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*** 機能統合に失敗した日本軍の悲劇 ***
昔から陸軍と海軍は仲が悪いとされています。
生活環境から、教育から、服装に至るまで何から何まで違います。
日本も太平洋戦争中、両軍はことあるごとに対立し、お互いのやり方や思想を軽蔑し合っていました。
飛行機だけみても、日本では陸軍機と海軍機は全く別に製造されていたそうです。
よって設計や部品の共有化も図れませんでした。
陸軍大臣が工場へ視察に行っても、海軍機の製造現場には立ち入ることができなかったそうです。
戦争中もお互いの情報は分断されており、秘密主義を貫き、重要な情報はかなり時間が立ってから知らされるといったことも茶飯事でした。
資材調達や、作戦展開においてあらゆる点で無駄が発生し、不効率極まりない組織が出来上がっていたのです。
対して米軍は統合参謀本部を誕生させることで、こうした問題に速やかに手を打ったのです。
メンバーは陸海軍4人ずつの計8人で構成されました。
1927年には、陸海軍による統合軍の原理・方針・事務の流れ・統合作戦計画などについての指導マニュアルである「陸海軍統合行動」が発行されたのです。
日本でも、陸海軍の作戦機能を統合しようといった意見や動きはありましたが、海軍が消極的であったため長続きしませんでした。
ロジスティクスの本質は、異なる部門間機能を統合し全体最適の効率化を実現することにあります。
米軍はこれを統合参謀本部で実現しました。
しかし、日本軍は陸軍と海軍の作戦機能の統合に失敗し、敗戦したのです。
*** 顧客価値を生まない活動の排除 ***
物流プロセスにおいて使われた時間の多くは付加価値のない時間であるという現実があります。
ここでいう「価値」とは顧客価値を意味します。
顧客価値とは製品の総合的な有用性に貢献するか、もしくは顧客に喜んでもらえるようなサービスのことです。
ライバルが多い業界で、どうすれば他社との差別化が図れるのか、どうすればお客様に振り向いてもらえるのか・・・
運送事業者さんと話していると、運送業は差別化が図りにくいと考えてらっしゃる方が多いようです。
「最終的には運賃で勝負」という考えが捨てきれない経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、顧客価値の本質を理解して、それを追求することが他社との差別化になることを考えれば、どのような業界においても、差別化が図りにくいということは思い違いでしかないことが分かります。
この業界では大塚倉庫さんが有名ですね。
物流とICTを融合して新しい価値を顧客に提供しています。
納品状況や車両位置をリアルタイムに見える化した「ID運輸」や倉庫内作業を完全ペーパーレス化した「ID倉庫」といった新しいサービスを顧客に提供し続けています。
顧客価値の本質を理解しようとしていないから、差別化が難しくなるのです。
顧客の顕在的、潜在的ニーズを探り、どうすれば顧客に喜んでもらえるかを追求しなければ生き残れないのはどの業界も同じです。
実は顧客価値については全く別方向のアプローチが存在します。
それは、顧客価値を創造するアプローチと、顧客価値を生まない活動を排除するアプローチです。
まずは、顧客価値を生まない活動を排除するアプローチから考察していきましょう。
*** 物流事業者のインテグレーションの必要性 ***
システムの観点から見て、運送事業者の荷主に対するオーダー・マネジメントのプロセスは、多くの点について改良が可能です。
運送業界には、古くからの商習慣が残っており沢山のアナログ作業や顧客価値を生み出さない無駄な作業が山積しています。
こうした観点からのシステムインテグレーション※は、しばしば劇的な効果をもたらします。
荷主と運送事業者がオーダー充足プロセスという共通事項においてシステムを統合することで、適切に問題を処理し、障害を除去することが出来るのです。
※システムインテグレーション・・・システム統合のこと
ICTの活用により情報が密接に統合されることで、荷主と運送事業者の信頼関係構築に貢献し、オーダー充足プロセスは劇的に改善されます。
問題処理の新たな方法が浮上し、付加価値のない活動はさらに排除され、効果的な仕事の遂行が可能になります。
運送事業者は複数の異なる荷主の物流ニーズに対応することが求められ、現場では日々荷主毎に全く異なったオペレーションを強いられています。
しかし、こうしたオペレーションの一つ一つを上手にシステム化し、荷主とICTで情報統合することで、生産性を向上しクレームを激減させることができます。
