経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第十二回-|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第十二回-

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画像素材:PIXTOKYO / PIXTA

 

*** 廻船航路開発の引き金となった鎖国 ***

 

日本は長い間、鎖国によって、海外との国交を断絶していました。

その後の明治維新によって、新しく誕生した明治政権が、前政権である徳川政権の古い施政をことごとく否定しました。
封建的で非近代的な国家を、明治政権が近代国家に変えるんだと世間に伝えたのです。
特に鎖国については、明治政府による前政権の格好の否定材料として用いられました。

日本が鎖国体制をとらなければならない事情には、宗教・軍事・交易の三つに懸念がありました。
宗教では、キリスト教の普及を幕府が恐れました。軍事では、諸藩が海外から武器を購入するのを恐れました。
交易では、海外との商取引によって経済力を持った新興勢力が現れることを恐れたのです。

こうした理由から、開国は幕府の支配体制の弱体化につながると考え、鎖国政策を200年以上も続けたのです。
現代に生きる私たちも、こうした鎖国政策によって、日本の近代化が遅れ、弱体化してしまったのだと教えられてきました。

しかし、考え方によっては、この鎖国政策があったからこそ、明治維新後の画期的な成長があったのではないかという見方もあります。

鎖国が続いていた期間も、幕府は海外貿易の重要性は認めていたので、オランダとの交易は続けていました。
当時のオランダは宗教的にも経済的にも自由な国であり、先進的な技術を持った国の一つでした。
もし、鎖国をしていなかったらその他多くの宗教制約の強いカトリック国などの文化が侵入していた恐れもあります。
自由で先進的な国、オランダから高度な文化を取り入れながら、その他の国との外交を断絶することで、自国の文化や思想を大切に醸成するとても大事な期間であったのではないかと思います。

例えば、廻船航路開発において、鎖国体制は大きな引き金となりました。
鎖国の始まりは、海外への渡航が可能な大型船舶の建造を禁止した「大船禁止令」です。
もし、鎖国体制もなく大船禁止令もなければ、大きな船で安全な航海ができ、小さな船のための安全な航路を開発せずにすんだかもしれません。
この、大船禁止令のお陰で、日本の廻船航海技術は様々な知恵と工夫によって開発され、維新後の飛躍的な近代化へと進むための、ロジスティクス・システムの基盤が確立されたのです。

まず、小型船が安全に渡航するために潮流や波浪を考慮した航路が設定されました。
また、小さな船を安全に操船するために高い技術を持った船員を雇用し、灯台を各地に設置して航海の安全性を高めました。
このように航路の設定や輸送管理システムを確立することで、日本独自の高度なロジスティクス・システムが構築されていったのです。

 

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*** 重要性を増す国際物流 ***

 

明治維新後、国交が復活し、グローバル化の流れとなっていきました。
そして今、企業経営における国際物流の重要性が急速に高まっています。
工場から部品や製品を輸送し、倉庫を経由して顧客に製品を届けるという一連の物流プロセスが米国や東南アジア等、グローバルに広がる傾向が強まっています。
これまで国内だけでビジネスを行っていた企業も、少子高齢化などによる国内マーケットの縮小により、グローバル展開を模索しています。
企業経営者には、国際物流の知識を蓄積しつつ、国際物流の最適化を目指していく姿勢が必要となるでしょう。

国内物流と国際物流の一番の大きな相違点は貿易のプロセスが必要になるという点です。
貿易用の手続きや書類と物流が連動するため、物流プロセスを最適化するには、双方を上手く関連付けさせなければなりません。

また、国際物流は各国各地域の貿易に関わる法律上の違いが存在するため、国際的に取り決められた貿易条件としてのインコタームズに関しての知識も必要です。
国際貿易では、船舶と航空機が輸送に用いられますが、今回は船舶による輸出入の物流プロセスについて簡単に解説します。

※インコタームズ・・・売主と買主の間における貿易取引における運賃、保険料、リスク負担などの条件の取り決めを国際的に統一したもの。

■船舶輸送による輸出プロセス

船舶輸送で輸出する際は、まず最初に船のブッキングを行います。続いて、輸出者が輸入者に対してP/L(PackingList)を発行します。
これは貨物の品名・包装・数量・重量などを記載した梱包明細書になります。
同時に請求書および納品書となるI/V(Invoice)も作成します。

物流業者に荷物と貿易書類を渡し、税関による検査が行われた後に、保税倉庫で保管またはコンテナに積み込みが行われます。
通関業者によって船会社が発行する輸出貨物の受領であるD/R(Dock Receipt)コンテナに詰められる貨物の明細を記したCLP(Container Load Plan)が作成されます。

船会社に海上運賃を支払った後、B/L(Bill of Loading)と呼ばれる船荷証券が発行され荷物が引き渡されます。
これでようやく、船にコンテナが積み込まれて出航となります。

 

<船舶による輸出の流れ>
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■船舶輸送による輸入プロセス

船舶輸送により輸入する際は、まず船会社からA/N(Arrival Notice)という貨物到着案内書が発行されます。
船が入港すると、コンテナヤードにコンテナが搬入され、コンテナからの積み下ろしが行われます。この作業をデバンニングと言います。

荷受人は荷物と同時にB/LとL/G(Letter of Guarantee)と呼ばれる保証書を船会社に渡して荷物を受け取ります。
その後、輸入の申告を行い、関税審査、書類審査を行います。関税を支払い、輸入許可を受けて国内輸送にわたります。

 

<船舶による輸入の流れ>
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*** 終わりに ***

 

最近は国際貨物を取り扱う物流企業が好調です。
ライノス・パブリケーションズが物流業売上高上位2千社の競争力を独自評価した2019年度版の物流企業番付でトップとなったコマツ物流は、工場から港湾への部品や製品の輸送の取り扱いが多い企業です。
2位のキャリムエンジニアリングは精密機械の国際輸送に特化した物流企業です。

 

<2019年版物流企業番付総合ランキングTOP5>
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※過去3期分の単体業績を売上規模、利益規模、伸び率、1人当たり収益等で指数化し総合的に評価

 

こうした国際貨物をメインとする物流事業者は、このところ話題の多かったEC物流に比べると注目度が下がっていましたが、米国、欧州、東南アジアの荷動きが活発化するにつれて好調に伸びてきています。

ブロックチェーン技術をこうした貿易に利用する動きも本格化しています。
いずれ、こうした技術が広く使われるようになるとは思いますが、もう少し時間がかかりそうです。
こうした複雑な技術を使わなくても、もっと手前で解決できることが国際物流の世界には沢山あります。

国際物流の領域では、デジタルフォワーダーと呼ばれるスタートアップ企業が世界各地に登場しています。
国際輸送の見積もり、発注、貿易事務、ステータス管理などの一連の機能をクラウドで提供し、国際物流担当者の業務負荷を軽減しています。

国際物流の分野も現状は多くのアナログ作業が残っていますが、今後は後5年もすればメールやFAXによるやり取りがデジタル化され、国内物流とともに物流デジタル化が進んでいくことでしょう。

 

業種別物流改善20のヒント

 

参考文献
ライノス・パブリケーションズ『月刊ロジスティクスビジネス 2019年2月号』
苦瀬博仁 著『ロジスティクスの歴史物語』
石川和幸 著『エンジニアが学ぶ物流システムの知識と技術』

 




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