経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第二回-|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

ttl_column

経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第二回-

mailmaga252

画像素材: studioworkstock / PIXTA

 

*** ロジスティクス領域の情報活用で世界最大の小売企業に ***

 

トヨタが今月8日に発表した2019年3月期連結決算は、売上高が30兆2256億円で、日本企業として初めて30兆円を突破し話題と
なりました。

しかし、そんなトヨタの売り上げを大きく上回る小売企業が米国にあるのを皆さんはご存知でしょうか。

売上高5144億ドル(約56兆円)を誇る世界最大の小売業である米国のウォルマート(Walmart)です。
※2019年1月期決算の数値。営業利益は219億5700万ドル(約2兆4152億円)。

2019年1月期決算は、米国でのECの売上高が約40%増加したことを含め、ホリデーシーズンの売上が好調だったことで大幅な
増収となっています。

 

252-1

 

しかし、そんなウォルマートもeコマース市場においては、Amazonを追いかける立場なのです。
ウォルマートは一昨年、Amazonに対抗できる体制を整えるため、サプライチェーンやロジスティクスに大規模な投資を行い、出来る限り早く届く無料配送サービスも開始しました。

対するAmazonの総売上高は前期比30.9%増の2328億8700万ドル(約25兆6152億円)で、規模拡大を続けながら高成長を維持しています。
※2018年(2018年1~12月)の数値。営業利益は100億7300万ドル(約1兆1079億円)。

ウォルマートはeコマース分野のロジスティクス戦略について、独自のモデルを築こうとしています。
Amazonのように巨大な物流拠点を築くのではなく、全米で4千を超える実店舗を配送拠点に充てる戦略です。
米国では、ウォルマートの5マイル以内に暮らしている人口が3分の2に達することから、店舗の通常配送にオンライン受注の配送も加えることで、配送効率を上げながら出来る限り早く商品を届けることが可能になります。

1962年にウォルマート1号店がオープンしたのは、創業者であるサム・ウォルトンが44歳の時です。
彼は「絶えず新しいことに挑戦し、実験し、事業を拡大する」を自社の経営方針にしていました。
彼は小売業の現状について絶えず学び続け、業界の最先端を行くことを志したのです。

※サム・ウォルトン・・・世界最大の小売企業ウォルマート創業者。1992年4月逝去。

1960年代、ウォルマートは当時にすれば、きわめて革新的な実践的ロジスティクスシステムを採用していました。
当時、ウォルマートのような商品管理をしている会社はほとんどなかったのです。
「世界中に軍隊を派遣しても、弾薬や食糧を供給できなければ、無意味だ」彼はそのことをよく理解していたのです。
当初から、遠隔地の多店化による拡大を目指していたサム・ウォルトンは、常に的確にデータをつかみ、在庫商品の種類や量、在庫回転率を管理し、いつどんな商品をどのタイミングで仕入れ、どこに在庫するかを的確に判断し、実行する重要性に気付いていました。
つまり、ロジスティクスの重要性です。

まだウォルマートが数店舗しかなかった1960年代に、ロジスティクスを管理する能力がないなら、地平線の彼方に出店してはならないことに彼は気づいていたのです。
彼は、コンピュータによる情報活用とロジスティクスについて10年は先取りしていました。
たとえば、個々の店の発注や入荷を物流センターに集める商品集荷方式や、物流センターの一方で発注品が入荷すると、ただちにそれを個々の店ごとに集めてセンターの別の出口から配送するクロスドッキング方式なども、他社に先駆けて実施しています。

実際にウォルマートは、遠隔地の店舗を管理するために、情報をもっとも活用する企業になっていったのです。
だからこそ、あれほど店舗を増やしても、うまく経営し、莫大な利益を上げることができたのです。
様々なシステムを早くから導入し、物流センター発展の基礎をつくり、データ処理システムを各店に導入することで、のちに大幅な経費削減にも成功しています。

