今回は、見えない在庫についてご紹介します。
従来、在庫というと製造業の方は「製品」卸売業や小売店の方であれば「商品」が思い浮かぶのではないでしょうか。
景気が上向きになってきているといわれていますが、消費者の財布の紐はまだまだ固く、在庫の処分に悩まれている企業も多いようです。
メルマガ読者の方の中にもサービス業の方もがいらっしゃると思います。
うちはサービス業なので在庫とは無縁…と思われるかもしれませんが、実はサービス業にも在庫は存在するのです。
それは「仕掛品(しかかりひん)」というものです。
例えばクルマを製造していて最後にタイヤを装着するだけの状態で決算を迎えたとします。
タイヤが装着されていれば在庫として資産計上されますが、タイヤの付いていない製造中の未完成のものを「仕掛品」と呼び、「仕掛品」として資産計上する必要があります。
工業簿記の勉強をされた方であれば耳にしたことのある用語だと思います。
では、この「仕掛品」がサービス業ではどのように扱われるのでしょうか。
・売上計上のタイミングとしての考え方
クルマであれば、その「クルマを引渡した日」が売上のタイミングとなります。
この考えに当てはめると、講演会の売上のタイミングは講演会を実際に行った日(サービスを実施した日)となり、来期に売上計上されることになります。
もし「仕掛品」として計上を忘れた場合、当期決算では原価だけが計上されているため、業績が悪く見えてしまいます。
来期決算の場合、売上のみが計上されるため、逆に業績が良いように見えてしまい、バランスの悪い決算期が続きます。
また、当期決算後に税務調査が入ることになれば、不当に法人税の負担を軽くしたとして、追徴課税の対象になることもあります。
先行して費用を出しておき、仕事が完了したら請求をする、といった仕事のやり方は結構あると思います。
この仕事のやり方を行っている場合で決算(期)をまたぐ場合は「見えない在庫(仕掛品)」はないかを考えて決算を行う必要があるためサービス業の方であっても注意が必要です。
今回のように在庫を持たない業種であっても「見えない在庫」が発生する可能性があることを気に留めていただけると幸いです。