「レベニュー・マネジメント(RM)」と呼ばれる収益管理手法が注目されています。
通常のサプライチェーンマネジメントが需要予測に基づいて生産量や在庫量を
コントロールするのに対して、販売量と価格を操作することで需要自体をコント
ロールする手法です。
ホテル業界で注目され導入が進んでいるようですが、ホテルの部屋の料金が
シーズンになると高くなり、シーズンオフは安くなるといった仕組みはは昔から
ありました。
ではこれまでの部屋の料金操作とRMによる料金操作とは何が違うのでしょうか。
それは理論的な予測をベースに価格が操作されているかどうかです。
つまりRMは理論的な需要予測により価格を操作することであり、これまでのよう
に単に利用が増えるから価格を高めに設定する方式とは異なります。
別言すると需要予測のないRMは存在しないということになります。
このRMに関しては東北楽天が球界初のフレックスプライス制を導入したことで、
一躍世間に知れ渡りました。
地方球団である東北楽天の宮城球場は2万3千人しか収容なく、例えチームが
優勝争いを演じたとしても興行収入は限られてきます。
そこで同球団は限られた収容人数で収益を最大化する為に、フレックスプライス
制の導入を決定しました。
先週、アマゾンの宅配に疲弊するヤマトがついに荷物の取扱量の抑制を実施する
と発表しました。
このニュースを見た時、筆者はすぐにRMの導入を検討してみては?と考えましたが、
野球やホテルと決定的に違い、ヤマトなどの宅配業には今や閑散期はありません。
値下げするタイミングが無い為、RMが単なる運賃の値上げにしかならない可能性が
大なのです。
果たして、物流業界にも価格で需要をコントロールするRMが採用される日が来るの
でしょうか。
***資本主義の未来は物流に託された***
さて今回も『資本主義におけるロジスティクスの本来の役割とは何か?』というテーマで、
これからの企業の物流戦略のあるべき姿を考察していきます。
誤解を恐れずに言えば、「資本主義とは利益を求め続けることが宿命」です。
利益を最大化するということは、商品を作る「生産期間」と商品を売る「流通期間」の回転
率を最大化することを意味します。
そしてその回転率を最大化する最後のバトンを物流に託されたと筆者は考えています。
産業革命に始まり、流通革命、情報革命に続いて今まさに物流革命が起ころうとしています。
人類は産業革命により生産力を飛躍的に向上させ、流通革命により消費の拡大に成功し、
情報革命により空間や国境の制限を超えビジネスを加速させることに成功しました。
***資本主義発祥の地でも経済が長期低迷***
このようにいくつかの革命により、人類に繁栄をもたらせてきた資本主義ですが、経済学者
ジャック・アタリは「現代はまさに、資本主義の歴史的転換点だ」と言っています。
資本主義により世界の成長はこれまでのように続くのでしょうか?
世界の36億人の総資産が富裕層のトップ62人と同じという異例の巨大格差が生まれています。
アダム・スミスの国富論(1776年)の予言通り240年に渡って続いてきた経済成長ですが、その成
長は鈍化しています。資本主義発祥の地であるイギリスでも製造業や貿易など幅広い分野で成
長が低迷し、EU離脱もこうした背景が要因ではないかとの指摘もあります。
「これは資本主義の終焉の始まりではないか。」といった悲観的な意見もあります。
こうした歴史的転換点にある資本主義において今、物流に託された役割とはなんでしょうか。
それは「真のグローバルロジスティクス」という巨大なネットワークの構築です。
日本国内のみならず、世界中の物流網を一つに統合し、空間や国境を越えたモノの流れを
実現します。
この物流革命により、これまでの重要な社会価値であった国や国益という概念が薄れ、世界人類が
平等に豊かになり、必要な物資を必要な時に廉価で手に入れることが出来るようになるのです。
物流のネットワーク化が本格化すると、まず車両や燃料は共同購入になります。
モノを運びたい企業は会員に登録するだけで、必要な場所に必要なタイミングで商品を届けること
が可能になります。
現在のように、距離や荷物の才数(物流で料金計算に用いられる単位)で料金が変わることはなく、
毎月定額のサービス利用料を支払うだけでよくなります。
自動化は更に進み、、ロボットやAIの活用は物流を中心に進化していきます。
そうした物流の巨大ネットワークが人類共通のプラットフォームとなり、最終的には物流資本の労働
力は80%が自動化&デジタル化されます。
これが未来の物流の姿だと筆者は考えています。
***これからの物流戦略における2つの投資対象***
こうした未来を見据えて今、物流に携わる企業が戦略を構築していく上で、重要な投資対象とは
何でしょうか?
それは2点です。
共同化の為の「自動化への投資」と、「ネットワーク構築の投資」です。
自社だけの利益を考え、労働力を効率化する戦略はいずれ時代遅れの戦略となるでしょう。
資本主義における物流の本来の役割と未来の姿からみてもそれは明らかです。
日本で物流倉庫が過剰気味になり、そうした物流不動産関連の株も落ち着いてきているようです。
こうした市場の動きは物流という存在が限定的に捉えられている証拠です。現在の物流では過剰
気味かも分かりませんが、「真のグローバルロジスティクス」の観点からすれば、最新鋭の物流拠
点は圧倒的に不足しています。
物流の本当の可能性と未来に目を向ければ、まだまだ足りないと言えるのです。
物流革命はロボットやAI、自動化の技術革新の中心となり、低迷する資本主義を立て直す力を秘
めています。国だけでなく世界を平等に豊かにする可能性を秘めています。
物流に携わる皆様には、そうした自負を持って日々の戦略構築に努めて頂きたいと思います。