「わが社は小さな町に散らばっていたので、連絡を密にし、商品の入荷を滞らせないために、物流システムや情報伝達の面で、時代の先端を行く必要があったんだ。」と彼は生前語っています。

世界最大の小売企業でありながら、eコマースという分野においてあくまでも自らを挑戦者ととらえ、新しいことに挑戦するウォルマート。
今後の動向に注視すべき企業のひとつであることは間違いありません。

 

WMS①

 

*** 各物流システムの種類と機能、関連について ***

 

ロジスティクス領域のIT活用は進んできています。
輸配送管理システム(TMS)・倉庫管理システム(WMS)・在庫管理システム(IMS)がその代表格です。
下図は一般的な企業の各システムの役割と関連をまとめたものです。

 

252-2
※上記システム関連図はあくまで一般的な例であり、企業規模や業態によって異なります。

 

輸配送管理システム(TMS)は計画系と実行系の2機能を持ち、主に配車手配・配船手配を行います。
従来は1千万~数千万円のパッケージシステムが主流でしたが、最近は安価で月額数万円で利用できるパッケージシステムも登場しています。

物流業務の人員計画や流通加工指示については、Excelや自社独自のシステムを利用している企業が多いです。
倉庫管理システム(WMS)にこのような機能をカスタマイズで追加しているケースもあります。
最近では、AI(人工知能)を使った人員計画のパッケージシステムも登場していますが、まだまだこれからといった感じです。

倉庫管理システム(WMS)は、物流システムの中核を担うシステムです。
倉庫管理システムには、在庫管理システム(IMS)の機能を有する場合がほとんどです。
在庫管理については、その管理粒度によって、基幹システム(ERP)と倉庫管理システム(WMS)で役割が異なります。
一般的には資産上の在庫を管理するのが基幹システム(ERP)、詳細なロットやロケーション単位で在庫を管理するのが倉庫管理システム(WMS)の役割となります。

企業によっては、ロット番号の源流が基幹システム(ERP)の場合がありますが、この場合は倉庫管理システム(WMS)側でこのロット番号を継承する仕組みを構築しています。

各運送会社毎の荷札(送り状)発行を行うのは、送り状発行システムです。
ヤマトや佐川等の専用のシステムを利用する場合と、送り状発行専用のパッケージを利用する場合とがあります。
送り状発行専用のパッケージを利用すれば、各運送会社の荷物NOと自社の受注NOを紐付けして管理できるため便利です。

分析については、BIツールを利用する企業が増えてきています。
倉庫管理システム(WMS)に分析系の機能を持つ場合もありますが、ユーザー側でフレキシブルにデータ分析が可能なBIツールが使い勝手は良いでしょう。

トレーサビリティについては、トレーサビリティ専用のパッケージシステムもありますが、高度なトレーサビリティを必要としない場合は、倉庫管理システム(WMS)の入出荷実績データの利用で十分でしょう。

最近、筆者が注目しているのが、物流トラッキングシステムです。
これは、今荷物がどこにあるかを追跡するシステムです。
通常は在庫を出荷した時点で、倉庫管理システム(WMS)上の理論在庫が削除されて、そこから先については追うことが出来ません。
社外に出てしまった貨物の在庫管理が出来なくなるため、物流の途上で移送中になっている在庫管理が不十分でした。
これまで不可視だった在庫が可視化できれば、在庫管理の精度が上がり、効率的な物流が可能になります。

以上、物流システムの種類とその役割、関連について簡単にご説明いたしました。
次回は、今後物流システムの中でもニーズが高まるトレーサビリティとトラッキングのシステムの詳細についてご紹介します。
ご期待下さい。

 

輸快通快①

 

参考文献
サム・ウォルトン 著『私のウォルマート商法』 講談社
マーチン・クリストファー著『ロジスティクス・マネジメント戦略』 ピアソン・エデュケーション
石川和幸 著『エンジニアが学ぶ物流システムの知識と技術』翔泳社

 

 




資料ダウンロード 資料ダウンロード
お問い合わせ お問い合わせ