今回は、業務用通信カラオケ機器の開発・製造・運用・店舗運営・エンタテイメント事業を展開する株式会社エクシングさんのご紹介です。
通信カラオケ業界は、1980年代後半に始まったISDN回線の提供がきっかけで急伸しましたが、時代の流れとともに統廃合が進み、現在では同業は1社のみという非常に珍しい業界です。
エクシングさんはブラザー工業株式会社さんのグループ会社として1992年設立されました。
ブラザーさん(brother)といえば、ミシンやファクス、プリンタ複合機をイメージされる方が多いと思います。
あまり知られていないと思いますが、通信カラオケ「JOYSOUND」はエクシングさんが展開しており、20年以上の情報配信技術の経験とノウハウをお持ちです。
今回は通信カラオケ事業に至るまでの経緯と音楽流通についてご紹介したいと思います。
◆ソフトの自動販売機
ブラザーさんでは「将来はネットワークやコンテンツの時代だ」という先見の明を持たれ、1986年にはISDN回線を使用した「TAKERU」という世界初のパソコンソフトの自動販売機の設置を開始しました。
元々、量販店で人気ソフトはすぐに売り切れ、そうではないソフトはいつまでも不良在庫として売れ残る。という問題があり、これを根本解決する事が課題であったといわれます。
「TAKERU」を通して必要なソフトをニーズに応じで都度配信する事で、倉庫や保管場所、在庫をかかえる事なく、欠品も起こさずお客様の要望に応えられるといった、流通業界に革命をもたらす大変画期的なシステムでした。
しかし当時、一般家庭へのパソコン普及率は低く、回線速度も遅い上、莫大な通信費がかかってしまい、時には通信費が売上を超えてしまう事もあり事業は稼働停止しました。
やがて、ここで培われた技術はエクシングさんに引継がれ、通信カラオケ事業へと転換していきました。
◆「JOYSOUND」ブランドの多様化
通信カラオケは、リクエストのあった楽曲をサーバが配信し演奏を行うという仕組みです。
ここ数年で1人カラオケ(ヒトカラ)が増えてきているといわれます。
同社ではそれに対応した店舗の他にも「JOYSOUND」ブランドを家庭用テレビやゲーム機、Webやモバイル端末などにも拡げ、マルチプラットフォームに対応したコンテンツ提供を行われています。
カラオケボックスで、自宅で、移動中に。今やカラオケはどこでも楽しめるようです。
◆流通形態の変化
かつての音楽流通は、CDやDVDがメーカーから配送業者を通じ、卸業者や通販、特約店から小売店に渡ってユーザーに届く完全一方向のプッシュ型でした。
音楽をネットで配信するようになると、検索などによってユーザーからアクセスするプル型が増えました。
ダウンロードして持ち運びもできるため、CDやDVDが売れなくなり小売店や卸業者も次々となくなりました。
また、ユーザー自らが音楽や動画を発信しその反応もチェックできる双方向発信型も広がり音楽流通はパッケージ物流をなくし、在庫を持たないコンテンツを流通させる形態に急速に変化しました。
未だ留まる事を知らない時流の中、同社は試行錯誤を繰り返し、1つずつ新たな音楽エンターテーメントとコンテンツのビジネスを進めていかれるそうです。
「情報を制する者が世界を制する」時代が到来しているのかも知れません。