今年5月に経済産業省は、「流通・物流分野における情報の利活用に関する研究会」の調査報告書を発表しました。
消費者と直接接点を持ち、メーカーと消費者の間を仲介する役を担う流通・物流業のビッグデータの活用について調査された報告書です。
それによると、消費者と直接的な接点を有する流通業は、他産業に比べて大量のリアルデータを保有し、そのデータ活用に積極的に取り組んできたと説明されています。
とくに小売業が持つPOSデータの活用が、産業全体を大きく変革する可能性を指摘しています。
それを裏付ける最たる例として小売業が主体となって商品開発を行う、プライベートブランドの増加が上げられています。
小売業が保有する大量のデータを活用し、小売側で商品を企画しメーカーへ提案を行うこの開発方法は今後も増えていくとみられます。
他産業以上に消費者と密接な関係を持つ流通・物流業が全産業の情報の主導権を握り、サプライチェーン上流にデータをフィードバックする動きが増えていけば、落ち込む消費者の需要喚起や、新たな付加価値の源泉につながる可能性が見えてくるでしょう。
***売れてる商品の在庫を1.5倍に!***
さて今回も前回に続きリアル店舗小売業のオムニチャネル戦略をテーマに、物流管理&在庫管理の視点で考察します。
前回までの内容で在庫削減がオムニチャネル戦略の強みである顧客ロイヤルティを弱め、得策でないということをお伝えしました。
顧客中心の視点でサプライチェーン全体を見直す必要があることもあわせて述べましたが、各販売チャネルのデータを統合して活用することで「顧客中心の組織に作り変える」ことが可能になることを理解頂きたいと思います。
また在庫管理の視点で利益増加に効果的かつ即効性のある方法として、売れている商品の在庫を増やすという方法があります。
売れていない商品の在庫を削減するのではなく、逆に売れている商品の在庫を増やすのです。
それも1.1倍や1.2倍ではなく、1.5倍がベストと言えるでしょう。
何を根拠に?と思われるかもしれませんがその論理的根拠については、今回は割愛させて頂くとして、まずは騙されたと思って試してみてください。
ある小売大手さんでは、売れている商品、今伸びている商品の在庫を1.5倍にすることで、3ヶ月でその商品の売上が200%増加しました。
またそれに合わせて、あまり売れていなかった商品もつられて売れるようになり、不良在庫となっていた商品の在庫も減っていったのです。
***オムニチャネル戦略を支える、在庫管理、物流の高度化***
リアル店舗やオンライン店舗といった複数の販売チャネルを使い分け、欲しい物を好きな場所で好きな時に買いたいという顧客ニーズの多様化に応えるためには、オムニチャネル用に最適化されたサプライチェーン構築が重要です。
その為にはそれを支える高度化された在庫管理、物流管理が必要になります。
顧客に迅速に商品を届ける為には、受注と同時に倉庫や店舗でアクションが開始される仕組みを構築し、効率的な配送計画を立てることが必要です。
倉庫からの出荷だけではなく、顧客により近い店舗からの出荷を指示したり、顧客地域の商品ニーズ特性を分析し、ニーズの高い商品をより近くの地域の店舗に移動するよう指示をする在庫コントロールをITを駆使して構築します。
こうした顧客インサイトの高度なフルフィルメントを実現出来るかどうかで、オムニチャネル化戦略の成功が決定づけられるといっても過言ではありません。