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経済産業省が発表した平成28年度の「電子商取引に関する市場調査」によると、2016年の日本のEC市場は前年比9.9%増の15兆1,358億円でした。
市場規模における各分野の構成比率は下図の通りです。
出典:経済産業省「平成28年度電子商取引に関する市場調査」
インターネットの人口普及率は2015年時点で83%となっており、スマフォの普及によりその普及率は急速に伸びています。
(※2015年時点のインターネット利用端末はPC56.8%に対しスマフォ54.3%)
EC化率についても前年4.75%から5.43%に増加しており、このままいくとECの市場規模は2020年には20兆円規模になると予測されています。(下図参照)
※EC化率については物販系分野のみの統計です。
出典:経済産業省「平成28年度電子商取引に関する市場調査」
こうしたEコマース市場の拡大を背景に今、物流オペレーション現場の労働力の不足が大きな課題になっています。
さらに労働力の確保を困難にしているのが「少子高齢化」の問題です。
総務省の調査によると我が国日本の人口は2048年には1億人を割り、生産年齢人口(15歳~64歳の人口)は2010年の63.8%から減少を続け、2017年に60%を割り、50年後には2.5人に1人が65歳以上になると予想されています。(下図参照)
出典:総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)、厚生労働省「人口動態統計」
厚生労働省の「平成28年労働経済動向調査」によると、運輸業においては55%の事業所が労働者不足の課題を抱えています。
(下図参照)
出典:厚生労働省「平成28年労働経済動向調査」をもとに筆者作成
こうした背景をもとに物流現場における労働力の不足は深刻化しており、いくら市場が拡大傾向と言えども、注文を受けた商品をお届けできなければ、EC事業そのものが成り立たなくなり、成長に歯止めがかかってしまいます。
冒頭でも紹介したようにECの市場規模は2020年には20兆円、もしくはそれ以上とも言われていますが、この予測には物流現場の労働力不足は加味されていないでしょう。
EC市場の拡大に歯止めをかけない為にも、各事業者には労働力不足に向けた対策が迫られています。
今回はEC事業者がいま取り組むべき物流オペレーションの労働力不足対策について3つのポイントをご紹介します。
*** 1:オペレーションズ・リサーチ(OR)の活用 ***
オペレーションズ・リサーチ(以下OR)とは、科学分析による方法論であり、統計や数値をもとに、複雑なシステム構築や意思決定を支援する応用数学の一分野です。
第二次世界大戦中、連合軍がUボート対策やドイツの攻撃からイギリス本土を守る為の防空体制、前線への物資供給などの戦略構築に用いたことでも知られています。
「限られた資源をどのように投入すれば、最大の成果を得ることができるか」という問題を数値的に分析するORの考え方は、ビジネスの現場でも積極的に利用されており、「いつ、どの店舗に、どのルートで回ればムダなく短時間で配送できるか」というコンビニの配送計画にも用いられています。
ECのロジスティクスは、超小口配送、時間指定や受け取り方法のニーズ多様化によりどんどん高度化しています。
こうした高度化するロジスティクス分野において、ORの役割は重要度を増しています。
一部の大企業が用いる戦略ツールとしてではなく、正しく利用すれば規模の大小に関わらず限られた労働力により最大の成果を出すことが可能になるのです。
ORについての具体的な利用法については、また別の回でご紹介させて頂きます。
ご興味ある方はネットや書籍などで「オペレーションズ・リサーチ」と検索すると沢山情報がありますので、まずはそちらをご参考下さい。
*** 2:パートスタッフが不足していない地域に倉庫を移す ***
ECで店舗をサイト上に立ち上げ、売上が拡大していくと自社の倉庫では手狭になり、専門の倉庫業者へ物流業務を委託したり、自社で倉庫を借りたりします。
自社で倉庫を借りる場合、倉庫物件を探すことになりますが、物流の要所となる地域(物流倉庫が沢山ある地域)に倉庫を借りるとパートスタッフの確保に困ることになります。
そうした地域はどこの物流センターもパートスタッフを急募しており、それでもなかなか確保が出来ない為、時給をあげて争奪戦になっています。
物流倉庫が沢山ある地域は立地面や自社の希望にあった倉庫を探しやすい点についてはメリットがありますが、今後の労働力不足を考慮すると決してそういった地域に倉庫を構えるのは得策とは言えません。
少々立地が悪くても、多少物件の条件が合わなくても、パートスタッフの争奪戦に巻き込まれない場所を探すことが賢明でしょう。
*** 3:再配達防止はEC事業者にもメリットあり ***
下図は国土交通省が作成した平成27年度の宅配便取扱個数の推移グラフです。
宅配便取扱個数は年々増加傾向にあり、EC市場の拡大がその主な要因です。
即日配送や短時間での配送により配送事業者の負担は増えており、不在により再配達の負荷は社会問題にまで発展しています。
こうした負担を軽減する為に各宅配事業者が運賃値上げや荷量の規制に動く「宅配クライシス」が話題になるなど、EC事業者にとっても死活問題といえるこの状況を打開する為には自らが手を打っていくしかありません。
例えば、時間指定されるお客様の場合、EC事業者もその時間を把握しているわけですから、到着1時間前にお客様に事前案内メールをお届けすることが出来るはずです。
または再配達になった情報を配送業者と共有し、次回注文時に注意を勧告したり、指定回数以上不在の場合は、時間指定を無効にするなどの事前対策もとれます。
再配達は配送業者の問題であって、自分達にはあまり関係ないと思われているかもしれませんが、そんなことはありません。
再配達になった場合、再配達に関わるクレームというのが発生します。
再配達を依頼したのに届かない、再配達を依頼した時間帯に届かないなどといったクレームです。
こうしたクレームはお客様からしてみれば、配送業者に対してだけではなく、商品を提供したEC事業者にも向けられます。
またこの時の悪い印象がリピート購買を抑制してしまうことにもなりかねません。
EC事業で配送は根幹の業務です。
そこを完全に外部に委託するしかないというのがEC事業の実状です。世界の最大手のAmazonでさえ、日本国内での配送業務については100%外部委託せざるを得ないのです。
配送業者の負担をEC事業者が一緒になって軽減してあげることで、EC全体の価値が向上し、利用者が更に増えることで、互いにメリットを享受できるのです。
ECのロジスティクスは不足する物流オペレーションの労働力をいかに確保するかが最重要課題になっています。
物流現場において限られた資源で最大の成果を上げる為にはORが有用ですが、その為にも在庫管理の基本をしっかりと押さえる必要があります。
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