いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~フィジカルインターネット②~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~フィジカルインターネット②~

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 画像素材:VectorMine/PIXTA

<目次>

1.上昇基調が続く売上高物流コスト

2.2020年代の物流コストインフレ対策

3.現在のロジスティクスとフィジカルインターネットの相違点

 


1.上昇基調が続く売上高物流コスト

 

モノやデータを標準化し、それを共有化することでより効率的で、より高度な物流を追求することの必要性が問われています。
製造業や小売業が経営戦略として、調達、生産、物流、販売の全体最適を目指していくことも極めて重要です。こうした中で
現在米国や欧州において、物流に関する情報や資産を企業・業界の枠を超えて共有し、最適化などの物流効率化を測るフィジ
カルインターネットが注目を集めています。日本の高品質な物流の強みを活かした形で10年先、20年先の物流の姿をしっ
かりと検討をしていくためにも、この新しい物流の在り方を学び、実践していくことが求められます。

いまは物流コストインフレの時代と言われています。企業の売上高物流コスト比率は2012年以降上昇基調です。コロナ過の売上
減少と物流原価の高騰で荷主企業の物流コストはこの1~2年で急上昇しています。全産業の売上高物流コスト比率は、2018年、
2019年で2.40%でしたが、直近の2020年では、2.52%となっています。

また国際物流においては、世界的なコンテナ不足から、海上コンナテ運賃、航空貨物運賃は極端な高騰が続いています。海運を
航空に切り替えたり、ロサンゼルス港、ロングビーチ港以外の港をスポットで使ったりして輸送費が上がっています。輸送スペ
ースのひっ迫とリードタイムの遅延が常態化していることから、国際輸送のスケジュールが読めないので、在庫を積み増しして
保管費用も増えています。


2.2020年代の物流コストインフレ対策

 

1990年代~2000年代にかけては、物流コストを下げるために、規制緩和による市場競争を激化させることで物流コストの抑制
を図りました。その結果、運賃が下がることによって物流コストは圧縮されましたが、労働環境の悪化を招いてしまい、その
副作用としてドライバー不足を招くという結果になってしましました。(下図参照)

■2000年代の物流コスト抑制対策

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(出典:「物流危機とフィジカルインターネット」経済産業省)

そこで、2020年代の物流コスト抑制の対策としては、運賃に関しては値上げすることで、ドライバーの賃上げ、労働環境の改善に取り組み、その分、物流効率化によるコスト圧縮を行わなければなりません(下図参照)。オレンジの「非効率性」の部分を圧縮することで、運賃を下げることなく、物流コストインフレを抑制しようとする動きが今後活発になっていきます。

■2020年代の物流コスト抑制対策

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(出典:「物流危機とフィジカルインターネット」経済産業省)

この物流効率化の手段として期待されているのが、フィジカルインターネットです。各事業者個別の物流ネットワークを相互接続し、物流アセットの共有化、物流網の統合を行うことで、効率化を実現します。


3.現在のロジスティクスとフィジカルインターネットの相違点

 

現在のロジスティクスでは、パレットや容器はバラバラなので、積載を最適化することが非常に困難です。サイズがモジュール化されていないと、余分なスペースが生まれるだけでなく、荷の損傷のリスクも著しく増大します。昨今の多品種小ロットによって、それは益々困難になってきています。

そこで、規格化された容器がフィジカルインターネットを機能させる為の、最も中心的な要素の一つとなります。インターネットはパケット単位でデータをやり取りすることは前回の記事でお伝えした通りです。
※前回記事「いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~フィジカルインターネット①~」

フィジカルインターネットではこの容器(コンテナ)がパケットにあたります。このコンテナが規格化されていないとフィジカルインターネットは機能しません。絵に書いた餅で終わってしまうのです。ここで扱うコンテナとは、貨物輸送などで利用する大きなコンテナではなく、様々なサイズの容器のことです。1メートルくらいの容器から4メートルくらいの大きなものまで様々なサイズの容器が考えられますが、重要なのはサイズの種類ではなく、そのサイズが規格化されているかどうかという点です。

コンテナのサイズが規格化されることで、積み合わせや積込み、積卸しで多くのムダが削減されることになりますし、システムを利用したシミュレーションや自動化もより高速化し、シンプルにすることが出来るようになります。

続いて、ネットワークを見てみましょう。現在のロジスティクスでは、各社がそれぞれ下図の様なネットワークを自社を中心点として個別にネットワークを構築しています。

■国内の数社の物流ネットワークの例

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こうした個別のネットワークは国内だけでも数千あると言われており、それぞれが独立して相互接続されていないため、多くの無駄な輸送が生まれています。上のネットワークを重ね合わせることでその姿が明らかになります(下図)。

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それぞれ赤、青、黄色の線が交差したり重なっている部分が最適化できる可能性のあるポイントになります。わずか3つのネットワークでこの図のようになるので、
国内すべてのネットワークを重ねるとどのような姿になるのか、想像してみてください。

仮に、規格化されたコンテナで経路や保管、荷物の流れが最適化されれば、積載率が向上し、荷物の積み下ろしの回数も削減し、在庫も削減され、究極的な物流効率につながることが予想されます。下図のように同じ点が最適化され、中央倉庫でのシステマチックな輸送、すべてのオープンなロジスティクスセンターでコンテナを保管し、他社製品と共同で輸送されます。

■フィジカルインターネットにより同じ点が最適化されたネットワークの例

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但し、各社で運営、管理されているこの物流ネットワークを誰がどのようにして一括管理するのかという点については、フィジカルインターネットの大きな研究課題の
一つでもあります。次回は、情報システムの観点でフィジカルインターネットを更に深堀して考察したいと思いますのでお楽しみに!

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