成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略 ~導入戦略編~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略 ~導入戦略編~

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 画像素材:metamorworks /PIXTA(ピクスタ)

製造業における物流デジタル化は、競争力を高め、成長を実現するための重要なプロセスとなっています。しかし、適切な導入戦略なしには、その効果を最大限に引き出すことは難しいでしょう。本稿では『成長を目指す製造業のための物流デジタル戦略』をテーマとして、製造業が成長を目指す上での物流デジタル化の導入戦略に焦点を当て、成功への道筋を示します。製造業において、WMS(Warehouse Management System)の導入は重要な決断です。WMSは物流業務の中核を担い、効率的な物流管理に欠かせません。比較的多いケースとして、基幹システムを刷新するタイミングに合わせてWMSを導入検討するというものがあります。

このようなケースにおいて、別々に導入する方が良いのか、それとも一緒に導入する方が良いのかといったご質問をよく頂きます。今回は両方のアプローチについて考察し、それぞれのメリットや実際に私が経験した失敗事例についてもご紹介します。

2024年3月31日  執筆:東 聖也(ひがし まさや)

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<目次>

1.基幹システムの刷新でWMS導入が検討される理由

2.同時に導入した場合のメリット

3.別々に導入した場合のメリット

4.実際に私が経験した製造業S社の失敗事例

5.同時か別々か。正しい判断基準は?


1.基幹システムの刷新でWMS導入が検討される理由

先行きの見えない現代において、一つだけ確実なことがあるとすれば、それは人々の生活や経済の状況がこれまで以上のスピードで大きく変化していくということです。特に製造業においては、この変化がますます顕著に現れています。技術革新の急速な進展により、新たな製造プロセスやビジネスモデルが生まれ、競争が激化しています。変化に迅速に対応するために製造業は何をどのように準備すればいいのでしょうか。また、そこで物流はどのような役割を果たすことになるのでしょうか。

1つ重要なポイントをあげるとすれば、”変化を知る”ということです。変化を把握しなければ、それに適切に対応することは当然不可能です。変化を把握するためには、常に最新の状況をモニタリングできる仕組みが必要です。一般的な企業に備わっている会計系の基幹システムでも、過去の実績は把握できます。しかし、どの地点で何が多く売れているのか、急激に売上が増加している製品は何か、減少しているものは何か、それにはどのような事象が関連しているのか、また将来の販売見込みに対して在庫や供給計画はどうなっているかなど、直近の変化の傾向が必要な切り口で即座に分析できることが必要です。

そのため、このような仕組みを求めて成長を目指す製造業では、基幹システムの刷新を検討します。しかしながら、多くの基幹システムは、”お金”を管理する目的で設計されているため、物流の現場におけるモノの流れを管理することが苦手です。製造業において物流機能は中核の機能になるため、この点は無視できません。そのため、WMSを一緒に導入することが検討されるのです。基幹システムや生産管理システムを刷新するタイミングにおいて、WMSのご相談を多く頂くのもこうした理由からだと私たちは捉えています。

 


2.同時に導入した場合のメリット

基幹システムとWMSは同時に導入した方が良いのでしょうか?それとも別々に導入した方が良いのでしょうか?結論から先に申し上げますと、「どちらでも良い」ということになります。
厳密に言えば、どちらでも良いわけではないのですが、それぞれメリットとデメリットがあるため、企業の導入戦略において、何に重きを置くかによって選択が変わるということです。

それではまず、同時に導入する際の利点について見ていきましょう。一つ目の利点は「システムの統合性」についてです。基幹システムとWMSを同時に導入することで、システム間のデータ連携や統合を容易にすることができます。これにより、情報の一貫性や効率が向上します。二つ目の利点は、同時に導入することで、「業務プロセスやデータの整合性」を保つことができます。異なるタイミングで導入すると、システム間で整合性の問題が発生する可能性があります。最後に「時間とコスト」を節約できる点も大きなメリットになります。一度に導入することで、プロジェクトの管理やトレーニングなどの作業を一度に行うことができ、時間とコストを節約できます。


