EC業界のロジスティクス事情 ~自社物流 or 委託物流 物流アウトソーシングのメリット・デメリット~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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EC業界のロジスティクス事情 ~自社物流 or 委託物流 物流アウトソーシングのメリット・デメリット~

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画像素材:PIXTA

 

*** ファーストリテイリングは物流会社になる!? ***

 
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「アマゾンはロジスティクス企業だ」

アマゾン創業者のジェフ・べゾス氏は創業初期から一貫して社内外に対してこう公言をしてきました。
彼の言葉を実現する為に、アマゾンは物流オペレーションの全てにおいて自社でマネジメントを行っています。

創業当初から自前で物流のプラットフォーム構築を目指し、日々物流をコアコンピタンスとして醸成することに専念し、単に商品を売って儲ける”小売”としてではなく、商品を売るインフラの構築で差別化を図り成長を続けています。

アマゾンが日本に上陸した2000年当時、商品の配達は日本通運に委託していましたが、その後佐川急便が引き継ぎ、現在ではヤマトが主に配達を行っています。

アマゾンの凄いところは、物流業務の委託先を急に変更しても、特に大きな支障なく同じサービスレベルで物流オペレーションが継続できる点です。
日本の宅配業者のサービス水準が高いことも手伝っていますが、あれほどの物量を短期間で変更してしまうマネジメントとオペレーションは驚嘆に値します。

物流をどの業者でやってもそれを完璧にマネジメントし、オペレーションを回すのは全てアマゾンです。
そこにこそアマゾンの強さがあるのです。

最近では、アマゾンの戦略に倣って、物流をコアコンピタンスとして掲げるEC事業者が増えてきました。
「ユニクロ」や「ジーユー」を展開するファーストリテイリングもその1社です。

柳井正会長兼社長は「ファーストリテイリングは物流会社になる」とジェフ・べゾス氏と同様の発言をしています。

ファーストリテイリングは商品の企画やデザイン、工場生産、小売まで全てを自社で行うSPA(製造小売業)というビジネスモデルによって、高品質かつ低価格な商品を提供することで成長を遂げてきました。

ところが物流に関しては、これまでアウトソーシングに頼っており、配達に2~3日かかってしまう物流が、今後ネット通販を成長させていきたい同社にとっては最大のボトルネックとなっていました。

そこで、自前の物流を構築するため、2014年に大和ハウス工業と共同で物流の新会社を設立したのです。
ネットとリアルを融合したオムニチャネル化を進めていくために、物流で競争できる企業に変貌を遂げようとしています。

2016年には大和ハウス工業が東京・江東区の有明に国内最大級の物流拠点を構築し、ファーストリテイリングはここをネット通販と店舗の配送を担う物流拠点にしました。
将来的には店舗のバックヤードの在庫を極限まで減らして、省スペース化を図り、その分売場スペースを広くして売上げの拡大を見込んでいます。

多くの店長経験者をこの有明に異動させて物流オペレーションを現場で学ばせていますが、この有明の物流倉庫を舞台にした大変革による混乱は「柳井正 最後の破壊」とも言われ話題になりました。

「今後は商売のデジタル化が進むため、今の単純な製造小売業(SPA)から情報製造小売業に変わらないといけない」と柳井正会長兼社長が決意を語っていたのが印象に残っています。

 

*** 物流アウトソーシングのメリット・デメリット ***

 

EC事業者にとって、いまの物流の混乱期、変革期はリスクでもあり、最大のチャンスでもあります。
この予測できないリスクを飛躍のチャンスにする為には、自社の物流をどのように位置づけ、どのように変化させていくかを常に経営戦略の中心に据えておく必要があります。

冒頭で紹介したアマゾンやユニクロのように、自社で物流倉庫を構えて、人材を確保・育成し、オペレーションの為のシステムを構築していくには、大規模な投資と膨大な時間が必要になります。
そうしたリスクを背負う決断には相当の覚悟が経営者には必要になるでしょう。

しかし、受注が増えれば増えるほど、商品の取扱量が増えれば増えるほど、物流に関するノウハウが蓄積され、物流のサービスレベルが向上します。
やがて、自前の物流サービスが差別化を生み、決定的な競争力になっていくと、覚悟して決断した経営者とそれを粘り強く実践した企業は評価されることでしょう。

ここで物流をアウトソーシングするメリットとデメリットを少し考察してみましょう。

 

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まずはメリットからですが、なんといっても物流リソースの安定的な確保が出来る点は大きなメリットです。
特にこれからは、物流の人材の確保が益々困難になっていきます。
また出荷波動の激しい現場では、繁忙期や閑散期で人材を変動的に確保する必要がなくなるので、その他の業務に集中できます。

そうした物流の課題を全てプロに任せてしまうことで、自社の人材を商品開発やマーケティングに従事させることが出来ます。

また物流コストを変動化出来る点も大きなメリットです。
倉庫費用や物流作業員の人件費は、自前で物流をするとどうしても固定費になってしまう為、閑散期などは負担になってしまいます。
物量に応じて物流コストを変動させることが出来る点は財務体質の改善に繋がります。

