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<目次>
1.序章:ベッド・バスの経営破綻
米生活雑貨販売Bed Bath & Beyond(ベッド・バス・アンド・ビヨンド)が経営破綻したニュースが飛び込んできました。アマゾン・ドット・コムなどのEC事業者との競争だけでなく、経営変革を続ける小売業界の巨人、ウォルマートに負けたことが、経営破綻の大きな要因となりました。
日本でも、イオンやイトーヨーカ堂などの総合スーパーがDXにおいて遅れを取って苦戦しています。そこで本稿では、日本企業がベッド・バスの失敗から学び、成長するための具体的なアクションを提案したいと思います。
ベッド・バスは、アメリカを中心に展開している家庭用品小売業者です。しかし、過去数年間にわたり、競合他社やオンライン小売業者との競争が激化し、業績は低迷していました。このため、同社は経営改革を行い、コスト削減や事業ポートフォリオの見直しを図りましたが、効果は限定的でした。
2023年初頭、ベッド・バスは自社株の買戻しプランを発表しました。自社株式を買い戻すことで株主価値を向上させることを目指していました。
しかしながら、この買戻しには高額の資金が必要とされ、その資金はサプライヤーとの取引から割り当てられることに。この決定により、サプライヤーはベッド・バスの財務状況に対する懸念を抱くようになりました。彼らは、自社への支払いが遅れる可能性や、将来的な取引の不確実性を懸念したのです。そのため、彼らは破産リスクに備えて、より保守的な取引条件を求めるようになりました。
小売業者にとって、サプライヤーとの信頼関係は非常に重要です。にもかかわらず、ベッド・バスの自社株買戻しプランは、サプライヤーとの長年築いてきた信頼関係に傷をつける格好となりました。そして、競争激化や変化する消費者のニーズへの対応不足などから経営状態が悪化し、ついに破産に至ったのです。
2.小売業界の変革とアマゾン・エフェクト
単に商品の販売競争が激しいだけでなく、新型コロナウイルスの影響でオンライン勢がますます存在感を増しており、生き残るための条件が大きく変わってきました。従来の成功パターンであった店舗の拡大だけでは通用しなくなり、リアル店舗とオンラインの組み合わせで相乗効果を生み出す仕組みを築くことが求められています。
「アマゾン・エフェクト」と呼ばれる現象は、デジタルを駆使した顧客の囲い込みと強力な物流網によって、小売業界全体に大きな影響を与えています。
アマゾンは売上高が6000億ドル(約80兆円)を超え、小売業界のリーダーであるウォルマートさえも揺さぶっています。この状況に危機感を抱いたウォルマートは、2018年に社名から「ストアーズ」の文字を外しました。売り上げ規模や店舗数だけに頼ることはできないと認識し、デジタル技術を駆使して経営を進化させる方針を徹底的に追求しています。
以上のような状況において、小売業界はますます競争が激しくなっています。顧客の需要を捉え、オンラインとオフラインの統合を図ることが急務です。
日本企業もこの変化に敏感に対応し、デジタル技術の活用や顧客志向の強化など、新しい戦略を模索することが急がれます。
3.日本企業が教訓とすべきこと
ベッド・バスの経営破綻は、日本企業にとっても重要な教訓となります。デジタルトランスフォーメーションの推進、顧客志向の強化、チャネル戦略の見直し、柔軟な組織文化の構築など、多角的なアプローチが求めれます。ベッド・バスの失敗を教訓とし、以下のようなアクションを取ることが重要です。
1.デジタルトランスフォーメーションの加速
まず第一に、デジタルトランスフォーメーションを加速させる必要があります。オンラインプラットフォームやモバイルアプリケーションの活用は、顧客との接点を強化し、シームレスな購買体験を提供するために不可欠です。日本企業は自社のデジタルプレゼンスを強化し、オムニチャネル戦略を展開することで、顧客の期待に応えることができます。
2.顧客志向の強化
次に、顧客志向の強化が必要です。顧客のニーズを的確に把握し、商品やサービスをカスタマイズすることで競争力を維持できます。マーケットリサーチや顧客の声を積極的に収集し、その情報を基に戦略を立てることが重要です。また、顧客とのコミュニケーションを強化し、フィードバックを受け入れることで顧客満足度を向上させることができます。
