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*** 生鮮食品のEC需要は急拡大 ***
国内ネット通販最大手の楽天株式会社は2018年1月26日、米小売り大手ウォルマート・ストアーズ(本社:米アーカンソー州ベントンビル。最高経営責任者:ダグ・マクミロン。以下「ウォルマート社」)と国内のインターネット通販スーパーの共同運営などを柱とした戦略的業務提携を結んだと発表しました。
ECの世界で存在感を増す米ネット通販大手のアマゾン・コムに対抗すべく、楽天は新会社を今年3月に立上げ、生鮮食品や日用品を中心としたネット通販事業をスタートさせます。
30代~40代の兼業主婦を主なターゲットとして、半調理食品や1品のおかず用にカットされた野菜や計量済みの調味料をセットにした「ミールキット」商品の提供を予定しています。
以前より国内では、大手スーパー各社が自社店舗に陳列してある食品や日用品を近隣の消費者宅に直接運ぶネットスーパーが存在し、多くの消費者に利用されてきました。
今後もEC需要の拡大、共働き世帯の増加、高齢者の独り暮らしの増加といった時代背景により生鮮食品のEC市場は拡大が予想されます。
経済産業省の調べによると、2016年度の食品関連のEC利用率は2.25%にとどまっています。
しかし、今後は大手宅配業者の小口保冷配送サービスの充実も市場拡大の追い風になりそうです。
*** アマゾンの生鮮食品配送サービス「アマゾンフレッシュ」 ***
アマゾンが2016年4月からスタートしたサービス「アマゾンフレッシュ」は、注文から最短4時間で生鮮食品が届く便利さが受けて利用者を増やしています。
「アマゾンフレッシュ」のサービス画面を立ち上げると、最初に自宅の郵便番号を聞かれます。
試しに筆者のオフィスの郵便番号を入力してみました。
さすがに、まだ地方には対応していないようです。残念です。今後のエリア拡大に期待します。
本サービスの利用方法はとても簡単です。
1.お届け先の住所と配送希望日時を選択します。
2.商品をカートに入れます。
3.レジに進んで決済方法を確定すれば完了です。
Amazonで書籍を購入するのと殆ど同じですね。
配送希望日時を細かく設定できる点が書籍などと少し異なる点でしょうか。
ちなみに希望の日時の配送条件が同サービスと合わない場合は、自動的に最短の配送日時が表示されます。
■アマゾンフレッシュのトップページ
季節に合わせて生鮮食品をディスプレイしているので、自宅に居ながらにしてショッピングを楽しめる感覚を提供している点はさすがですね。
今年の冬はとても寒い日が続いているので、鍋やおでんの食材がトップページに紹介されていると嬉しいですね。
トマトや玉ねぎなども単品で注文できるので、時間に余裕のない兼業主婦には大変有り難いサービスです。
*** 小口保冷配送サービスに関する国際規格の開発 ***
こうした生鮮食品をECで販売するサービスが拡大していく中で、生鮮食品や加工食品を物流事業者が消費者の自宅へ配送する
「小口保冷配送サービス」の需要が世界各国で高まっており、国内の物流事業者もこうしたサービスの品質向上に力を入れ始めています。
ヤマトホールディングス株式会社では、2017年2月に小口保冷配送サービスに関するPAS規格『PAS 1018』を、業界に先駆けて発行しました。
ヤマトでは以前よりアジアを中心に、小口で冷たい荷物を運ぶ「クール宅急便」というサービスを提供していました。
近年アジアにおいては、通販市場の拡大が非常に躊躇であり、それに伴って食品を中心としたものを冷蔵・冷凍で送るという文化が非常に広まりを見せています。
しかし、一部の国の事業者では、不十分な温度管理により粗悪なサービスが散見され、保冷配送サービスに対する消費者の信頼性欠如が市場拡大を阻害すると懸念されてきました。
そこでヤマトでは、安定したサービスを提供する事業者であるということを示す為に、国際基準を策定する方針を決定しました。
今回同社が策定した「PAS1018」とは保冷配送サービスのうち、積み替えを伴う輸送を対象としています。
この規格の中では荷物の取り扱いのみならず、輸送ネットワークを構築すること、サービスに必要な適切なハードウェアを用意すること、また社員への教育を実施すること等の内容についても要求事項に定められています。
このPAS1018という規格が広く利用されることで、海外における保冷宅配サービスの業界品質の向上と安定が期待されます。
その結果として幅広いお客様がこういったサービスを安心して利用することが出来るようになり、市場拡大の一助になることでしょう。
そうすれば、こうした小口保冷配送サービスがまさに社会の新たなインフラとして成長することが出来ます。
農産品を送る生産者の皆さんが、直接消費者にお荷物をお届けする、飲食店に小口多頻度に食材をお届けするといったことも可能になってきます。
サービス利用者のビジネスに貢献できるサービスに成長することでしょう。
ヤマトにとっても国際規格を作るというのは初めての試みでした。
物流サービスを提供する業界についても新たなチャレンジであったといえます。
こうした規格をただ作るだけではなくて、それを多くの企業が利用することで初めて意義を達成できます。
今後はより多くの国や地域の物流事業者さんがこの規格を利用できれば良いと思います。
国の政策としてもこうしたサービスに対する規格を作成する動きが始まっています。
経済産業省産業技術環境局は、国際標準化機構(ISO)において、『小口保冷配送サービス』に関する国際規格を開発する新たなプロジェクト委員会の設立が承認しました。
■「小口保冷配送サービス」のイメージ(経済産業省HPより抜粋)
本プロジェクト委員会では、温度管理保冷配送サービスにおける輸送過程での積替えを伴う保冷荷物の陸送に係る国際標準化の為のガイドラインの策定及び評価基準策定がミッションとなります。
日本から国際議長及び幹事を輩出して国際規格開発を主導していくとともに、(一財)日本規格協会(JSA)が国内審議団体として国際標準化活動の中核を担って進めていくとしています。
■国際標準化 各国との連携に向けた戦略的な取組(経済産業省作成資料)
こうした規格が策定されることで、サービス利用者との信頼を確立し、ベストプラクティスを求めながらコストを削減することが可能となり、業界内のイノベーションが促進されることでしょう。
大手の宅配業者に頼ってきたこれまでのEC輸送は、今後多様化していくことが予想されます。
荷主であるEC事業者は利用出来る国内便を組み合わせることで選択肢を増やし、今後予想される宅配業者の運賃値上げの対抗策を準備しておきましょう。
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