年の初め、米国ラスベガスに世界中の家電メーカーや、スタートアップ企業が集結
する毎年恒例のメガイベントが開催されます。
世界最大級の家電見本市CESがそれです。
2017年1月に開催された当イベントでは、Amazonが発表した次世代インターフェース
「Amazon Alexa(アレクサ)」が注目を集めました。
既に700社以上がAlexa搭載製品を発表しているといいますから、いかに世界中から
注目されているかがわかります。
簡単にサービスの概要を説明しますと、AlexaはAmazonが提供するクラウドベースの
音声認識サービスです。
2014年に円筒型のワイヤレススピーカー「Amazon Echo(エコー)」が米国で大ヒットしま
したが、この商品の音声認識機能はAlexaのサービスを利用していたということになります。
つまり、Amazon EchoはAmazon Alexaのファミリー製品のひとつと言えます。
Alexaに対応したデバイスが認識した音声はクラウドサービスに送信され、受信した音
声をAlexaがテキスト変換し、テキストを解析します。解析により処理された結果を対応
デバイスに返信し、音声として再生されるという仕組みです。
また「Custom Skill」という開発者向けのサードパーティが公開されており、開発者が自由
に利用できます。(※注:一般公開する際は事前に審査が必要です)
本サービスは現時点では英語にしか対応しておらず、日本語対応はされていませんが、
年内にも日本に上陸すると噂されていますので、日本国内のメーカーも対応は必至
となるでしょう。
人の声を認識する音声認識の技術はここ数年で認識精度は飛躍的に向上しています。
スマフォなどのGoogle検索で音声で検索するのは今や日常となり、検索の20%が音声
でされているというデータもあります。
物流で利用される音声ピッキングなどもこのサービスを利用することで、現状の半分以
下のコストで導入も可能になっていくことでしょう。
***在庫マネジメントの成否を握る重要な要素とは?***
企業のロジスティクスを語る上で、2大コストとされるのが、「物流コスト」と「在庫コスト」
です。この2大コストをロジスティクス・マネジメントの観点で考察する2回目です。
今回は在庫マネジメントの成否を握る在庫コントロールについて説明します。
安定した物流、競争力のある物流を提供できる企業はどのくらい存在するのでしょうか。
またそうした物流を実現している企業とそうでない企業では何が違うのでしょうか。
まず大きな違いとして一つあげるとすれば、筆者は間違いないく「社内外の業務調整能力」
を上げます。
***立ちはだかるいくつかの壁***
物流業務改善には、その特性上、様々な部門や企業が関係しており、その為多くの壁が
立ちはだかります。
部門の壁、企業間の壁、昔からの習慣の壁等々・・
こうした様々な壁を無理やり突破するのではなく、上手く調整していけるかどうかにその
成否が左右されると筆者は考えています。
この調整能力が長けている企業はすべからく物流改善に成功し、逆の場合は思うような
効果が発揮できていないと実感しています。
また自社の都合や自部門の都合を押し付け合う強行突破策については、短期的には効果
が発揮できても、中長期的には失敗に終わっている例を何度も目にしてきました。
***経験で感じた「調整能力」の偉大性***
筆者は数年前、ある大手卸売企業の物流システムを担当させて頂いたことがあるのですが、
プロジェクト当初、「このプロジェクトは前に進むのだろうか?」と先を案じました。
というのも、複数の関係企業、関係部門の責任者が参加したミーティングにおいて、それぞれ
が、自社や自部門の都合を言い合うだけで、最終ゴールが全く見えてこなかったからです。
しかし、一人の物流部門の担当者M氏がそうした意見をうまく整理し、強く主張するべきは主張し、
一歩引くときは引き、自部門や自社の都合だけではなく、重要な点については、全体最適の視点
で周りを上手に説得されていました。
ミーティングの回を重ねるごとに、それぞれの発言内容も変わってきて、建設的な意見が飛び交
うようになっていきました。
それもこれも全てこの物流部門の担当者M氏が裏方として調整をされていたと後で知ることにな
るのですが、結果的にそのプロジェクトは大成功を収めたのです。
***在庫管理に失敗しない為の重要なファーストステップ***
少し話がそれましたが、在庫管理というのは、まさにその「調整能力」により結果が大きく左右
される特性を多分に持ち合わせており、沢山の関係者の協力が必要になる、企業にとってはまさ
に一大プロジェクトなのです。
情報システムに詳しいから、物流現場の業務に詳しいから、発言権があるからという理由だけで、
在庫管理のプロジェクトリーダーを選定すると大きな効果は期待できません。
システムに詳しくなくても、業務に詳しくなくても、権力はなくても、広い視野で全体を俯瞰して観察し、
皆が良くなる方法を上手く調整しながら進めていける人が担当者として任命されるべきです。
またそうした人材が近くに見当たらなければ、そうしたスキルを持ち合わせた人を社外から呼んで、
協力を得るのも一手でしょう。その際注意が必要なのは、上記の調整役としての役割をしっかりと
伝え、その為に必要な権限も同時に与えることです。
そうでなければ見当違いの”商品”としてのコンサルティングに終始してしまう恐れがあるからです。
在庫コントロールの具体的な手法は次回に譲り、まずはこの「社内外の調整能力」という重要な
要素をしっかりと念頭に置いて頂けるよう説明をさせて頂きました。
在庫管理に失敗しない為の重要なファーストステップであるとの確信からです。