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*** EC事業は小売+物流+テクノロジー企業 ***
日本最大級のECファッションサイトと言えば、ZOZOTOWN。
年間購入者数が600万人を超えるお化けサイトです。
最近はEC事業に参入する企業が増えたことから、比較的簡単にECサイトを運営できるプラットフォームサービスが増えましたが、ZOZOTOWNがスタートした当時は、ECというのはカタログ通販の延長という印象しかありませんでした。
しかし、今やEC事業は単なる小売業、通販業ではなく「小売物流企業」であり、「テクノロジー企業」であるとも言えます。
Amazon・楽天・ZOZOTOWNなどECをリードする企業の最近の投資対象を見てもそれは明らかです。
ZOZOTOWNのEC事業を支える物流システムは全て自社開発です。
アパレルに特化し、完全リアルタイムに在庫引当が行われる仕組みを構築しています。
同社の物流システムの大きな特徴としては、1SKUに対して、1レコードを割り当てていることです。
※SKU・・・Stock Keeping Unitの略。最小管理単位のこと。アパレルでは同一商品で赤、青、黄の3色あれば1アイテム3SKU。
※レコード・・・データベース上でデータを管理する最小単位。行ともいう。
通常であれば、赤色のMサイズのTシャツが3枚在庫があれば、レコードは1行で管理されます。
しかし、ZOZOTOWNのシステムではTシャツ1枚につき1レコードが割り当てられ、計3レコードでデータベースに格納されるのです。
少しでもデータベースの知識をお持ちの方ならすぐに気付かれたと思いますが、この方法だとデータの量は単純に3倍に増えてしまうため、データ格納効率は格段に落ちてしまいます。
しかしこの工夫には、日本最大級のサイトならではの悩みを解決するある理由があったのです。
同社のサイトはセールなどアクセスが集中すると、1レコードに対して3,000件の同時アクセスが行われます。
そうするとレコードロックが起きて、他のユーザーは待ちの状態になってしまいます。
※レコードロック・・・あるユーザーがアクセスしているレコードに他のユーザーがアクセスできないようにロックすること。
上図の例のように1レコードを3分割することで、このアクセスを3つに分散することが出来るようになります。
1レコードに対する負荷が分散されることで、ユーザー側の待ちの状態が大幅に軽減され、ユーザビリティの向上になるという工夫ですね。
データの量は増えてしまいますが、そこはDBに投資すれば済む話。
ユーザビリティの向上が最優先という実に”カッコ良い”システム設計です。
*** 物流システムの選択が成否を分ける ***
私達が考えるロジスティクスの効果的なマネジメントの最適解は、情報の流れのマネジメントに帰結します。
ロジスティクス上で躍動する物流システムとは、サプライヤー・受注・ウエアハウジング・ラストワンマイルの複雑な商品の流れを調整することで、効果性の高いサービスが行われるようなメカニズムのことを指します。
EC事業自体はまだ歴史が浅く、ロジスティクスについても統一された業務ルールが確立されていません。
最近では月額で利用できる安価なWMSパッケージもありますが、表面的な機能比較と価格最優先でシステムを選定してしまうと、システム稼働後に全く動かないといった悲惨なトラブルに発展してしまいます。
※WMS・・・Warehouse Management Systemの略。倉庫管理システムのこと。在庫管理や入出荷管理専用のシステム。
実際に筆者が相談を受ける企業様にも、下記のような例があります。
■月額のASPパッケージを導入したところ、日々の出荷指示データ取込で、1時間近くかかって作業に支障をきたしている。
■基幹システム側に手を入れないといけないことが後になって判明し、大幅に当初の予算を超えてしまった。
■基本的にカスタマイズが不可の為、導入後に結局使えないことが判明し、他社でスクラッチ開発を依頼した。
こうしたトラブルは最近では非常に増えています。ネット上に各社のシステムの情報が乱立し、簡単に情報収集が行える為、自社の業界独自の商習慣や業務ルールなどの情報提供が不十分なまま、きっと使えるだろうと安心して、導入を進めてしまいます。
結果として当初想定していた予算を大幅に上回る見積もりになったり、生産効率が上がった部分もあれば、システムに業務を合わせたために効率が下がった部分もあり、見込んでいた費用対効果が出なかったということになってしまいます。
*** まとめ ***
EC業界では、ロジスティクスのマネジメントを通して、コスト効果、サービスの質の向上手段について、多くのことが分かってきたのはここ数年のことです。
今やEC事業者はこれらの教訓をより大きなステージで実行に移すべき段階にきています。
市場が成長し、競争激化が進んでいる今、世界中の流通はECを中心に行われる時代に突入したといえるでしょう。
今後、EC市場における成功と失敗の違いを分けるのは、優れた商品でもなければ、マーケティング・コミュニケーションでもなく、ロジスティクスを管理し、コントロールする方法そのものとなるでしょう。
冒頭で述べた通り、EC事業はもはや単なる小売業ではありません。最先端のテクノロジーを駆使し、物流を革新するロジスティクス・テクノロジー企業だと言えます。
ロジスティクスについての戦略構成や包括的マネジメントで効果性を高める為には、そこに集中投資をしなければなりません。
カスタマーサービスに直結するロジスティクスのマネジメントが今後激化する競争において優位な位置を確保し、それを維持するためには、それぞれのマーケットの要求にあわせてシステムもローカライズされる必要があります。
ロジスティクスにITを集中投資するということは、EC事業におけるコア・コンピタンスの確立に直結します。
表面的な機能比較、価格比較でシステムを選定するのではなく、中長期的な視点でビジネスパートナーと成り得るシステムやベンダーを選定することを強くお勧めします。
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