と着荷主が協力すればロードファクターを大幅に向上させることが出来ます。

ただし、共同配送には多くの課題も残されています。例えば、共同化への意欲はあるものの、シミュレーションに必要な精度のデータを用意できない荷主企業も多く、そこから先に話が具体化していかないといったことも少なくありません。今後、荷主企業のIoTやデジタル技術の導入によって精度の高い物流データが利用できるようになれば、共同物流の敷居は格段に低くなることが期待できます。また、物流事業者と複数の荷主企業で中長期の共同輸配送におけるグランドデザインを検討する機会が少ない点も課題です。都市部エリアの共配、共同配送センターの運営、拠点間輸送の共配、静脈系物流の共同化などクランドデザイン次第で大きな効果を期待できるネタは尽きないと思います。こうした場を誰がいかにして提供するかも今後の課題となるでしょう。

※『総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)』をダウンロード

 

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