経営者のための物流DX実践ガイド⑧ ~物流MaaS編~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経営者のための物流DX実践ガイド⑧ ~物流Maas編~

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 画像素材:FUTO/PIXTA

<目次>

1.各地で拡がるMaaSの実証実験

2.MaaSの具体的な取り組み事例

3.旅客から商用貨物へ『物流MaaS』の実現

 


1.各地で拡がるMaaSの実証実験

 

今から約1年前の7月に国土交通省は日本版MaaSの実現を加速させるために、MaaSのモデルとなり得る38事業を選定
しました(下図)。全国38ヵ所の地域からそれぞれの地域特性に応じたMaaSの実証実験事業への支援を行うものです。

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(出典:「令和2年度 日本版MaaS推進・支援事業38事業について」 国土交通省)

MaaS(Mobility as a Service)とは、「自動運転やAI、オープンデータ等を掛け合わせ、従来型の交通・移動手段にシェアリ
ングサービスも統合して次世代の交通を生み出す動き」と定義されています。「マース」と読みます。MaaSの語源であるモビ
リティ・アズ・ア・サービスを直訳すると「サービスとしてのモビリティ」ということになりますが、これだけだと漠然としてよく理解できませんね。。。

物流の業界でも数年前から話題になっているMaaSですが、曖昧な語源のためもあり、誤解している人も多いようです。新しく
生まれたITサービスの名称だと思っている人もいるのではないでしょうか。実は1年前の私もその一人でした。そこで今回は、
モビリティに関連するさまざまな業界の常識を覆す可能性を持つMaaSがいったいどのような概念で、物流DXとどのように関係
してくるのかについて解説します。


2.MaaSの具体的な取り組み事例

 

乗り物は時代とともに変化してきました。モビリティに革命を起こした自動車は高度経済成長と共に大衆化が進み、今では国内
の自動車保有台数は8千万台を超えています。一方で高齢化も進み、自動車が生活に欠かせない地域では高齢者の事故や免
許返納による交通弱者の増加、都市部では交通渋滞、駐車場不足、公共交通を支える運転者不足の問題、公共交通機関から
のアクセスが悪く来訪者が増えない観光地など、地域社会が抱えるさまざまな課題があります。

これらの課題を解決するとともに、モビリティによる新しい価値を創造し、豊かな未来を実現するのが「MaaS」なのです。

私の地元広島市も「地域住民の利便性向上のためのMaaS~交通事業者の競合から協調によるレジリエントなモビリティ・サービ
スへ~」というテーマで、国土交通省のMaaS実証実験支援事業に選ばれています。

広島市は他の都市圏と違って地下鉄がないため、自家用車に頼った街づくりとなっています。このままでは、超少子高齢化社会の
対応が難しく、高齢者の車の運転が困難になり通院や買い物など生活に支障を来すようになります。また広島市内中心部は路面
電車と6社のバスが競合し、過剰なまでの便数を運行しており非効率となっています。一方で過疎地では利用客も少なく路線の維
持が困難となっています。

広島市はこの取り組みの中で、分かりにくく競合関係にある公共交通を、協調関係に変えることを目指します。分かりやすく乗りや
すい公共交通にするため、1枚のフリーチケットで路面電車および6事業者のバスを乗降可能にしたり、広島平和記念資料館や宮
島の広島ゴールデンルート以外の観光地へ観光客を呼び込むための仕組み作り、交通空白地でのAI活用型オンデマンド交通の
運行を行い、自家用車から公共交通への転換を図ります。

■広島市のMaaSの実証実験の概要

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(出典:「令和2年度 日本版MaaS推進・支援事業38事業について」 国土交通省)

国内では、2018年にトヨタがソフトバンクなどと共同でMaaSの展開を目的とするモネ・テクノロジーズ社を設立したことが話題と
なりました。同社のサイトには「モビリティサービスを通じて人々の暮らしをもっと豊かに」と企業理念に掲げてあります。

家から病院やスーパーなど、マイカーがなくても目的地までの移動を簡単にするための「オンデマンドモビリティの運行」や、
鉄道・バスなどさまざまな公共交通機関の検索、予約、支払いの一括化を図り、点在する観光地や施設間のシームレスな移動
の実現を目指しています。

モネ・テクノロジーズ社のMaaS事業には既にトヨタ系の日野自動車、物流事業者からはヤマトHD、その他にもいすゞ自動車
などが参加し、旅客輸送だけでなく貨物輸送の分野でもMaaSの進展が期待されています。


3.旅客から商用貨物へ『物流MaaS』の実現

 

経済産業省では、物流分野における新しいモビリティサービスとして「物流MaaS」の実現に向けた活動に取り組んでいます。
ドライバー不足やEC物流による物流頻度増加などの業界を取り巻くさまざまな課題の解決に向けて、有識者や商用車メーカー、
荷主や運送事業者、IT事業者などといった民間事業者の参加を得て、物流MaaS勉強会を開催しています。

2020年7月に「動き出すぞ『物流MaaS』!」を発表し、「トラックデータ連携の仕組み確立」、「見える化・混載による輸配送効率
化」、「電動商用車活用・エネルギーマネジメントに係る検証」の大きく3つを商用車業界としての取組として、その方向性を示し
ています。

■物流MaaSの実現イメージ

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(出典:「物流MaaS勉強会 とりまとめ」 経済産業省)

物流MaaSが今後進展していくためには、AIやビッグデータの活用が必要になるでしょう。物流業界では人間系のマッチングがおよそ
9割を占めます。これは荷物と車両をマッチングする複雑性を現しています。こうした複雑な調整役をシステム化するにはAIによるデ
ィープラーニングが有効です。膨大なマッチングデータを取り込んで、複雑な貨物や輸送の条件などをAIに学習させる必要があります。

ビッグデータの活用には、少々高いハードルがあります。それは、各企業が保有する運行データや作業データは企業秘密の場合が
多いことです。こちらについては、各企業の意識変革が必要であり、オープンなプラットフォーム上にデータをアップロードして共有し
ていくデータ民主化に向けた取り組みが急がれます。

物流DXの取り組みはまだまだ始まったばかりですが、物流MaaSと組み合わせて考えていくことで企業が取り組むべきDX戦略の方向
性が見えてくるのではないでしょうか。MaaSをはじめ新しい技術をいかに利活用するかが、物流業界に問われています。

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