3.O2O戦略の展開
チャネル戦略の見直しも必要です。オンラインとオフラインの統合や、新たな販売チャネルの開拓に注力することで、顧客に選択肢を提供し、利便性を高めることができます。顧客の購買パターンや行動を分析し、最適なチャネルミックスを構築することが求められます。O2O(Online to Offline)戦略により、顧客にシームレスな体験を提供するのです。顧客はウェブサイトやモバイルアプリを通じて情報を入手し、商品の購入やサービスの予約をオンラインで行い、その後は実店舗で商品の受け取りやサービスの提供を受けるという流れをスムーズに実現します。
さらには、オンライン上で蓄積された顧客のデータを活用して、パーソナライズされたマーケティングを展開します。購買履歴や嗜好に基づいて、特別なオファーや割引を提供することで、顧客のロイヤリティを高めることができます。在庫と物流の最適化も忘れてはなりません。O2O戦略では、オンラインの在庫情報をリアルタイムに把握し、顧客の注文に応じて在庫を最適化します。また、オンラインでの注文後の迅速な配送や店舗での受け取りオプションを提供することで、顧客に便利さと迅速なサービスを提供することができます。
4.柔軟な組織文化の構築
そして、柔軟性とイノベーションへの意識を高める必要があります。急速に変化する市場環境に適応するためには、経営層や従業員が柔軟なマインドセットを持ち、新しいアイデアやビジネスモデルを積極的に取り入れることが必要です。組織文化の転換やイノベーションを奨励する環境を整備し、変革を促進することが重要です。
4.他社や業界のベストプラクティスの学び
統括すると、ベッド・バスの失敗から学ぶべき重要なポイントは、デジタルトランスフォーメーションの推進、顧客志向の強化、チャネル戦略の見直し、柔軟な組織文化の構築です。経営層はリーダーシップを発揮し、変革をリードする役割を果たす必要があります。変化へのビジョンを明確にし、組織全体を巻き込んで変革を推進します。リーダーシップの下で、チームメンバーは自らの能力を最大限に発揮し、組織の成果を追求することができます。
最後に、日本企業は他社や業界のベストプラクティスを学ぶことも重要です。国内外の成功事例や先進的な取り組みを参考にし、自社の戦略やプロセスを見直しましょう。他の企業や業界の成功例から学ぶことで、自社の課題や改善点を見つけることができます。この教訓を受け止め、積極的に変革に取り組むことで競争力を向上させ、持続的な成長を実現することができるでしょう。
今回の事例は、Netflixによって経営破綻に追い込まれたBlockbusterの事例を思い起こさせます。Netflix対Blockbusterの詳細については、以下の記事をご参考下さい。
「経営者のための物流DX実践ガイド⑬ ~価値設計編~」
5.おわりに:経営者の皆さまへ
私たちが直面する現在のビジネス環境は、変化の激しい時代に立ち向かう困難な挑戦の連続です。特に、ベッド・バス・アンド・ビヨンドの経営破綻のニュースを通じて、競争が激化し、デジタル革命が進展する小売業界の厳しい現実が明らかにされました。しかしこのような試練こそが、私たち経営者の真価を発揮する絶好の機会と捉えるべきです。困難な時代こそ、前進するためのパワフルな原動力となりうるのです。この事例から私たち経営者が学ぶべきことは、時代の変化に適応し、革新的なアプローチを取り入れる必要性です。デジタル化とオンラインとオフラインの融合を通じて、新たな顧客体験を提供し、競争力を高めることが求められています。
状況に適応し、新たなテクノロジーやトレンドを取り入れながら、顧客に最高品質の商品やサービスを提供しましょう。そして、社内のチームを鼓舞し、組織の一体感を高めながら、共に未来に向かって進む勇気と決意を持ちましょう。私たちは困難な状況に直面しているかもしれませんが、経営者としての責任と使命を忘れずに絶えず前進しましょう。共にチャレンジし、革新的なアイデアを実現し、業界の常識を打破しましょう。私たちの未来は明るく、成功の可能性は限りなく広がっています。困難に立ち向かいながらも、心をひとつにして、互いに励まし合い、共に成長しましょう。
勇気を持ち、進化し続ける経営者の皆様の、最高の成功を心より願っています。