3.別々に導入した場合のメリット

続いて、別々に導入する際の利点について見ていきましょう。一つ目の利点は、「導入の容易性」が大きなメリットとして挙げられます。 一度に複数のシステムを導入すると、リソースや時間が多く必要となります。個別に導入することで、プロジェクトの管理やリスク管理がしやすくなります。二つ目の利点は、基幹システムとWMSを別々に導入することで、「段階的にシステムを導入」することができます。特に業務に影響を与える可能性が高いWMSの導入を後回しにすることで、リスクを最小限に抑えることができます。WMSのような倉庫管理システムは、業務に直接関わる部分が大きいため、業務への影響を最小限に抑えるために別々に導入することは有益です。
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4.実際に私が経験した製造業S社の失敗事例

実際に私が経験した失敗ケースをご紹介いたします。大阪に本社のあるS社は、製造業であり、製品の生産から出荷までの管理に関して、基幹システムの導入を計画しました。同時に、倉庫管理の効率化のためにWMSの導入も検討されましたが、結果的にプロジェクトは失敗に終わりました。簡単に失敗の経緯を辿ると以下になります。

S社は、製造プロセスの効率化と業務の統合を目的に、基幹システムの導入を2ヵ年で計画しました。この基幹システムは、生産計画、在庫管理、販売管理など、企業全体の業務をカバーするも外資系のERPパッケージでした。一方で、倉庫管理の効率化を図るために、WMSの導入も検討されました。しかし、WMSの導入計画は基幹システムとは独立して行われ、別々のプロジェクトとして進められました。基幹システムとWMSが別々のプロジェクトとして進行したため、システム間の連携が不十分であり、基幹システムとWMSの間でデータの整合性が確保されず、情報の不整合や遅延が多々発生しました。

また、基幹システムとWMSが別々に導入されたことで、業務プロセスが複雑化するという問題も生じました。両システムの間でデータを手動でやり取りする必要が生じ、作業効率が大幅に低下してしまったのです。結局、システム間の連携の問題や業務プロセスの複雑化により、導入したWMSは効果を発揮できず、プロジェクトは失敗に終わりました。最終的に、S社はWMSの導入を一旦廃止し、統合的な物流管理システムの再構築を別プロジェクトにて行うことになったのです。

このプロジェクトの一員として関わった私にとっても、苦い経験となりました。いつもは色々と偉そうなことを書いている私ですが、実はびっくりするほど沢山の失敗を経験しているのです。。。


5.同時か別々か。正しい判断基準は?

製造業が基幹システムとWMSを同時に導入するか、別々に導入するかは、企業の状況やニーズによって異なります。では、何を基準に判断したら良いのでしょうか。私の見解は以下になります。

■基幹システムとWMSを同時に導入する方が良い企業
「成長戦略を描いている企業」
成長を目指す企業や新規参入企業は、基幹システムとWMSを同時に導入することで、抜本的な業務プロセスの効率化と競争力の向上を迅速に実現できます。
基幹システム側とWMS側で一緒になって全体最適な視点で業務プロセスを改革することが可能になります。

■基幹システムとWMSを別々に導入する方が良い企業
「成熟した製造プロセスを持つ企業」
既存の製造プロセスが安定しており、特に物流管理において大きな問題がない企業は、基幹システムとWMSを別々に導入することで、リスクを最小限に抑えられます。抜本的な業務プロセスの改革が必要ない場合は、機能視点で要件を整理できるため、別々に導入する方が現場の混乱や負担も少ないでしょう。
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最終的な選択は、組織のニーズや予算、リソース、導入に関わるリスクなどを総合的に考慮して行う必要があります。企業の状況や戦略によって最適な選択は異なりますので、自社のニーズや状況に応じて、どちらの方法が最適かを検討しましょう。
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