物流は今、大きな変革期にきています。
Eコマースの急伸によって急激に物量が増え、ITやテクノロジーを活用して不足するリソースを補おうとする
アプローチがアメリカ、中国、日本など世界のEコマース先進国で進んでいます。
前回は物流の中で最も人的リソースを要するピッキング作業のテクノロジー活用についてご紹介しましたが、
今回はEコマース物流におけるラストワンマイルでのAIの活用について考えてみたいと思います。
Eコマース大手のヤフーでは、クレームのおよそ3分の1が配送によるクレームです。
ちなみに配送クレームの上位は、
1.遅配
2.誤配
3.破損・汚損
また配送業者側からすると、配送時に一番困るのが、再配達の多さです。
不在による再配達の割合は25%といわれてますから、実に4件に1件は不在で再配達が必要になる計算です。
こうしたEコマース物流におけるラストワンマイルの課題を解決しようと、ITやAIなどの最先端テクノロジーの
活用や研究が進んでいます。
オフィス用品のデリバリーサービス最大手のASKUL(アスクル)の事例を少しご紹介しましょう。
BtoBからBtoCへ事業範囲を拡大しているASKULでは、一般消費者向けの宅配サービスとして、
「HappyOnTime(ハッピーオンタイム)」というサービスを2016年より開始しています。
ITを活用することで、注文された商品を家庭に届けるまでに下記3つの機能を提供しています。
1.1時間単位でお届け時間を指定可能
2.お届け時間を30分単位でお知らせ
3.お届け10分前に自動通知
いずれの機能もスマフォなどで簡単に利用でき、遅配によるクレームや不在による再配達等の課題を解決
する強力なツールとして提供しています。
またこのサービスで筆者が感動したのは、配達をしてくれているドライバーさんの名前と電話番号が表示される為、
急な予定で時間を変更したいときなども、すぐに連絡がとれるという便利さです。
さらに同社では、再配達や遅配を削減する為にAIとビックデータの活用を進めています。
どういった商品を買う人、どういった頻度で購入する人が不在が多いか等を分析したり、配送計画や配送車輌状況
をリアルタイムで管理し、さらに高い精度の配送計画を研究開発しています。
AIには日立製作所の「Hitachi AI Technology/H」を採用し、AIが持つ自動学習の技術によって、配達精度と配送能力
の最大化を図っています。
これまでEコマース物流の大きな課題として、売り手、運び手、お客様がそれぞれ分断されていました。
分断されていた各レイヤーを情報サービスでつなげてあげることで、全体で役割分担して、協力しようという仕組みが
構築されていけば社会全体の負担が減るのではないでしょうか。
これまで我々人間には見えていなかった様々な相関性をAIを活用することで見出していき、その情報を細分化して
バリューチェーン全体として共有することが出来れば、物流の生産性は飛躍的に向上するのではないかと期待しています。
*** 顧客別に物流コストを整理しよう ***
企業のロジスティクスを語る上で、2大コストとされるのが、「物流コスト」と「在庫コスト」です。
この2大コストをロジスティクス・マネジメントの観点で考察します。
物流コストにメスを入れるには、物流コストの把握が重要になりますが、その算定において有用な「物流ABC」について
前回からご紹介しています。
今回は算出されたアクティビティ単価をベースに、顧客別の物流コストを評価する方法について解説します。
アクティビティ単価の算出方法については、前回詳しく解説していますので、そちらを参考下さい。
http://www.inter-stock.net/column/no154/
物流コストを見える化する際にとても重要な視点が、顧客別にコストを見える化するということです。
物流ABCは、アクティビティ毎にコストを整理し、単価を算出することが目的ではありません。
顧客別にそのコストを整理して、各顧客別の配送サービスの見直しや作業の見直しを仕掛ける為のベースとなる数値です。
お客様Aはピース単位での注文が多く、お客様Bはケース単位での注文が多い場合などは同じ物量でもコスト格差は大きく
なります。
さらに言えば、お客Cは食品が多く賞味期限の管理を求められ、お客様Dは出荷時に専用の伝票を同封しなければならない
など、物流コストは顧客が求めるサービスによって大きく異なるのです。
顧客によって物流作業は大きく違ってきますので、作業毎のコスト整理も必要ですが、顧客毎のコスト整理という視点は決し
て忘れてはなりません。
*** 顧客別に物流コストを算出するためのプロセス ***
それでは早速、算出したアクティビティ単価を用いて顧客別の物流コストを算出するプロセスをご紹介します。
1.まずはじめに設定したアクティビティ毎に単価を記載します。
2.続いて顧客毎&アクティビティ毎に処理数(行数)を拾い出して追加します。
3.最後にアクティビティ単価に処理数を掛け合わせることで顧客毎の物流コストを算出します。
このように顧客別にコストを見ていくと、顧客毎にいかにコスト格差が生まれているかが分かるようになります。
これだけでも十分に利用価値はありますが、処理行数が全てことなるので、単純に合計コストのみで比較して
もあまり意味はありません。
この表をベースに1ピースあたりのコスト、もしくは1行当りのコストを計算して比較することをお勧めします。
自社の物流コストにメスをいれる場合、”顧客別”という視点を決して忘れないようにしてください。