今回ご紹介するのは、飯塚運輸株式会社さんです。
同社は荷主である茨城県を中心に関東地方1都5県に162店舗(2015年3月20日現在)を展開するスーパーマーケットチェーン、
株式会社カスミさんの中央流通センターを運営されている企業です。
厳しい条件の中、現場目線を大切にユニークな改善活動に取り組まれ全日本物流改善事例大会の物流合理化賞を受賞されました。
今回はその取り組みをご紹介します。
中央流通センターでは店舗の増加に比例して取扱品目数も増加、毎日出荷がある豆腐や納豆、練物などの和日配商品だけでも
5年間で150品目以上増加し、総取扱数は約750品目にも上りました。
機械仕分を行っていましたが、年々増加する品目と物量で、日々、約700品目もの商品が入荷するようになり、
機械を使った作業だけでは仕分が追いつかない状況となりました。
700品目を配送車輌の出発時刻までに仕分けるためには、1時間あたり50品目のペースで処理しなければなりませんでしたが、
人員体制が組めず40品目程度に留まっておりこの状況に機械仕分の限界を感じました。
店舗への遅着が決して許されない中で、今後想定される総数700品目超の出荷に対応するためにはどうすれば良いか…
この問題を解決する方法を全員で考えました。
問題解決の対応条件として、
1.従業員の増員は行わない
2.コストをかけない
3.納品時間(仕分開始)の前倒しは無理
上記条件のもと、人の力を最大限に生かす問題解決にあたりました。
目標設定として
・コストをかけず出荷、物量増加に対応する
・センターの問題は自社内で何とかしなければならない
・最終的に配送時刻までに仕分を終了させる
こうしたことから、第1改善目標を1時間あたり50品目処理することにしました。
まず第1ステップとして、ノーコストですぐに始められる、既存の仕分リストを活用し、
あらかじめ商品に店番を書き込む「店番書き仕分」を実施してみることにしました。
既存の仕分リストで仕分を行っていく中、リストと構内レイアウトとのずれが問題点として浮上しました。
カスミさんの店舗は、スーパーマーケットとディスカウントの2業態があり取扱品目も異なるものが多いため、
作業性を考慮し、業態別に分かれた配置作りになっていました。
ところが、仕分リストのフォーマットは同一品目に限りスーパーマーケットとディスカウントが混在した状態で表示されており、
定番と特売で改行されて表示されていたため、店番書きができる人が限定されていました。
なぜ、使いやすい仕分リストになっていないのか真因を追求してみたところ
これまで、物流センターの運営上の問題、悩みはセンターで抱え込み現場の不満を荷主に伝えるということは決してありませんでした。
そこで、初めてカスミさんとの対策会議を実施し、仕分リストを構内レイアウトに合わせることで仕分時間が短縮され、
物流の品質が向上し今後の増店にも対応可能という荷主側のメリットも創出する改善であることを理解していただき
即変更をしていただきました。
結果、変更前の224時間/月から152時間/月と72時間/月が短縮され、
目標値の1時間あたりの処理品目数50品目をクリアすることができました。
仕分リストのフォーマット変更で作業性向上が図れましたが、
店番書きは手書きのため書き間違い、読み間違い、字が読み難いなどの問題が度々発生しました。
本来作業は「正確性」を重視すべきですが、それを維持できないことに人間力の限界を感じました。
そこで、他部門の仕訳方法を勉強しパソコンから指示したラベルを印刷する
「ラベルシール仕分」を導入することにしました。
手書きでは固定人員が2名、店番書きに平均60秒かかっていましたが、
ラベルシールは人員0人出力に平均20秒、他にも指示ミスがない限り印刷のミスは
0と469時間/月かかっていた作業時間が282時間/月と187時間/月も短縮され精度も向上しました。
さらに、短縮された時間を他部門で補うことで職場全体の最適化にも取り組み、
品目数、物量が増加する中、従業員数を維持しながら全ての作業を配送車輌が出発する時間前に完了させました。
人間の柔軟性と機械の正確性の融合で大幅な時間短縮と精度が向上し、
従業員のモチベーションも向上するという、メリットのみが残った改善事例だと思います。