続いて、物流をアウトソーシングした場合のデメリットについて考えてみましょう。
1つ目は物流ノウハウの空洞化です。
物流のプロに任せてしまうので、自社ではマネジメントやオペレーションする能力、ノウハウが蓄積されません。
何らかの要因でアウトソーシング先を変更するとなると、冒頭のアマゾンのようにスムーズにはいかないでしょう。

また物流をアウトソーシングすると、社内外に対して物流をコストとして扱う姿勢の表れとして捉えかねません。
アウトソース=コスト削減の意識は根強いものです。
「われわれは物流を最重要戦略として位置付けています」といくら公言しても、アウトソーシングされていると説得力がなくなってしまいます。

よって、物流を自社の重要な経営戦略として、サービス戦力として、ブランド戦略として醸成していくための土壌は育てにくくなると考えて間違いないでしょう。

最後に物流コストのブラックボックス化です。
よく、物流専門業者などがEC事業者に対して、物流をアウトソースすることで物流コストの可視化が図れますと宣伝しているのを見聞きします。

しかし、少なくとも筆者のこれまでの現場経験では、こうした意見に賛成はできません。
物流をアウトソースすることで、その委託先の会社に毎月支払っている請求書を見れば、いくら物流コストが発生しているかは一目瞭然です。

しかし、それは可視化とは全く別物です。

可視化というのは、単純に「物流コストが毎月いくら発生している」ということではありません。
得意先・商品別・対倉庫スペース・対滞留在庫毎に様々な角度でコストを分析する為の数値が見える化されている状態のことをいいます。

こうしたデータを主体的に荷主に提供することで、荷主に経営戦略の指標となるコスト分析を提案している物流専門業者を筆者はまず見かけたことがありません。
結局は物流現場においてどのような費用が発生しているかが自社からは見えなくなるため、現時点では多くの場合において、ブラックボックス化してしまうというのが筆者の考えです。
(※荷主に対して、コスト可視化を積極的に提案している物流専門業者もあります。)

 

*** 自社物流? or 委託物流? ***

 

いま、多くのEC事業者が物流を自社で行う方が良いか、委託する方が良いかに悩んでいるようです。
筆者も行く先々のお客様でこのような相談を受けたことがあります。

 

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まず売上が10億未満の創業期には、物流は専門業者に委託することをお勧めします。
自社の商品開発やプランディングに注力し、市場での占有率を高め、自社のポジションを確立することが最重要戦略です。
このステージで利用する物流システムは、ASPなどの月額利用できる安価なパッケージシステムで十分でしょう。
もしくは委託先の物流会社のシステムを利用するのも良いでしょう。

売上が10億を突破して成長ステージに移行すると、物流は様々な課題が発生するようになってきます。
ASPなどの安価なパッケージシステムでは、業務が回らなくなってきます。
また物流を次のステージに向けて改善していく為には、自社の独自ノウハウを物流システムに反映させる必要がある為、柔軟にカスタマイズが可能なパッケージ、及びロジスティクスの業務に精通したベンダーを選定しましょう。

これまでは全て物流のリソースを委託先に任せていましたが、物流システムの構築、物流オペレーションのマネジメントは自社で行うようにするハイブリッド型の物流をお勧めします。

売上が100億を突破して安定期に移行する段階では、自社倉庫の運営を検討しましょう。
今後のさらなる成長に向けて自社独自で物流網を構築することも検討しても良い時期です。
このステージになると物流システムは完全に自社独自のフルカスタマイズになります。

これから数年は創業期から成長期のEC事業者が増えてきますので、ハイブリッド型の物流が増えていくと予想されます。物流システムやオペレーションノウハウは全て自前で準備し、倉庫・人材・足回りといったリソースはアウトソースします。
最後の配送は配送業者を自社で選ぶという方式をとりましょう。

よく佐川やヤマトの倉庫内に自社の在庫を置いて、ウエアハウジングから配送までを全て大手宅配キャリア1社に委託しているケースがありますが、こうした運用は創業当初には便利に利用できますが、成長期に差し掛かったタイミングは様々な課題が生じます。

他社との差別化が難しくなりますし、宅配コストのコントロールが不可能な為、コスト面でも競争力が乏しくなってしまうからです。
 

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*** おわりに ***

 

アマゾンが日本でサイトを公開する前はネット通販といえばヤフーや楽天が圧倒的シェアを誇っていました。
しかし、アマゾンが物流に多額の投資を行い、顧客の利便性を極限まで高め、利用者数を増やし、品揃えや価格面でも競争力を高め、あれよあれよという間に圧倒的な地位を築き上げました。

EC事業者にとって、自社の事業ステージに合った物流体制の構築は今後最も重要な戦略となります。
委託物流⇒ハイブリッド物流⇒自社物流と段階的にスムーズに移行する為には、自社の中長期の事業戦略を創業期・成長期・安定期のステージに分けて、そこに物流を当てはめていくことを強くお勧めします。

 

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