ICTを活用することで、顧客価値を生まない活動を排除することが出来れば、最終的な結果として、物流サービスプロセスにおける
最重要部分のスピードアップと同時に、アウトプットの品質改善が可能になり、大きな競争優位が達成されるのです。
運送事業者が目標とする生産性の高い物流プロセスを作り上げる最大のポイントは、荷主企業とのシステム統合を優先させることでしょう。
川上の荷主企業と川下の運送事業者がロジスティクス的な関係で情報システムを統合させることで、情報を通じた組織統合を可能にします。
マーケット同様に、情報テクノロジーはこれまでにない速度で変化しており、ロジスティクス・マネジメントの質も劇的に変化しています。
荷主企業との情報統合のない真空状態のような中でのビジネスはもはや不可能な時代です。
荷主企業と運送事業者が共同作業で、共通システムの開発、情報システム統合を進めていく必要があるのです。
多くの産業ではこうした情報システムによる情報共有のコンセプトがだんだんと受け入れられつつあります。
BtoBのオンライン取引は今後急速に発展していくでしょうし、情報システムにより高度に統合された関係は、継ぎ目のない「一貫した」プロセスを可能とし、それによってより高品質かつ短い時間でマーケットに商品が供給されます。
*** ICTを活用した新たなサービスモデルの構築 ***
続いて、もう一方の顧客価値創造のアプローチについて考察していきましょう。
荷主企業は運送事業者と情報を共有したいと考えており、これまでとは違った次元でのロジスティクス改善を望んでいます。
日本ロジスティクスシステム協会が作成した『荷主企業の今後の物流戦略に関する調査報告書』に各業界の荷主企業の物流戦略
構築についてのアンケートが掲載されています。
本テーマを進める上で大変参考になるので、ここで少しご紹介します。
■EC事業者
●海外に在庫を移すことで保管コストを減少させ、輸送回数を増やし、トータルコストを削減していきたい。
■流通事業者
●製造~小売までを行うことで、必要に応じて生産拠点側の在庫から消費地側の在庫までをトータルでコントロールしたい。
できるだけ生産拠点側(海外)で在庫を保有し、日本国内の消費地での在庫圧縮を進めていきたい。
●ロジスティクスが機能しないとビジネスが立いかなくなる可能性がある。
●オムニチャネル化を推進していきたい。
■製造事業者
●多頻度少量輸送とリードタイムの短縮はかなり進んでいる。かつては、各段階で在庫を持っていたが、これからは在庫を持つ段階
を、後方(工場サイド)前方(一番顧客に近い拠点)という一元的な考えではなく、リードタイムをできるだけ短くするために在庫
を一元管理し、どこで在庫するのが良いのかを見ないといけない。
こうした荷主企業の物流ニーズに対して、共同でシステム構築を進めるインテグレーションが重要になってきます。
海外に在庫を移すことで保管コストを減少させたいと考えているEC事業者に対しては、クラウドで在庫を一元管理し、出荷オーダーに対して、最も輸送コストが安い拠点の在庫を引当して出荷指示を出力するシステムで貢献できるでしょう。
オムニチャネル化を推進したい流通事業者に対しては、荷主企業の店舗在庫を運送事業者が共有し、運送事業者の倉庫在庫情報と一元管理することで、在庫の圧縮、欠品対策といった価値を提供できるでしょう。
多頻度少量輸送が進み、短いリードタイムで得意先への配送を望む製造事業者に対しては、共配の仕組みを構築し、複数の同様のニーズを抱える荷主企業とシステムを統合し、出荷オーダーに対して、最適な輸送をシミュレーションし、最適配車によって配送コスト削減、リードタイム短縮といった価値を提供出来ます。
いずれもICTを活用して、互いのシステムをインテグレーションし、新しい価値を生み出しています。
ポイントとなるのは、まずは特定の業界にターゲーットを絞り込み、顧客のこうしたニーズに対してICTを活用したビジネスモデルを確立化することで、新しい価値の創造を行い、差別化を図ります。
1つのモデルが成功すれば、徐々にモデルを増やしていき、サービス化することでラインナップを増やしていきます。
荷主企業に積極的に働きかけて、異なる機能を統合的に調整する力を運送事業者が身に付ければ、多くの顧客から選ばれる運送事業者へと進化することができるでしょう。
冒頭にご紹介した米軍の統合参謀本部設立の歴史を参考されることをお勧めします。
参考文献
谷光太郎著 『戦史に学ぶ物流戦略』同文書院インターナショナル
『荷主企業の今後の物流戦略に関する調査報告書』日本ロジスティクスシステム協会
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