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*** 鉢植えを長持ちさせる秘訣 ***
鉢植えを長持ちさせる秘訣をご存知でしょうか?
花が元気であるためには、栄養を取るための根がしっかりと張っていなければなりません。
根が長くしっかり張ることで花はぐんぐん成長するのです。
鉢植えの花が元気がなくなったら、一度、鉢から出して根を切り取り、根が伸びやすいようにしてたっぷり肥料を与えて、また鉢へ戻すとまもなく元気に繁ってきます。
植え替えのタイミングは鉢の下から根がはみ出てきたときです。
栄える元は根にある証拠です。
目に見えない根を培う事が、目に見える姿の栄える方法です。言い換えれば、目に見えないものと、目に見える姿がつりあうということです。
どんなに枝葉が栄えていても、根が枯れていたらそれは衰退の始まりです。
*** 経済を成長させる元は物流にあり ***
経済を花に例えるならば、その大動脈である物流は根っこです。
少子高齢化、物量増加などによるリソース不足は鉢の下から根がはみ出してきた状態です。
前回の稿でも取り上げた渋滞問題も根が窮屈になっている証拠です。
本稿では、平成28年、国土交通省が立ち上げた「生産性革命プロジェクト」について、最新テクノロジーを活用した「物流の生産性」に焦点を当て、物流という根をのびのびとしっかりと張ることで経済をぐんと成長させるためのヒントを考えてみます。
*** オールジャパンで取り組む「物流生産性革命」 ***
国交省の調べによると、近年の我が国のトラック積載率は41%で、渋滞による道路移動時間の損失は2割と言われています。
積載効率については平成7年の55%からおよそ15%も低下しています。
(出典)国土交通省「自動車輸送統計年報」
また手待ち時間についてはも1運行当りおよそ2時間の手待ち時間が発生しています。
(出典)国土交通省「自動車輸送統計年報」
ドライバー不足が深刻化していますが、仮にトラックの積載効率が70%になり、渋滞緩和により移動時間の損失が2割まで削減し、手待ち時間が半分に削減出来れば、現在のトラックとドライバーで十分に国内の物流は回るのです。
前回の稿で、『物流の生産性=労働生産性』という観点では物流生産性の改革は行き詰ってしまうと書いたのはこうした理由からです。
物流は労働集約型の産業なので、どうしても生産性向上となると労働者一人一人の努力による生産性向上に焦点が当たってしまいがちですが、それだけでは根っこを張り替えたことにはなりません。
仕組みを根底から変える必要があるのです。
業界が一丸となってこれからますます深刻化する労働力不足を生産性の向上により克服し、経済成長に貢献しなければなりません。
国交省が提唱する、オールジャパンで取り組む「物流生産性革命」の推進の中では、下記2点の実現により物流事業の生産性を2割向上させることを案に目標を検討しています。
1.荷主協調のトラック業務改革や、自動隊列走行の早期実現による「成長加速物流」
2.受け取りやすい宅配便などによる「暮らし向上物流」
*** 自動隊列走行の現状と未来 ***
自動運転技術を用いた自動隊列走行は単独での自動運転に比べ実現性が高く、沢山の注目と期待を集めている最新テクノロジーの一つです。
プロが運転するトラックやバスの先頭車両を自動運転車が追従して走行するシステムで、後続の自動運転車両は安全が確保されるとともに省エネ運行が可能になります。
この分野ではNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)やベンツ、トヨタなども参入して各企業や団体で急ピッチで研究が進められています。
その中でも欧州の企業や研究者によって構成された「SARTRE」というプロジェクトが開発する技術が注目されています。
GPSを利用して各車両の現在位置情報を把握し、隊列形成をおこなうシステムです。
隊列に参加したい車両は事前に参加予約を行います。
各車両はレーダーやカメラ、センサーといった安全システムを搭載し、先導車や追従車を常時モニターします。
また追従車両は先頭車両の加速度やブレーキ、方向をワイヤレス通信により監視してその動きを模倣します。
未だに自動運転についてはサイエンスフィクションに過ぎないという意見が絶ちませんが、この自動隊列については実現はもう目の前まできています。
また自動隊列ではありませんが、特車許可基準の車両長を現在の21mから25mに緩和することで、荷台車両を連結し通常の10tトラック2台分の荷物を1台のトラックに運ばせる案なども検討されています。
*** 終わりに ***
我が国には今豊富な資金があるわけではありません。
花が枯れたからといて、鉢植えを買い替えることはできないのです。
こうした財政的な制約が厳しさを増す中で経済を成長させる為には、”既存リソースの無駄のない活用”や”規制や運用などの見直し”、”最新テクノロジーの活用”といった「小さなインプットで大きなアウトプット」を生み出すという観点で皆でアイディアを出しあい工夫をして共創する文化を培っていかなければならないと強く感じます。
その為には根の1本1本である、各企業が積極的に未来型の投資を優先し、力強く根を張る必要があるのです。