世界経済を見渡すと、物価が上昇しつつあります。
1年前の2016年上旬は原油価格の低下や欧州の大手金融機関の株価下落
などから、世界経済の先行きへの期待は低下していました。
しかし2016年夏ごろから中国経済の安定や、石油輸出国機構(OPEC)の減産決定
による原油価格上昇などによりユーロ圏や韓国などのアジア新興国の物価は上昇しています。
わが国の今年1月の消費者物価指数を見ても前年同月比0.1%上昇しており、およそ
1年1ヶ月ぶりにプラスに転じました。
しかし、政府や日銀が目指す物価上昇率2%の目標にはまだまだ遠いのが実情です。
製造業や非製造業の多くで労働人口の減少に伴う人手不足が深刻化し、政府が進める
働き方改革による労働時間の縮小などから業務の縮小を検討する企業が増えています。
このような状況で今後企業がしっかりと利益を確保していくためには、人工知能やITなどの
新技術の現場投入を促進し、柔軟に労働力を活用できる環境を整えることが急務となります。
2012年12月にスタートした第二次安倍政権は5年目を迎え、アベノミクス政策の円安誘導により、
輸出関連企業の業績が回復し、株価も上昇してきました。
しかし、財政・金融政策に頼るだけでは物価上昇率2%の達成や需要の回復は行き詰ります。
今後は規制緩和などの構造改革、先端技術の現場投入の促進が需要の回復、物価上昇の
鍵になるでしょう。
***在庫を3つの種類に分類して考えよう***
企業のロジスティクスを語る上で、2大コストとされるのが、「物流コスト」と「在庫コスト」です。
この2大コストをロジスティクス・マネジメントの観点で考察する4回目です。
在庫コントロールとは、欠品防止と在庫削減という相反する目標の最適バランス点をいかに
戦略的に見出すかと言えます。
この最適なバランス点を見出す為に在庫を3つの種類に分類します。
1.サイクル在庫
2.安全在庫
3.オプション在庫
『1.サイクル在庫』とは、次の納入までの需要に対応するための在庫です。
調達期間の日数分の在庫が必要になります。
計算式は1日当りの平均出荷量×調達期間日数で求められます。
例えば1日平均20ヶ出荷され、発注してから納品されるまでに3日かかる商品であった場合、
20ヶ×3日となり、60ヶがサイクル在庫となります。
『2.安全在庫』とは、納期の遅延や突発の出荷など、イレギュラーに対応する為の在庫です。
あらかじめ数量を定量で設定する場合と、出荷量に応じて変動させる方法とがあります。
計算式は「安全係数」 × 「使用量の標準偏差」 × 「発注リードタイムと発注間隔の合計の平方根」
となります。これでは少し難しいので、簡単にEXCELを利用して導き出す方法をお教えします。
下記のEXCEL関数の組み合わせで簡単に求められます。
安全在庫 = NORMSINV(1-設定欠品率) × STDEV(出荷実績) × SQRT(調達日数)
これにより設定欠品率の範囲で欠品を最小限にすることが可能な安全在庫を簡単に導き出せます。
欠品率を限りなく0%に近づけて設定することも可能ですが、これだと在庫過剰になり、製造業などでは
とくにリスクが高まるでしょう。
業種や扱い品により値は変わりますが、まずは2%~5%の欠品率で設定するのがお勧めです。
『3.オプション在庫』とは、企業が戦略的に積み増ししておく在庫のことです。
こちらについては計算式はなく、任意で設定します。特売などの販売戦略上、通常よりも多く在庫を
持たせる場合に設定します。
***在庫をコントロールするということは発注量をコントロールするということ***
以上、3つの在庫の値を定義することで、在庫を管理する上で重要な下記3つのパラメータ
を自動的に導き出すことが出来ます。
『1.最大在庫数量』・・・「サイクル在庫」 + 「安全在庫」 + 「オプション在庫」
『2.発注点』・・・「サイクル在庫」 + 「安全在庫」
『3.発注量』・・・「サイクル在庫」 + 「オプション在庫」
在庫を最適にコントロールするということは、安全在庫と最大在庫数量の間で在庫を管理することです。
そのためには発注量(生産量)をコントロールするしか方法はありません。
何故なら、出荷量は消費者や得意先が主導権を握っている為、コントロール不可能だからです。
予測不能な出荷量に対して、自社が唯一主導権を握ることの出来る発注により過不足なく在庫を最適化
することが在庫コントロールであり、最も重要なオペレーションなのです。
次回はこの発注の方法についてもう少し詳しく説明をいたします。