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<目次>
1.自社の強みを知る「フィードバック分析」
企業の経営者であれば、誰でも自社をもっと貢献できる場所に置き、成長していくことを望んでいると思います。
誰でも、自社の強みについてはよくわかっていると思っています。しかし、たいていは間違っています。経営者が
間違うのですから、社員が自社の本当の強みを活かして貢献するのはまず無理です。
では、自社の弱みについてはよく知っているでしょうか?じつはこれさえも間違っていることが多いです。
自社をもっと貢献できる場所に連れて行ってくれるのは「自社の強み」です。弱みではありません。したがって、
自らの強みを知ることが不可欠となってきます。
では、どのようにして自社の強みを間違わずに知ることができるのでしょうか?それはフィードバック分析です。
自社でやることを決めたら、その期待値を設定し、実際の結果と照合します。これを繰り返し続けること以外に
ないとピーター・ドラッガーも著書「プロフェッショナルの条件」で断言しています。
自社をデータで正しく観察することでのみ、自社の強みを知ることが出来ます。観察を繰り返すことで、何が成果
を生み出しているのかが見えるようになってきます。しかし多くの経営者は主観や周りの意見、競合他社との比較
で自社の強みを誤って認識しています。
主観ではなく、データによる客観的な観察で自社をモニタリングし、明らかになった強みに集中して企業戦略を
考えるのです。ドラッガーは「なすべきことは推測ではなく、観察である」と強調しています。
2.自信を失いつつある日本
世界27ヵ国、3万人以上を対象に実施された信頼度調査「2019 エデルマン・トラストバロメーター」(2019 Edelman Trust Barometer)
の調査結果によると、世界各国の日本企業に対する信頼度は飛躍的な向上を見せました。
約1年前の調査結果ですので、ラグビーワールドカップや東京五輪の影響もあったのではないかと推測されます。中国では22ポイント、
ロシアでは20ポイントもの大幅な上昇を見せています。しかし、興味深いのは何故か日本企業に対する信頼度が日本国内では2ポイ
ント低下しています。日本企業の信頼度が低下したのは日本においてのみでした。また、「自分や家族の経済的な見通しについて5年
後の状況が良くなっている」と回答したのは一般層では16%と低く、調査対象国の中で最も悲観的であることが明らかになりました。
(出典:第19回信頼度調査「2019 エデルマン・トラストバロメーター」(2019 Edelman Trust Barometer))
これは日本国民が自信を失いつつあることの証拠の一つではないでしょうか。国や企業に対する信頼が低下し、将来性も低い
と考えているのです。しかし、他国から見ると日本は依然信頼度も高く、ビジネスをする上でも非常に魅力的な国として認識され
ています。これは、他国が日本の強みを客観的に観察出来ているのに対して、日本国民は問題や課題にばかり目が向いてい
るからではないでしょうか。
文化、品質、ビジネス環境、自然の豊かさ、生活の質、食べ物の質の高さ、価値観、など世界はあらゆる面で日本を高く評価
しています。
5年ごとに行われる英フューチャーブランド社による国の「ブランド力」を評価するランキング、「Future Brand Country Index 2019」
(フューチャーブランドカントリーインデックス)でも、日本のブランド力は見事1位を獲得しています。
出典:FutureBrand)
私は企業も人も、自信を失うことによる最大のリスクはチャレンジしなくなることだと考えます。
最近、失敗を恐れて、新しいことにチャンジする企業が減ったのではないでしょうか。世の中が成長している時代であれば、
新しいことにチャレンジしなくても、目の前の仕事を一生懸命におこなうことで、成長することができました。しかし、いまは、
かつてのような高度成長は望めません。
自信があれば、「失敗したっていいじゃないか。自分達ならきっとやり直せる」とチャレンジに対する恐れがなくなります。
自社の強みに集中し、明確な意図を持って事業を再構築し、収益性を確保しながら、成長を追求しましょう。そうして、
かつての自信を取り戻していかなければなりません。
3.DXとは自社のビジネスの強みを活かすこと
私が初めてDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にしたのは約2年ほど前です。それから急速にDXに関する
情報が巷にあふれるようになり、最近ではDXというキーワードで物流を変革したいという相談が急増しています。
しかし、DXがこれまでのIT化や変革と何が違うのかといった本質を理解しないまま、やっていることがこれまでのIT化と変
わらないといったケースも多いようです。
これは自社の強みに集中していないからだと私は認識しています。これまでのIT化は課題解決型であり、効率化に
主眼をおいた取り組みでした。しかし、DXとは自社の強みに集中し、デジタルでビジネスを抜本的に変革することです。
着目すべきはデジタルの部分ではなく、ビジネスの方です。
課題解決思考で効率化を目指すのではなく、プロデュース思考でアジリティを確保することが目的となります。
※「アジリティを確保する」については以下の記事で詳細を解説していますのでご参考ください。
製造業がロジスティクス管理をレベルUPさせる在庫最適化実践法④
だからこそ、GAFAにはできない、既存企業ならではの戦略が可能になるのです。デジタルの部分に着目していて、
彼らに適うわけがありません。戦略とは、「限られた資源を使って、いかにうまく目標を達成するか」を描いたも
のです。いかにうまく目標を達成するかですから、そこには作戦が必要です。その作戦を練る上で、自社をデータ
で客観的に観察することで強みを見出し、そしてテジタル武装することでかつては不可能だった変革を成し遂げる
のです。
強みこそ戦略の源泉であり、デジタル化の成功要因です。
4.おわりに
デジタルビジネス・トランスフォーメーションがデータの力を解き放ち、洞察が自由になることで、企業はより
良い、より迅速な意思決定ができるようになります。
ある中堅の物流企業が最近いくつかの大型案件のコンペで競り負けが続いていました。その原因の一端が自社のデジタル
能力とデジタル戦略の欠如にあったことがわかったのです。
倉庫やトラックの物理的資源、ドライバーや倉庫作業者といった労働力が最大の強みとなる物流業界で、デジタルのツール
や解析、アプリケーションが重要な意味を持つということは経営陣も思ってもみませんでした。
DXを推進する荷主は、リアルタイムでデータが見れない、データに基づくフィードバック分析をしない物流会社を選ばなく
なっていたのです。
経営者はデジタルに機械と脅威を見出し、行動を起こさなければなりません。市場で強力なポジションにいたとしても、
新しい技術やビジネスモデルによって一瞬のうちに業界の力学がひっくり返される時代です。
これまでは物流業界のようにハード(倉庫やトラックなど)が最大の強みになっていた事業でも、多くの企業が「ウーバー
化」「アマゾン化」しようと躍起になっている今では、数年単位で自社を取り巻く環境が変化することでしょう。