かつて中国と地中海世界の間の歴史的な交易路として栄えたシルクロード。
それがいま、中国の習近平国家主席が提唱しているアジアとヨーロッパをつなぐ巨大経済圏「一帯一路」構想という形で蘇ろうとしています。
「一帯一路」とは、ヨーロッパとアジアに陸路「シルクロード経済ベルト」(一帯)と海路「21世紀の海上シルクロード」(一路)からなる巨大経済圏の構築プロジェクトであり、中国が仕掛けた世界を巻き込む大物流改革です。
今年5月、北京で開かれた「一帯一路」の国際会議には130ヶ国1,500人が参加しました。
これまでアジアとヨーロッパをつなぐ物流手段は主に海路と空路でした。
そこに3つ目の手段として新たに鉄道が加わることで、中国を中心としたアジア~ヨーロッパ間の物流に大きなインパクトを与えることができます。
アジア内陸地域の企業がヨーロッパに商品を輸出する場合、港まで輸送してそこから船で運んでいました。
これからはダイレクトに線で結ばれる為、そうした余分な輸送がなくなりスピーディに低コストで商品を運ぶことが出来るようになります。
この構想が実現すれば、世界人口の約6割、世界のGDPの約3割の巨大経済圏が誕生することになります。
安倍首相は6月5日に開かれた国際交流会議の夕食会の講演で、この「一帯一路」構想について、
「環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和の繁栄に貢献していくことを期待する。
日本はこうした観点からの協力をしたい」
と協力を表明しています。
中国に拠点を置く日本企業もこの構想に注目をしており、空路よりも安く、海路よりも早い新たな物流ルートに大きな期待を寄せています。
安全面やインフラ投資の資金面でまだまだいくつものハードルはあるようですが、今後の動向を注視する必要がありそうです。
*** カスタマーサービスを3つの要素に分類 ***
前回に続いてオムニチャネル時代にロジスティクスが目指すべきカスタマーサービスについて考察を進めます。
今回はカスタマーサービスを「消費行動の変化に対応して絶え間なく変化」させていくために、
「1.取引前要素」「2.取引要素」「3.取引後要素」の3つに分類して、施策をする方法をご紹介します。
*** 1.取引前要素について ***
カスタマーサービスの取引前要素は、その方針や計画に関連します。
カスタマーサービスの方針を記載した文書や方針に基づいた組織構造などです。
社内はもちろんお客様に対してサービス方針や理念が明確に伝わる仕組みを整備する必要があります。
一口にカスタマーサービスと言っても、業界によって顧客の要求は異なります。
当然重要な要素は違ってきますので、どんな企業でもカスタマーサービスに対して明確な方針を持つべきです。
しかし、こうした方針を明らかにした企業はまだまだ少ないのが実状です。
*** 2.取引要素について ***
取引要素において、ロジスティクスの観点で最も重要な3つは「オーダーサイクルタイム」「在庫のアベイラリティ」「オーダー遵守率」です。
オーダーサイクルタイムは受注から納品までのリードタイムです。
スピードが重視されますが、オムニチャネル時代ではスピードだけでなく、タイミングも考慮しなければならなくなります。
在庫のアベイラリティとは、利用可能な在庫の保有率のことですが、取引時に品切れがあると売上は他の店や企業に移動してしまいます。
米国アンダーセン・コンサルティングの調査によると小売業者は品切れによって潜在的な売り上げの46%を失っているそうです。
これまでは欠品をある程度は許容して、在庫を増やさない戦略が良しとされてきましたが、企業と顧客との接点がバーチャル化していくオムニチャネル時代においては、こうした戦略は決して得策とは言えなくなるでしょう。
オムニチャネルとは少し関係なくなりますが、製造業においてもジャスト・イン・タイム戦略を採用する企業が増えているため、必要な製品が必要なタイミングにないとクレームになってしまいます。
こうしたプレッシャーは時間の経過とともに高まっていると言えるでしょう。
オーダー遵守率は顧客のオーダー(欲しい商品、欲しい期日、その他の要求)に対してどれだけ満足できたかです。
どれか一点でも顧客の要求を満足させることができなければ、ブランドスイッチングが激しいオムニチャネル時代においては、顧客離反の最大要因となります。
*** 3.取引後要素について ***
ECの業界では、クレームの約3割~4割が商品配達時のクレームと言われています。
そのうち最も多いのが商品遅配によるクレームです。
続いて誤配、破損と続きます。
企業によってはクレームの半数以上が商品配達時のクレームと言いますから驚きです。
また顧客からの商品配送による問合せや、受け取り時間、場所の変更依頼について、問合せ窓口が明確でスピーディに適切な回答・応対が出来るかもこの要素になります。
クレームや返品依頼にどれだけスピーディに対応できるかという検討も必要です。
*** 最後に ***
多くの企業は、オムニチャネル時代の新たな競争力学に頭を悩ませ苦しんでいます。
それはこれまでのマーケティング活動、価格競争の手法が通用しなくなってきているからです。
百貨店等はその最たる例です。
競争相手もこれまで主に国内、同地区の企業や店舗であったのが、今では世界中の企業がインターネットを介して競争の中に加わってきています。
またロジスティクスについていえば、これまで多くの企業ではコスト削減に焦点を充ててきました。
在庫削減もそうしたコスト削減に焦点を充てた戦略の一つです。
しかし、オムニチャネル時代においては、こうしたコスト削減に焦点を充てたロジスティクスは最良なマーケティング戦略とは成り得ません。
これまで通りコスト削減を主としたロジスティクスを構築する企業は大きなダメージを受けることになるでしょう。
コスト削減によって得られた価値は短期的なものであり、長期的にはその価値以上の顧客を失うことになるからです。
オムニチャネル時代においては、これまでの低コスト戦略は効率的なロジスティクスにつながるかもしれませんが、効果的なロジスティクスにはつながりません。
ロジスティクスのカスタマーサービス構築においてもっとも重要なことは「消費行動の変化に対応して今回ご紹介した3つの要素を絶え間なく変化」させることです。
コスト削減ではなく、消費行動の変化に対応していくことが重要なのです。