今回は加工食品の大手メーカー、ハウス食品株式会社さんのご紹介です。
同社は1913年に設立され、2013年に100周年を迎えられました。
食卓カレーのパイオニアであり、同社のロングセラーであるとともに売上トップの「バーモントカレー」も1963年の販売から50周年を迎え、現在では、1,700品目の加工食品の製造・販売行い、海外にも複数拠点をお持ちです。
◆SCM部の誕生
現在ではSCM(サプライチェーンマネジメント)という言葉が概念として常識化している中、同社は先駆けて2003年にこれまでの物流部を核にSCM部を創設しました。
単なる部署名の変更ではなく、SCMシステムの導入で課題解決に乗り出しました。
当時の課題として
・各部署の業務がそれぞれの仕組みで行われ、経験依存の属人化となっている。
・業務改善もシステム構築も部門ごとに行われており、部分最適しか図れていない。
・現状肯定型改善に留まっており、現状否定の改革に踏み込む事ができない。
・売上達成重視で過剰生産が発生し、在庫過不足発生の責任の所在が明確化されていない。
・計画から実行に至るまでの評価が、継続的に実施されていない。
などが挙げられました。
当時、過剰在庫が多発し廃棄や消化コストの増大が利益を圧迫していました。
また、欠品の発生が得意先に迷惑をかけ信用問題となる事も背景にありました。
◆SCMシステムの導入と人の判断
課題を解決すべく、2004年には巨費を投じSCMシステムを本格導入しました。
需要予測を基に供給計画を立てる他、調達から物流の全工程を管理する事にしたのです。
過去3年の出荷実績から、将来1年半の需要予測を作成、製品・在庫拠点別に在庫が安定供給されるよう計画値、製造に必要な食材の推奨情報が作成され、各拠点で補充計画が作成できるようになり、欠品率は2.3%から0.4%まで下がりました。
自動計算されるシステム処理、ここに「人」という判断が加わる事で調達から納品までの製品流通過程で、需要予測を基にした生産・在庫管理を立案し過剰在庫や販売チャンス、ロスの圧縮を実現、資材調達から生産・供給計画、在庫に関する責任を担う部門として「人」が判断する重要性を改めて認識したといいます。
◆在庫の削減
欠品率は下がりましたが、在庫率は横這が続いていました。
必要な在庫を必要な時、必要な数、適正なコストで無駄なく供給するにはどうすけばいいか、在庫削減のため、新商品には8週間前に生産計画を準備し4週間前に計画数を案内、商談状況に応じて修正するというルールを定め家庭用には品群毎に在庫基準、システムを活用した需要予測の精度向上を業務用では販売情報のデータ化、終売商品の提案などの方向性を示す事で在庫削減に取り組んでいます。
◆今後の課題
・全社に調達から納品までの流れの理解を促進。
・在庫、廃棄状況から課題を抽出し社に提言。
・物流子会社との協働による物流の強化。
・海外からのSCM要請への対応
・SCM部という組織のステージアップ
などが挙げられています。
最終的にもっとも重要な課題は人材育成で、各々が営業に対してモノが言え「なぜ」を追求できる人材を育成を目指しておられます。
10年以上に渡るSCM活動をPDCAサイクルで継続する事で着実に効果が出ている事例のご紹介でした。
今後も事業拡大を目指す、ハウス食品さんの動向に注目したいと思います。