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*** クイック・レスポンスが求められるIT ***
『EC業界のロジスティクス事情』というテーマで今回を含めて全20回に渡り考察をしてきました。
本テーマによる考察は今回が最後になります。
これまで何度も述べてきたとおり、いまEC市場は急拡大し、多くの企業が参入してきています。
EC市場はこの10年で3兆円も売上を伸ばしていますが、まだまだ伸びることは確実です。
しかし、そのEC市場の肝心要のインフラである“物流”が既に破綻し始めています。
既に全国の至る物流現場で、ヤマトや佐川の大手宅配キャリアによる出荷制限を受けています。
各事業者に対して、月の荷物の取り扱い個数に制限がかかっているのです。
しかし、こうした現状は物流業者だけの責任ではありません。
これまで多くの企業が物流を軽視してきた結果であり、急激に増える物量に各企業の仕組みやノウハウが追いついていないのが実状です。
利益を上げている優良企業は互いに共通点を持っています。それは、クイック・レスポンスを可能にするITの活用です。
こうした企業ではITの活用により、組織形態までも作り変え、組織間のつながりを本質的に変えています。
より短いタイム・フレームで、よりバラエティーに富んだサービスを求める顧客の要望を満たす為には、クイック・レスポンスを可能にするフレキシビリティが必要です。
クイック・レスポンスを可能にするITは、既知の需要にレスポンスできるという意味において、予測を通じて需要を予期しなければならないという強迫から解放される潜在性を秘めています。
またこれまでは、ロジスティクスを管理するためにITが用いられてきましたが、今後はロジスティクス領域でのIT活用が経営そのものを変え、競争戦略の原動力となる時代なのです。
こうした課題の切り札として、ロボットやAIなどの最先端技術が物流現場においても期待を集めています。
しかし、こうした新技術も、活用の仕方を誤ると省人化やコスト削減に終始してしまいます。
ロジスティクスは、人が介在する部分がとても多い領域です。
小さな物流倉庫のピッキング作業は傍からみると簡単そうに見えても、人間にしか出来ません。
*** 物流情報を経営情報に昇華させる ***
EC事業者は倉庫管理システム(WMS)などのシステムによって得られる物流情報の価値を見直す必要があります。
物流情報を経営情報に昇華させることで、様々な経営課題にアプローチ出来るようになるのです。
実際に多くの企業が倉庫管理システム(WMS)を導入していますが、その情報を経営戦略に活かせている企業は非常に少ないです。
KPIをマネジメント階層毎に設定し、全社的にKPI管理を標準化しましょう。
物流情報を経営の力に変えるには、倉庫内管理、在庫管理、作業効率化だけのIT活用ではもはや不十分です。
物流情報を戦略的マネジメントに活用する企業だけが、競争力を持つ時代です。
物流情報を経営戦略に活かして業績を上げているのが、家電量販大手のヨドバシカメラです。
ヨドバシカメラの経常利益率は7.5%で業界でも断トツの高収益企業です。
ネット通販を始めた1998年当初から「店舗とネットの在庫連動」を視野に入れた在庫管理システムを設計・開発して、現場や顧客の要求に瞬時に対応できるフレキシビリティの高いシステムを運用しています。
1988年に自社の物流拠点を開設した際、その1年後には物流拠点・移送・店舗の全ての自社在庫をリアルタイムに一元管理する在庫管理システムを導入して稼働させています。
現在の在庫管理システムは、ネットとリアルを融合するオムニチャネル対応に対応し、さらに進化しています。
店頭在庫がなくなると、リアルタイムにECサイトの在庫が自動的にゼロに切り替わります。
またECサイト上から在庫切れ商品の店頭取り寄せや、店頭在庫の確認も可能です。2010年にはネットと実店舗の価格も統一化をしました。
キャンペーン期間などを除けば、基本的に店舗とネットの価格は同じで、ポイントも共通で利用可能です。
実店舗には商品の値札にバーコードが付いており、そのバーコードを専用アプリで読み取ると同社のECサイトにつながり、そのままネットで買い物が出来ます。
在庫管理システムだけでなく、特筆すべきはアマゾンを凌ぐといわれるほどに高水準な物流品質です。
消耗品も1品から配送料金無料、日時指定無料で配送をしてくれます。。
店舗での受取り、注文後の最短即時配送など、手厚い物流サービスの水準は国内の同業他社を圧倒しており、アマゾンなどの大手EC専門企業を抑えて4年連続で顧客満足度1位のECサイトになっています。
また2016年9月に地域限定ながら、受注後最短2時間半で無料配達する『ヨドバシエクストリーム』を開始しました。
実店舗とほぼ同数の450万点アイテムがこのサービスに対応しており、DC(在庫倉庫)拠点を都内に3箇所、TC(通過・仕分け倉庫)拠点を10箇所設置することで、このサービスを実現しています。
この仕組みでは、受注してからわずか5分でピッキングが完了し、30分後には商品が出荷されます。
ネット通販が今のように普及する前、オムニチャネルという言葉を誰も知らないころから、ヨドバシカメラは在庫状況のリアルタイム、クリック・レスポンスを実現する効果性の高いシステムを運用し、現在の地位を確立しているのです。
在庫管理システムと連動させたクイック・レスポンスなフレキシビリティの高い配送体制を早期に構築し、進化させたきたことが、356日24時間体制の物流を可能にし、ネット通販時代の競争力の高さに直結しています。
物流情報の価値を見直し、経営に活かす為の倉庫管理システム(WMS)や在庫管理システムを構築するには、”理想”と”運用”と”教育”の一貫性が保たれている必要があります。
今回ご紹介したヨドバシカメラのように物流情報をITを駆使して経営戦略の為の情報として活用し、フレキシビリティの高い体制を構築する為の要諦をまとめた資料を下記より無料でダウンロード頂けます。
是非この機会に自社の経営にお役立て下さい。