企業競争力を高めるロジスティクスイノベーション ~ダイキン工業の改革事例①~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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企業競争力を高めるロジスティクスイノベーション ~ダイキン工業の改革事例①~

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画像素材: Halfpoint / PIXTA

 

*** 資源の最適配分はリスク ***

 

2月14日と15日の2日間、大阪市港区にあるアートホテル大阪ベイタワーで開催された「ロジスティクス関西大会2019」に参加してきました。
その中で「企業競争力を高めるロジスティクスイノベーション」をテーマに国内を代表する物流先進企業3社によるプレゼンテーションが行われました。

昨今のロジスティクス領域の課題は、もはや自社だけでの解決は不可能な状況に追い込まれています。
筆者の下に寄せられる相談も「もうどうして良いか分からない」といった半分あきらめに近いものもあります。
しかし、「このような時だからこそ、ロジスティクスの視点からのイノベーションが生まれる絶好の機会です。あきらめないで下さい。」とお伝えしています。

P.F.ドラッカーは「イノベーションと企業家精神」の著書の中でイノベーションについてこう述べています。

-イノベーションは富を創造する能力を資源に与える。それどころか、イノベーションが資源を創造する。-

あらゆる変化を当然かつ健全なものとして扱い、変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する姿勢が大切です。
イノベーションの機会が存在する分野において、資源の最適配分にとどまることほどリスクの大きなことはないと彼は述べています。

困難な選択を行うことを拒否したり、あるいは何かが起こっていることを認めることさえ拒否する企業は今後高い代償を払わされることになるでしょう。
その顕著な例がクライスラーです。
1960年頃、世界の自動車市場の構造は大きく変化しました。
自動車産業がグローバル産業になり始めたのです。それまで国内市場に専念していた日本のメーカーも輸出に力を入れ始めました。
欧米人好みの洗練されたデザイン・高性能・優れたアフターサービスで日本メーカーはグローバル市場で大成功を収めようと試みたのです。

しかしこの変化の最中、クライスラーは戦略を立てる代わりに一時しのぎに走ったのです。
多国籍企業に見せかけるために業績の悪いヨーロッパ企業を買収し、資源を小刻みに浪費していきました。
その結果、何も得ることなく失敗し、クライスラーはアメリカにもヨーロッパにも、何ももたない限界的な企業に変貌してしまったのです。

クライスラーの人間がもし、周りで起こっていることを認め、変化を機会として活用する姿勢があったならば、世界最大の市場であるアメリカ市場に全資源を投入することもできたでしょう。
あるいは、ヨーロッパの自動車メーカーと提携し、欧米二つの大市場において、第三位の地位を確立することもできたかもしれません。
実際に、当時メルセデスがクライスラーとの提携に関心を持っていたにも関わらず、クライスラーは全く興味を示さなかったのです。

その他にも当時、ブリティッシュ・レイランドやプジョーなど、重要な意思決定が必要であるという事実を受け入れることを拒否した企業は急速に市場を失い、利益を失う結果になったのです。

 

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*** ダイキン工業のロジスティクス改革 ***

 

今回は「ロジスティクス関西大会2019」のプレゼンテーションの中から、ダイキン工業株式会社の武田重治氏(物流本部物流技術センター室長)による「ダイキン工業のロジスティクス改革 ~物流に関わる全ての人のwin-winを目指して~」の内容についてご紹介したいと思います。

ダイキン工業株式会社は1924年(大正13年)に創業、1934年(昭和9年)に設立され、現在は資本金850億円、グループ全体の従業員数は
7万人を超える空調設備の国内トップメーカーです。

2018年3月期の売上高は2兆2,906億円。
空調事業(住宅用・商業用エアコン)・化学事業(半導体等)・その他事業(油圧機器、酸素濃縮機)の3つの事業で構成されています。
住宅・店舗オフィス・ビル・工場・大型施設と多岐にわたる商品ラインアップを取り扱っており、国内だけでも5,000機種になります。

業績も堅調に推移しており、5期連続で過去最高益を更新、2015年には創業以来初の売上高2兆円を超え、海外事業比率も2005年度の46%から2017年度には76%に急伸させ日本を代表するトップブランドへと躍進しています。

 

*** 国内空調事業の販売特性 ***

 

国内空調事業の販売特性として顕著なのは、シーズン性が高く月別変動が大きい点です。
シーズンとシーズンオフで約2倍の差があり、シーズン期(6~8月)でも冷夏、猛暑によって変動は激しくなります。
また流通在庫や代理店による販売政策による日別変動が大きいのも特徴です。
販売が月末に集中する為、多い日と少ない日では7倍の差が開くこともあります。

納入先も量販店・卸売店・販売店・現場等、実に多様です。
その為、配送条件も多岐に渡り物流は複雑になります。直接工事現場に納入する場合は、工事スケジュールのタイミングに合わせて納入時間を指定されることも多いのです。

 

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*** 国内空調事業の生産特性 ***

 

国内空調事業の生産方式の特性としては、国内全てのラインで必要な製品を必要な時に、必要なだけ生産する「1個流し生産方式」を採用している点です。
生産ラインでは都度、異なる機種を異なる数量で個別生産し、物流の受入側で機種別に纏めてパレタイズします。(下図)
需要の変動に対して柔軟に対応出来る反面、入庫時の煩雑な作業やピッキング時の効率が上がらない等、物流効率は低下します。

工場内の物流倉庫では、品名や形状が異なる製品を受け入れしなければならず、パレットが満載にならない製品も多い為、配送センターへ輸送する際には手積みや手降しが発生します。

 

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工場は滋賀工場・淀川工場・堺工場と近畿に集約されています。
配送センターは草加・小牧・大阪・広島・福岡と西日本に集約されています。
配送センターに加えて、ストック倉庫、大型品専用の倉庫も複数展開しています。

 

*** ダイキンが抱える国内物流の課題 ***

 

ここまでの内容で、ダイキンが抱える国内物流の課題を内部要因と外部要因の2つに整理してみましょう。

まず内部要因から見ると、物量の出荷波動が大きいという課題、また多様な納入先により配送条件も多岐にわたります。
製品の特性上、パレタイズや自動化が困難な為、手積みや手降ろしが発生しています。
続いて外部要因で見るとドライバー不足、運賃高騰により車両確保が困難にであり、輸送コストも増えています。
また重量製品の手積みや手降しは積降し時間が長くなり、負荷も高いという理由から運送会社から敬遠されており、ダイキンだからという理由で配送を断られたケースも実際にありました。

 

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複数倉庫運用により横持ちのムダや、複数個所積みによるドライバー拘束時間の増大も以前からの大きな課題でした。
こうした様々な課題に対してITや設備等の先進技術に遅れがあり、作業員やドライバーから敬遠されるという課題が発生していたのです。

次回は、こうした環境変化をチャンスに変えたダイキン工業のロジスティクス改革の全容についてご紹介しますのでご期待下さい。

 

*** 最後まで読んで頂いた方にお知らせ ***

 

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