画像素材:joykid/PIXTA
<目次>
1.品質マネジメントの哲学を再認識する
マーケットのグローバル化は物流業界に新たなる競争をもたらしました。「カスタマーサービスの充実」と「運賃競争の優位獲得」です。
これからの物流競争に勝ち残るためには、この2つが必須条件であると思います。そして相反するこれらの条件を両立させる戦略
こそ品質管理であると筆者は考えています。
これまでの物流業界という垣根を超えた、新たな競争が始まった今日のグローバルマーケットでは、顧客の付加価値を高める新たな
手法の開発がますます求められています。
高度な品質マネジメントによって、”コスト削減”と”サービス向上”という2つの目標を同時に達成できるという認識は、以前から
「パイプライン経営」として経営者の皆さんに認識されているはずです。しかしながら、現在の状況は品質マネジメントの哲学が物流の
主役の座についた20年前とさほど変わらないのです。
物流のような成熟された市場では過剰供給に陥った途端に値下げ競争の圧力は避けられません。持続的かつ安定的な競争優位の
確立は、経営者にとって重要な関心事です。今日の成功が明日の成功につながるとは限りません。経営者にとって品質マネジメント
の哲学を再認識する時期がきたようです。
2.5sプログラムを導入し継続させる
品質改善を組織内に永久的に組み込むには、経営者、幹部、社員、パート、アルバイトに至るまで出来る限り多くの人が、原則と改善
方法を学んでほしいと思います。簡単で誰でも理解できる品質改善マニュアルを全社に配布し、日々実践できるようにしましょう。
品質改善の最初の一歩として一般的なのが「5Sプログラム」です。整理(Sort)、整頓(Set in order)、清掃(Shine)、標準化(Standalize)、
規律(Sustain)の5つを実行することで職場を整理し清潔に保つというプログラムです。実践すればわずか数週間で明白な成果が出て、
継続すればその成果は日常的なものとなります。
品質改善の取り組みをスタートして素早く成果が出せることから、「品質改善はじめの一歩」として採用する企業も多いです。
5Sの対応前と対応後をビフォー・アフターとして掲示板に貼り付けましょう。こうした活動は楽しいものです。目に見える成果は、職場を
一瞬で明るくします。
5Sの目的はハタラキヤスクする活動です。
以下に5Sの基本について解説します。
1S:整理
いるものといらないものを区別して、不要なものを処分することです。赤札作戦などを活用して
不要なものを思い切ってどんどん処分しましょう。少し前に断捨離という言葉が流行りましたね。
2S:整頓
整理でいるものだけが残るので、残ったいるものを使いやすく定位置に置くことです。
必要なものだけを取り出しやすく並べましょう。
3S:清掃
職場をキレイに掃除します。いつでもきれいにして気持ちよく働ける環境を作りましょう。
4S:標準化
5Sのうち最初の3Sは活動についてですが、この標準化は3Sの活動すべてを継続的に行うための
方法です。いつ、どのようにして3Sの活動を行うのか標準化した方法をマニュアル化しましょう。
5S:規律
標準化された方法を正しく実行し、継続していく習慣を作りましょう。5S活動が単発で終わってしまわ
ないようにしっかりと現場に定着させることが一番の難所です。
ちなみに、日本で広く知られているトヨタの5Sは整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)です。4つ目と5つ目が皆さんが知られて
いる5Sと違うことに気付かれたでしょうか。今回ご紹介したのは実は米国流の5Sなのです。筆者が個人的に物流ではこちらの
方がしっくりくると思っているので紹介しましたが、トヨタ流、米国流どちらでも自社に合う方を選択してください。
3.「目で見て管理」することが品質管理の基本
現場の仕事の状況、進捗を常に目で見えるようにしておくことです。「目で見て管理」のコンセプトは、すべての業務プロセスを
アルバイト、社員、管理者、経営者がいつでも目で見れるようにしておくことです。目で見る管理は、在庫状況、作業進捗、クレーム
状況といったことを誰でも簡単に見ることができることを意味します。
業務プロセスを可視化する一般的な方法として管理版(アンドン)があります。一目で業務ペース(タクトタイム)と問題がある個所
を見ることができます。また各職場でどのようなプロセスが行わるべきか正確に記録した標準作業書も簡単に見ることができる
ようにします。プロセスのステップを説明するこの作業書は社員の最も良いアイデアを追加することによって効率性を向上させ、
同時にミスや事故を防ぐことができるようになります。
また各作業におけるサイクルタイムや標準在庫なども可視化しましょう。サイクルタイムは与えられた結果を出すための作業
目標として機能します。
常に誰もが作業の負荷や状況を把握でき、次に何をすべきかが分かる環境をつくることです。そうすることでムリやムダが
無くせます。物流作業の50%は無駄な作業という説もあながち嘘ではありません。ムダを発掘し、ムダをなくすことに集中して
ほしいと思います。
「優れた者ほど間違いは多い。それだけ新しいことを試みるからである。一度も間違いをしたことのない者、それも大きな間違い
をしたことのない者をトップレベルの地位に就かせてはならない。間違いをしたことのない者は凡庸である。そのうえ、いかにして
間違いを発見し、いかにしてそれを早く直すかを知らない」
これはP.F.ドラッガーが残した言葉です。品質改善活動も失敗の連続です。いきなり100点を目指すのではなく、まずは60点くらい
でも良いのでまずはやってみましょう。そして、間違えたらそれをまた改善すれば良いのです。
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