今回は生活雑貨や食品など幅広い品揃えの「無印良品」を展開する、
株式会社良品計画の物流の取り組みに注目してみました。
同社は1980年に西友のプライベートブランドとしてスタートしました。
1983年には青山に直営1号店を出店し、現在では国内だけでなく、海外にも積極的に出店を行っています。
同社は2020年に海外で400店舗を目標にしており、“五大陸制覇”を長期ビジョンとしています。
これは、400店舗というと国内の店舗数を上回る店舗数となります。
国内での成長が鈍化している同社としては、積極的にグローバルな市場を取りにいく成長戦略を描いています。
昨年8月に、同社の施設としては最大規模となる約16万㎡の物流センターを埼玉県鳩山町にて施工開始しています。
国内売上の過半を占める関東エリアの配送を効率化し、好調な伸びを示しているECや海外の拡大需要にも対応させていく予定です。
冒頭で少し触れたとおり、同社は現在海外事業に最も経営資源を投入しています。
その中でも特に力を入れている国は中国です。
世界中から集めた商品を販売する「Found MUJI」を展開し、中国の消費者の需要を取り込んでいます。
中国へ進出する専門店は多いですが、その大半は苦戦しています。
そんな中でも同社は中国事業での営業利益は15%を超え、数少ない成功事例となっています。
その背景にはブランドの認知力向上の為の戦略が上手く作用したということもありますが、
同社が長年積極的に投資を行ってきた物流システムの基盤整備も大きな成功要因です。
中国で店舗を増やしていく中、最も大きな課題は各店舗の在庫管理でした。
国内では既に、全店舗の販売実績や在庫、発注状況をリアルタイムに一元管理できるシステムが整備されていましたが、
中国ではそこまでシステムの導入は進んでいませんでした。
そこで国内と海外の在庫や発注情報をリアルタイムに一元管理する為、
完全自社設計による「グローバルMDシステム」を導入しました。
中国は日本と違って北と南で季候差が激しく、店舗毎にシーズンアイテムの発注を随時変更することが必要になります。
このシステムの導入により、在庫の削減に見事成功し中国事業の利益向上に大きく貢献しています。
この中国での成功を受け、「グローバルMDシステム」は欧米やシンガポールなどその他の国でも導入を進めました。
またシステムだけではなく、物流網の整備にも力を入れています。
従来は中国で生産された商品が、一旦日本の物流センターに入り、そこから再度中国の店舗に供給するという非効率な形となっていました。
それを現地の物流センターを利用することで、供給体制を効率化し、消費者へ提供する価格に貢献しています。
ファッション業界で有名なH&Mは極東を攻略するために世界で生産されている商品をまとめて上海に集めました。
この上海の物流拠点を、東アジア各国市場に送り込む為のハブ物流として極東の攻略に成功しました。
同社でも、これに似た戦略でシンガポールに物流拠点を構え、アジア全土出展のハブ物流を構築し、新市場攻略に動いています。
グローバルで利用可能な物流網と情報システムに積極的に投資を行い、
強固な仕組みを構築したことが、「無印良品」の最大の成功要因だと思います。
小売業の新市場攻略には物流の成功がカギを握ることは間違いない事実ですね。