国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング」の2017年度版において、世界で最も幸福な国に選ばれたのは
ノルウェーでした。
この調査では、国民の自由度や、1人あたりの国内総生産(GDP)、政治、社会福祉の制度などを元に2014〜2016
年の「幸福度」を数値化し、ランク付けしています。
人の幸せの価値観というのは数値で測れるものではありませんので、参考程度のランキングということになるかも
しれませんが、注目したいポイントが一つあります。
上位3カ国のランキングを見てみますと、1.ノルウェー、2.デンマーク、3.アイスランドとなります。
驚いたことに上位3ヶ国が北欧の国で占められています。
このランキングについては、実は大分以前からこの傾向が続いています。4年前の2013年度版のランキングを見ると、
1位がデンマークで2位がノルウェーでした。さらに10位以内にノルウェーやフィンランド、アイスランドもランキングされ
ています。(ちなみに日本は2017年が51位で、2013年は41位でしたので、10ランク落ちています。)
ここまで傾向が顕著であると「国連による情報操作?」とつい歪んだ見方をしてしまいますが、個人的に少し気になり
ましたので、どこの調査機関が何を基準に調査しているのか調べてみました。
コロンビア大学地球研究所というところが調査機関のようです。調査基準は、、国民の自由度、1人あたりの国内総
生産(GDP)、政治、社会福祉の制度などを元に「幸福度」を数値化し、ランク付けされています。
ここでやはり気になるのはGDPです。2016年のGDPランキングでは日本3位に対してノルウェーは31位です。
しかし、これを1人当りGDP(GDP÷人口)で見てみると、日本は22位でノルウェーは3位になります。
その他スイス2位、アイスランド7位、デンマーク10位と1人当りGDPランキングでは北欧の国が10位以内に4ヶ国も
ランクインされています。
幸福度はさておき、生産性という面においては北欧は世界でもトップクラスということがわかります。
要因は様々ありますが、その一つにITの活用があげれます。北欧はIT先進国であり、国レベルでITの活用が進んで
います。また活用の徹底度と質の高さも注目を集めています。
*** 「新産業構造ビジョン」戦略4分野 ***
本シリーズでは2017年5月30日に経済産業省が発表した「新産業構造ビジョン」の内容を簡潔に要約しながら、来る
第4次産業革命で何が起こるのか、そしてそのチャンスをロジスティクス領域でどのように活かすことが出来るのか
を考察していきます。
①移動する
②生み出す・手に入れる
③健康を維持する・生涯活躍する
④暮らす
「新産業構造ビジョン」では、以上の4つを戦略4分野として設定し、それぞれについて具体的な戦略が記されています。
その中でも物流に一番関係の深い「①移動する」にフォーカスして今回は考察を進めます。
*** 「人やモノの移動」に関連する課題の解決 ***
本レポートではAIやロボットなどの革新的な技術の活用が進むことで、「人やモノの移動」に関連する様々な社会的・構
造的な課題が解決される可能性を示唆しています。
まずは自動運転技術の活用による死亡事故の削減です。現在、事故死亡者は国内で3,904人、世界で125万人です。
このまま自動運転技術の活用が進めば運転手に起因する事故を2030年には半減できると予測しています。
物流事業者にとっても、運搬中の事故は大きな経営リスクの一つです。そのリスクが半減できれば経営に与えるインパ
クトは決して小さくありません。
では、物流業界で今一番の課題とされている労働力不足についてどうでしょうか。
現在物流トラックのドライバーの求人超過数は4万人に達します。
この問題については、陸から空にわたる多様な輸送手段をシームレスにつなげる高度な物流サービスの提供が解決の
鍵を握ります。(下図参照)
※経済産業省作成 「新産業構造ビジョン」より
ドローンの活用については、補助者を配置しない目視外飛行などの高度な飛行が可能になりつつあります。まずは離島や
山間部への荷物配送を実施し、その後2020年代には人口密度が高い都市での物流でも活用を期待されています。
さらには、先頭車両はドライバーが運転して、後続の車両は無人で走行する「陳列走行」の実現です。
2017年度中に新東名高速道路で公道実証を開始し、こちらも早ければ2020年に高速道路でのトラック陳列走行の事業化
を目指しています。
ドローンについては、本体やコントローラー開発では海外企業(DJI、Intel等)が既に主導権を握っています。
日本は複数ドローンを制御する運航管理システムの開発や、物流事業者やEコマース事業者などによる事業性のあるサ
ービス開発が重要になってきます。
*** まとめ ***
ITを活用することで急成長した産業の一つとして、自動車産業があげられます。最初に「ペーパーレス」を実践したのも自
動車業界です。メーカーとサプライヤー間の電子データ交換(EDI)は、「ジャスト・イン・タイム」哲学の普及に合わせて瞬く間
に普及しました。こうした情報システムの統合が関連企業のデータの利活用を後押しし、業界の成長につながったのです。
国の経済成長を考える上でITの活用なくしては考えられません。幸福度とIT活用が直接的に関係するかどうかについて筆
者は明確な解を持ちませんが、国民が安心して暮らせる社会システムの構築に経済成長が必須条件であることに疑いの
余地はありません。
今日、企業が直面している経営戦略上の課題の中で最も困難なものはロジスティクス分野です。
この分野でのIT活用の質と徹底度が、これからの日本の生産性向上、経済成長に直接的な影響を与えることは間違いな
いでしょう。