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*** 最古の兵法に学ぶデータ活用の重要性 ***
ロジスティクスという言葉がビジネスの世界で用いられるようになったのは、つい最近のことです。
それまではロジスティクスというとミリタリー色が強く、海外で行われていた学会などもそちら色でした。
しかし、「コストの最小化」と「付加価値の最大化」を目的としたこの手法はビジネスにも応用できることから、今では世界中の企業や機関が導入や研究を進めるようになりました。
経済を支える小売・流通業では、商品が最終消費者に届かない限り、ビジネスは完結しないので「必要な商品を、適切な時間と場所と価格のもとで、要求された数量と品質で供給すること」を可能にするロジスティクスは大変に有効な道標になります。
「ロジスティクス」の他にも、ミリタリーによって体系化された手法がビジネスに活用された例はあります。
中でも有名なのが、「孫氏の兵法」や「ランチェスター戦略」でしょう。
※ランチェスター戦略についてはまた別の機会でご紹介します。
「孫子」は中国最古の最も優れていると言われる兵書で、計篇、作戦篇、謀攻篇、形篇、勢篇、虚実篇、軍争篇、九変篇、行軍篇、地形篇、九地篇、火攻篇、用間篇の十三篇で構成されています。
「孫氏」を詳しく知らない方でも、「故に其の疾きことは風の如く、其の徐かなるは林の如く、侵掠することは火の如く、動かざることは山の如く」という「風林火山」はよくご存知だと思います。
あの武田信玄が軍旗に掲げていたことでも有名ですね。
ビジネスで応用するならば、「スピード重視で、情報は漏らさず、仕掛けたら一気に攻勢して、不測の事態が起きても慌てず自分達のやり方に自信をもって進もう」といった感じでしょうか。※筆者の勝手な解釈なので、違っていたらごめんなさい。
孫氏の中からもう2つほどビジネスに応用しやすい言葉をご紹介します。
「彼れを知りて己を知れば、百戦してあやうからず」とは、「相手を知り、自分を知れば、百回戦っても負けない」という意味です。
ビジネスに置き換えると、「顧客や競合のことをよく知り、自社の強みや弱みを知れば失敗しないよ」といった感じです。
「是の故に勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」とは、「勝軍は負け戦はしない」という意味です。
こちらもビジネスに置き換えると、「成功企業は事前にしっかりと調査や準備をしてビジネスを設計しているので成功が必然」といった具合でしょうか。
物流データの活用によって自社をよく知り、効果性の高い物流を設計することで、成功が必然となります。
物流コストは設計で8割が決まるのです。
*** 出荷容積データを用いた保管モードの選択 ***
生産性をより高めるためにはプロセスを改善する必要があることは多くの企業が認識していることです。
ロジスティクスについてもプロセスの管理と改善が重要であることについての認識は高まっています。
しかし、このプロセスの改善については、プロセスの結果を対象に調査するのではなく、プロセスそのものを調査・検討する必要があることについては、未だ多くの理解を得るには至っていないようです。
そしてプロセスそのものを調査・検討する為には物流データの活用が大きな効果を発揮します。
前回は「需要相関データ」を用いたロケーション管理の手法をご紹介しました。
今回は「出荷容積データ」を用いて倉庫内のプロセス改善を行ってみたいと思います。
多くの企業では、商品のサイズ情報(3辺計、重量)をマスタ化していません。
しかし、今後のロジスティクス領域のICT活用においてサイズ情報のマスタ化の重要性は高まってきます。
「サイズ情報はマスタ化するのが大変」と多くの方が同意見ですが、その活用方法を知れば意見が180度変わることでしょう。
下記の図は某大手家具メーカーの出荷実績データを容積別に分類しその構成比を表したグラフになります。
容積が0.5㎥未満のアイテムの割合が23%、2.5㎥~2.99㎥のアイテムの割合が30%で両方を合わせて出荷アイテム全体の50%を超えています。
優先的にこの2つに分類されたアイテムについて保管モードを変更することで生産性、効率性の向上を期待できることをこのグラフは表しています。
例えば、0.5㎥未満の15%のアイテムについて推奨される保管モードは固定棚や保管用のキャビネットでしょう。
場所を取らず小さいスペースに効率的に保管することが可能になります。
次に、2.5㎥~2.99㎥の30%のアイテムについて推奨される保管モードは、平置きやダブルディープラックなどになります。
このように保管モードや倉庫内のスペースの割付については、日々の出荷実績データと商品のサイズマスタを利用して定期的に見直しを行う事で、スペースの有効活用・生産性の向上・作業効率の向上を図ることが可能になります。
また単純に商品のサイズで保管モードを決定するのではなく、出荷頻度も考慮する必要があります。
例えば、先ほどの0.5㎥未満の15%のアイテムについてキャビネットに保管すれば、保管効率は向上しますが、ピッキング効率は落ちてしまいます。
当然出荷頻度の高い商品については固定棚の方が推奨されます。
次回は、顧客別のオーダーデータを活用したダブルトランザクションのプロセス改善手法について解説します。