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*** 囚人のジレンマ ***
ミクロ経済学のゲーム理論で登場する「囚人のジレンマ」をご存知でしょうか。
経済学だけではなく、私達のビジネスにも活用できる概念です。
他社との協力の重要性を説明する際に、しばしば引き合いに出されるのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
この囚人のジレンマは、互いに協力すれば、協力しないよりも良い結果を得られる状況の中で、協力しないほうが利益を得られる
という状況もあるので、結局は協力をしないという概念です。
これだと少し意味不明なので、分かり易い例をご紹介します。
自分とパートナーが泥棒の疑いをかけられて逮捕されたと仮定します。
2人は別々の監房に入れられ互いに連絡を取り合う事は許されません。
2人は別々の部屋で刑事から取り調べを受けます。刑事は、「自白すれば減刑してやる」とそれぞれに話します。
2人のそれぞれが自白を「する」か「しない」かによって刑罰は次のように課せられます。
選択1:自分は自白して、パートナーはしない
結果 :自分は共犯者として禁固1年、パートナーは主犯者として禁固10年
選択2:自分は自白せずに、パートナーが自白する
結果 :自分は主犯者として禁固10年、パートナーは共犯者として禁固1年
選択3:2人とも自白する
結果 :罪が按分されて2人とも禁固5年
選択4:2人とも自白しない
結果 :証拠不十分で2人とも釈放
さて、もっとも望ましい結果はどれでしょうか。
みなさんだったらどのパターンを選択しますか。この状況でスリリングなジレンマを引き起こす観点は以下の3つです。
1.最良の選択は”2人とも自白しないこと”は当人が一番理解している
2.相手を信頼していなければ、2人とも自白する
3.相手を信頼していれば自白しない
このジレンマは現実のビジネスの世界でも類似した例は沢山あります。
相手の出方を探るといった戦略的な視点で繰り広げられる価格競争が一番分かり易い例ではないでしょうか。
本来、市場相場は顧客需要に最適な価格設定であるべきです。
そして、それがお互いにとって最良の選択であることは当人同士が一番分かってはいるはずなのですが、このジレンマに陥りお互いの首を絞めあっているというのが実状のようです。
*** コミニュケーションの欠如がジレンマを誘発する? ***
サプライチェーンのロジスティクスにおいて、効率性を下げる主な要因の一つとして、チェーンにおける様々なコミニュケーションの欠如が上げられます。
ここで筆者が言うコミニュケーションとは情報の共有という技術的側面と、サプライチェーン内におけるパートナーシップとの信頼関係という心理的側面の2通りです。
多くの企業にとってサプライチェーン・マネジメントやロジスティクスは未だ未知の領域です。
その証拠に、高度に形式化されたコミニュケーション手順を用いて、サービスサプライヤーと外部連携を進めているサプライチェーンに遭遇することは稀です。
サプライヤー間でより高度なコミュニケーションを確立する為の重要なポイントを3つ、以下にご紹介します。
*** AI(人工知能)のお蔭で再び脚光を浴びる需要予測 ***
AIブームによって、需要予測が再び注目を集めています。
これまでもサプライチェーンの間で需要予測は用いられてきましたが、サプライチェーン全体の誤差を減少させることは出来ませんでした。
小売側・卸売側・製造側(メーカー)でそれぞれ需要予測を独自の方式とシステムで実行し、そこで設定された価格や生産数がロジスティクスにも大きな影響を与えてきました。
近未来のロジスティクスを占う上で、AIを活用した需要予測は重要な意味を持ちます。
筆者の予測では、これまで複数箇所に存在していた需要予測の仕組みはロジスティクス領域1箇所に集約されます。
ロジスティクス領域でAIを活用して精度の高い需要予測を行います。
これまでの一部の企業のデータだけではなく、ビックデータや天気予報などのデータを用いたこれまでとは次元の違う需要予測が既に実用化に向けて動いています。
全く予測の出来なかった需要を、かなりの確率で導きすことも可能になるAI搭載型の需要予測システムをロジスティクス領域の1点に集約することで、各サプライチェーンの計画は1週間前倒しされ必要最低限の在庫保有、物流を実現しつつ、各プレイヤーの利益を最大化します。
*** まとめ ***
2030年の近未来物流に向けて製・配・販が協働で需要予測を開発し、共有するための「プラットフォーム」の構築が進みます。
最新技術を活用した需要予測の共同利用により、注文量のミスマッチを解消し、在庫削減・食品ロス削減・機会ロス削減の果実をサプライチェーン全体で享受することが可能になります。
消費者・小売・卸売・製造(メーカー)を含めた社会全体で利益を共有できる「2030年の産業革命」はロジスティクスが先頭に立ち、引っ張っていかなければならないというのが筆者の考えです。
良質で高度なコミュニケーションの確立により、市場に蔓延するジレンマは居場所を失うのです。
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