日本の3PLの市場規模はここ数年右肩上がりで成長しています。
2015年度の市場規模は2兆4811億円で前年度より2300億円増えています。
2005年度が1兆12億円ですから、この十年で247%も成長したことになります。
特に売上上位企業の事業規模拡大に拍車がかかっています。
2015年度の売上高ランキングでは、日立物流(4,658億円)、センコー(2,413億円)、
郵船ロジスティクス(1,973億円)が上位3社となっています。
こうした大手3PL各社の海外売上高の比率は年々上昇しており、米国や東南アジア
の市場が特に伸びています。
(米アームストロング&アソシエイツ社調べで2015年度米国の3PL市場は1,610億ドル)
しかし、市場規模の拡大とは裏腹に収益性は低下しています。
国内の3PL業の営業利益率を見ると2010年度は8%以上の営業利益率を出した企業割合
は15%であったのに対し、2015年度は7.9%と約半数に減少しています。
また「収益性が向上している」と回答した企業数を見ても、2010年度は21%であったのに対
し、2015年度は7.3%とこちらも半数以下に減少しています。
こうした数字からみても、物流業界全体でコスト構造を抜本的に改革する必要に迫られて
いることがわかります。
製造業に比べ物流業の安全や品質管理にはまだまだ伸び代があります。
物流業の商品はモノではなくサービスである為、様々な切り口で全体の仕組みを変えてい
くことで、生産性の抜本的な向上や新サービスの開発など、物流企業としての競争力その
ものを向上していけるからです。
また中小規模の3PL企業はまだまだIT化が進んでいません。ITを駆使してサービスの向上、
コスト削減を積極的に進めていく必要があります。
本来は企業のIT部門がイノベーションを率先して進めていかなければならない立場ですが、
IT部門自体が、開発予算やセキリュティ問題を盾にイノベーションを阻む抵抗勢力の一つ
になってしまっている状況が散見されます。
IT部門も経営側と同じレベルで変革し、経営・事業に貢献する高い意識とコミットメントが求
められます。
***在庫管理には2つの機能があることを知る***
企業のロジスティクスを語る上で、2大コストとされるのが、「物流コスト」と「在庫コスト」です。
この2大コストをロジスティクス・マネジメントの観点で考察する3回目です。
前回は在庫コントロールを実施する上で「社内外の業務調整能力」が非常に重要であるとい
うことについてご説明しました。
https://www.inter-stock.net/column/no143/
在庫を適正にコントロールするには、基準と責任の明確化が必要になり、それを決定し
実行することが、在庫マネジメントの成否を決するという本質からみてもそれは明らかです。
ここで、「在庫管理」には二つの機能があるということをみなさまにご認識頂かなくてはなりません。
一つは「保管管理」と呼び、在庫品の入りと出を管理し、在庫の保管数量、保管状態について管
理することをいいます。
もう一つは「在庫コントロール」と呼び、市場の需要に合わせて製品(商品)を過不足なく供給する
為の管理です。
同じ”在庫管理”でもこの2つの活動は似て非なるものです。
保管管理では在庫を合わせること、記録に重点が置かれるのに対し、在庫コントロールでは在庫
数量の最適化に重点が置かれます。
つまり在庫コントロールとは、市場の需要と在庫量との同期化を図る手段ということになります。
しかし多くの企業がこの在庫管理を「保管管理」で満足させてしまっています。
しかしこの保管管理では、在庫数の正確な把握は出来ても、適正数が管理・維持されない為、
企業のリスクが減ることはありません。
***重点管理在庫品を絞り込もう***
会社が倒産の危機に陥る主な原因として、
1.売掛金の未回収、2.人件費の圧迫、3.設備・在庫への過剰投資が上げられます。
収益性が高く、財政が安定している企業になる為には、在庫を削減し回転率を上げていく
必要があります。
その為にはまず、重点管理する在庫品を特定します。
全ての在庫に対して在庫コントロールが適正に行われることが理想ですが、いきなりそこまで
到達するには時間もかかりますし、途中で挫折してしまいかねません。
重点管理する在庫品をまずは絞り込むことが重要です。
ABC分析やパレートの法則で説明されるとおり、全体在庫の20%の重点管理品をしっかりと
在庫コントロール出来れば、80%の売上に対して管理がされることになります。
まずはこの重点対象となる20%の在庫品を絞り込む作業から取り掛かりましょう。
売上高もしくは出荷量でABC分析を行い、A品目を対象に絞り込む方法が簡単でお勧めです。
***在庫の基準値を最低2つ設定しよう***
続いて在庫の基準値を設定しなければなりません。
在庫の基準値を決めている企業は多いかと思いますが、基準値が1つしかない場合が多いようです。
基準値が多すぎると管理が煩雑になりますが、最低でも「最小在庫数量」と「最大在庫数量」を定めましょう。
最小在庫数量を「発注点」、最大在庫数量を「安全在庫」と定義しても良いでしょう。
この最小と最大の間で在庫数が推移するように在庫をコントロールし定点観測します。
***本章まとめ***
本章のポイントを整理します。
1.在庫管理には「保管管理」と「在庫コントロール」の2つの機能があり、似て非なるものである。
2.在庫コントロールを行う重点在庫品(全体在庫のおよそ2割)を絞り込む。
3.在庫の基準値を最小(発注点)と最大(安全在庫)で2つ設定する。
次回も在庫コントロールの手法についてご紹介します。
販売状況や市場の需要に対して在庫量を適正な範囲に収める為の手法です。
みなさまの在庫コントロールのお役に立てれば幸いです。